「ムーンライト」

 アカデミー賞騒動も記憶に新しい受賞作! んでもたまの休みに観るならやっぱ「ララランド」ですあね。それを押し退けてヌカ喜びに陥れ、見事に受賞した本作はずっと観たいと思いつつ〜なんだか辛気臭そうな空気も感じてて腰が上がらなかったのだけれど、やっと観ました。

 主人公の少年期、青春期、青年期、を3幕に分けて順番に描かれて行く……少年期は内気で苛められっ子で、母子家庭のママはヤサグレてるし〜主人公は何故かヤクの売人のオッサンと知り合ってメシ喰わせて貰ったりするのだけれど、俯くばかりでウンともスンとも言わない……。それが後の人生に多大な影響を及ぼすことになる。

 第二幕の青春期も〜相変わらずの内気でオトナシ君な主人公は苛められ、ちっとも喋んない、売人のオッサンは亡くなったそうで、その彼女とはまだ付き合ってメシ喰わして貰ったり、母親が男を連れ込む夜は泊めて貰ったりしてる〜でも黙りこくってて喋らない……うう〜もっと喋れよ! と言いたくなる。

 そんな主人公にこっちもイライラしてきて〜コレじゃ苛められてもしょうがねぇだろう〜とか思ってしまい、マサカこのマンマで最後首括り「ダンサーインザ……」じゃねぇだろうな……と心配なってきたら〜中盤マサカのホモ展開! でその彼にも裏切られたオトナシ君はついに爆発! 苛めっ子を後からイスで殴打! ヤッターとなっての第三幕ですよ。

 大人になって、すっかり貫録も付き、立派なヤクの売人と化した主人公君、かつて因縁のある例の彼″と再会するんですね……。

 終ってみれば新手のホモ物″でした。確かに新しい、男なんか手も触るの嫌だけど、かつて「蜘蛛女のキス」や「ブロークバックマウンテン」には、ああ〜こんなこともあるのかなぁ……と思わせた、そのまた新しいパターンが生まれたって感じですね。ホモへの目覚め方三部作とでもいいましょうか。

 そんな要素もあるとは聞いていたけれど、前半は全然そんな気配はなくて、その場面がきて一瞬エッ? となるんだけど、それまでの展開に必然性が仕組まれてたことに気付かされる、上手い構成になっていました。

 でもそれをテーマとしてズバリと全面に押し出していないところがこの映画の新しかったところかな、こ〜の主人公と彼との関係は「友達以上、恋人未満」な感じなのだ。彼も主人公も根っからゲイという訳でもなく、彼には結婚してた妻との間に出来た子供もいる。

 まぁでも全体にはやっぱし辛気臭いですよ。明るいか暗いかで言えば暗い。でも新しく良く出来た、アカデミー作品賞の名に遜色ない映画でした。この手の素材で作品賞を取ったのも新しいですよね。

 第一幕に出てきた、少年期の主人公の面倒を看てくれた売人のオッサンはと〜っても芝居が上手くて存在感バリバリだったのに〜第二幕ではもう死んでいなくなってて、どしたんだろう〜と気になってしまった。コレは観客の興味を惹き過ぎたのかな、作者の計算ミスなんですかね、あの人あれだけの出番なのにアカデミー助演男優賞を獲ったんですねぇ。



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