「燃えよドラゴン」
まぁ、コレはもう今更何も語ることも無いんですが……世界中がブルース・リーの洗礼を受けたのがこのアメリカと香港の合作映画だったんですね。でもその時にはもうリーはこの世にいなかったと言う……。
香港以外の国ではこの映画が始めて公開されたブルース・リーの映画だったんですね、しかし本国の香港では最初の主演作「ドラゴン危機一髪」から「ドラゴン怒りの鉄拳」そして「ドラゴンへの道」があっての本作だった訳ですが、本作品はそれまでのリーのイメージ「強い香港のアニキ」でなく、アメリカの諜報部に雇われたストイックなスパイ的なキャラが余り受けなかったらしく、実は一番ヒットしなかった作品らしいですね。
しかし作品の完成度としてはそれまでの香港作品とは違い、スケールは勿論のこと脚本の面白さも完成度も群を抜いています。
リーの作品はアクションばかりが取りざたされますけど、まぁそれも当然なんですが、映画は監督は勿論のこと脚本があってカメラマンがいて音楽があって……と言うスタッフ面も優秀でなければ良い映画は出来ない訳で、本作の監督のロバート・クローズさん。冒頭香港のボートピープル等のロケーションから悪玉ハンに招かれる登場人物たち各々が集まってくるエピソード等、正に全編に漲る殺伐とした迫力は只者ではないですね。
本作は自ら殺陣を付けたリーのアクションは勿論だけれど、この監督のカット割りや撮影のセンスも素晴らしかったですよ。
余談ですが冒頭何故かパンツ一丁でリーと戦う太った方は後のデブゴン、サモ・ハンキンポー。試合の後と中盤妹の仇、オハラとの死闘の中でトンボ返りするスタントはユン・ピョウ。地下の麻薬工場の乱闘でリーにつかまって首をへし折られる戦闘員はジャッキー・チェン。
正にリーの切り開いた世界への道を追ってその後活躍して行くんですねぇ。
それに現実の格闘技の世界にもリーが与えた影響は計り知れません。今でこそプライド等の総合格闘技で当たり前に使っているオープンフィンガーグローブを考案したのはリーだし、今でこそ決め技としてポピュラーな「腕ひしぎ逆十時固め」は30年も前の本作で冒頭デブゴンとの練習試合と後半ジョン・サクソンとボロの激闘にも使われていて、しかもその防ぎ技までもが実演されてます(足に噛み付くと言う……)そんな意味で今も多面に渡る見所に満ちた作品でしたね。
しかし何と言っても一番の魅力はどんなアクションスターにも真似の出来ない、あの大見得を切って怪鳥音を発し、敵をバッタバッタと薙ぎ倒すリーの勇姿に勝るものはありませんね。