「未知との遭遇 特別編」
この映画は画期的でしたね。主人公と一緒に未知の経験をする、と言う映画ならではの疑似体験がこんなに素晴らしい形で具現化された映画は他に無いのではないかな。
コレを見た時は中三だったのだけれど、ストーリーが進行して行くにつれてあまりの嬉しさにワクワクして胸が膨らんで身体が浮いてしまいそうだった。
この作品の出現から、それまでは映画に登場する宇宙人と言えば必ず侵略者だったのがコレ以降はやたら友好的になったんですよね。
スピルバーグ自身のオリジナル脚本と言う意味でも最高傑作でしょう。
この映画のシチュエーションは他に類似したモノが思い浮ばないくらい独創的だった。しかもそれを登場人物の誰も口に出して説明していないのが良い、当時観た友人の中には「あの映画はさっぱり分からなかった」って言う人がいたけれど、コレには「分かる」と言うことの快感がある。
それがそのまま映画のテーマとも重なっているのがまた素晴らしい。「子供の様に夢見る心を持った人には分かる」と言うニュアンスなんですよね。なんて言うと分からなかった人に悪いですけど。
主人公と一緒にUFOを目撃して、一緒にその「何か」を心に感じて体験して行くと言う仕掛けが素晴らしい。
嬉しかったなぁあの時は、まだ子供だったけど、コレを見た後は宇宙人は絶対にいると信じていたし、夜外を歩くと必ず空を見上げたくなったものです。
こんな素晴らしい夢を見させてくれる映画って、そうは無いですよね。テレビのブラウン管で見るのは余りに勿体無い気がするけれど……って今は皆さん大画面テレビになってるからそうでもないのかな? ジョン・ウィリアムスの音楽はここでも素晴らしい効果を上げていました。
それとコレは「特別編」と銘打っていますけど、最初に上映されたバージョンは今ではなかなか観れないみたいですね、今でこそ「ディレクターズカット」だの「完全版」だのって、初公開時に未公開映像を足したりして長くなったバージョンが後から出るのが当たり前の様になっていますけど、ソレを最初にやったのがこの作品でしたね。そういう意味でも新しかった。
とは言えオレはこの「後から次々と違うバージョンが出て来る」趣向は余り好きではありません「武士に二言は無い」じゃないけど、そりゃ製作会社との兼ね合いで監督が不本意ながらカットしたシーンとか、意図とは違う形で上映してしまった等の経緯のある作品の場合は、完全版を観ると目の覚める様に素晴らしかったりすることもありますけど、本作の場合もそうだけど、大概は「完全版」と言う宣伝でまたお客を集めようとする意図で、観てもオ
リジナル版とそう印象が変わるモノではありません。
スピルバーグの場合はラスト主人公が入った巨大なUFOの内部の映像を見せたかったと言うけれど、そんなに映画そのものの印象が変わるモノでは無かった。でもまぁ監督のこだわりで最初にそれをやったと言うのはスピルバーグ凄いと思うけど。
そういう意味では有名な「ブレードランナー」なんて完全版だのディレクターズカットだの最終版だのって5バージョンくらいあって、もうどれがどれだか分かんないくらい。
「ニューシネマパラダイス完全版」の様に長くなった分が邪魔をして最初の感動が薄れてしまうなんてこともある。
逆にレオーネの「ウエスタン」や「ワンス・アポン・ナ・イン・アメリカ」の様に「完全版を観ないと意味が無い」なんてのもあるから、まぁ何とも言えないか(笑)。