「人間の証明」
角川映画の一大ブームの中にあって、横溝正史と双璧を成した森村誠一原作の大作で
すねぇ。面白かった! 「ママァ〜ドゥユーリィメンバ〜♪」 ってジョー山中の歌と 「母さん、
僕のあの帽子、どうしたんでしょうね、あの麦藁帽子ですよ……」 ってセリフのフレーズが
流行語にもなりました。
主演の松田優作のなんと言う堂々振り! 当時日本映画はアメ
リカ映画に対して非常に卑屈で、一緒に出てるなんて! とそれだけで凄いと思
ったジョージ・ケネディとの共演! 全てが興奮の光り輝く様な作品でした。当時の角川映
画は結果的に弊害も残したけれど、でも金をかけた大掛かりな仕掛けや、ハリウッド俳優を
呼ぶなど、刺激的でカッコ良かった。
でもそれは殆どあの独特の予告CMのカッコ良さに騙
されてたと言うことに途中で皆気付いちゃったんだけどね(笑) 「観てから読むか、読んでか
ら観るか」 とか言ってたよね(笑)つまりただハッタリが上手かったんだと言うことが途中
でバレて衰退して行ってしまった。社長のコカイン逮捕がその終焉を物語っていたと言
う感じ。
しかし本作は本当に感動的で面白かった。森村誠一の作品って当たり外れがあって、
中には驚くべき駄作もあるのだけれど、コレは原作のもつミステリー性と、真相のやるせな
き物悲しさも相まって、本当に楽しめる娯楽作品に仕上がっていた。
思えば松田優作はこの
頃から既に他の俳優と違う器の大きさを発揮していたのかもしれない。ジョージ・ケネディ
の芝居も凄いと思った。特にあの死に際、たった一人の断末魔の演技は印象に残ってま
すね。たかが日本映画なんだから……とバカにしたところが全くなくって、力のこもった熱
演に拍手したくなった。ってギャラ貰ってんだからちゃんと芝居するのは当たり前か(笑)