「みすゞ凛々」
劇団えるむ(2003年3月4日東京芸術劇場中ホール)
これは驚いた。金子みすずと言う人を今まで知りませんでした! 不勉強でした、映画にもなって
たなんて・・人間いっぱしのつもりになっては絶対いけませんね。世の中にはまだまだ知らないスゴイ
事やスゴイ人がいっぱいいる・・・最初芸術劇場の小ホールだと思って行ったら閉まってて「アレ、
日にち間違えたかな」と思ったら中ホールでした(笑)中と言えば芝居としてはもう舞台の役者が点に
なっちゃう
大会場。なので前の方に座ろうと思ったら
、2日間公演とは言えあの大会場を空席を見つけるのが大変なくらいの大盛況。
んでも始まった芝居が新劇調で「まいったなぁ」と(別に新劇に偏見あるワケではないけど)思って
いたら・・スゴイスゴイ! スクリーンに投影される童謡の詩を音楽に合わせて役者が歌う、それを
水を打った様に聞き入る大人の観客たち。まず詩がスゴイ! 萩原朔太郎とか宮沢賢治よりずっと
親しみ易く、優しくて切なくて、それでいて無限の様な世界観、生きている美しさやはかなさ・・
なんという新鮮な衝撃! 嬉しくって涙が出たよ(笑)
この歳になってまだこんなに詩と言うモノに感動出来る心が残っていたなんて!(しかも童謡)ってかそれだけ
詩がスゴイんだと思うけど。物語は金子みすずさんの書いた一遍の詩に感動した作家(?)がみすずさんの
他の作品を探して兄弟や友人等を訪ねて、だんだん分かってくるみすずさんの生涯。
それを随所に歌や朗読で
みすずさんの詩を紹介しながら、
再現ドラマや生前のみすずを知る人へのインタビュー等を通して、みすずさんと言う人を浮き彫り
にしていく。何よりも数々のみすずさんの詩が素晴らしい、そして悲劇的な
短い生涯。しかし
これを描くに当たってこの構成、歌あり劇ありドキュメント(?)ありで綴った作者たちの力量に
拍手を送りたい。ミュージカルでもなく、演劇でもない、例えばテレビ番組とかでやりそうな構成
だけれど、やっぱり舞台ならではの感動を見事に作り出してる。やっぱそれはあの詩の歌と朗読でしょう。
そして決して
役者の芝居でみすずさんの実像を再構築しようとするのではなく、あくまで演者の向こうに実像のみすずさんを
観客の心に感じさせ、浮かび上がらせて行こうと言う意図・・・素晴らしかった。