「大いなる西部」
「ローマの休日」でヘップバーンを世界にブレイクさせ「ベン・ハー」で
爆発的な歴史劇を描いた巨匠ウィリアム・ワイラーによる "大いなる西部劇"。
物語は開拓地に広がる牧場地で、牛に水を飲ませる湖の利権を巡り、二つの
勢力が争っている只中に、片方の親分の娘婿として都会から学者のグレゴリー・
ペックがやって来る。
彼はフィアンセの父親たちが鬼の様に敵勢力を憎んでいるにも関わらず中立の
立場を示し、荒くれ男たちがワイルドに振る舞う大西部で、都会で勉学に励んで
来たインテリの流儀で新時代の在り方を示していく。
そして様々な争いの局面で成程……という理知的な機転を効かせることにより、
対立する両者を和解に持ち込もうとする。
西部劇で対立する二つの勢力の真ん中に立つ男……ってえと思い出すのはクロサ
ワ「用心棒」をパクった「荒野の用心棒」ですよね。
でもここで根本的に違うのが「用心棒」は二つの勢力の争いが激しくなる様に
けしかけて両者とも潰してやろうとするのに、ここでのグレゴリー・ペックは仲
良くさせてやろうというところ。
コレは言わば逆「荒野の用心棒」言ってみれば「荒野の仲介人」みたいな作品だ。
まぁコレはコレで良く出来た名作ではあるのだけれど、やっぱし悪人同士を戦わ
せ、滅ぼしてやろうとする方が娯楽としては数段面白かったですね(笑)人間て怖
いですね……。
深作「復活の日」でカッコ良い潜水艦の船長だったチャック・コナーズがここで
はヘタレ悪童で笑ったけれど、演技上手かったですね。父親との確執が秀逸でした。
かのチャールトン・ヘストンも、ここでは荒くれ単細胞なカウボーイを演じてて、
寝てたらグレゴリー・ペックに喧嘩しようと起こされて例のズボンをシュボシュボッ!
と履いて延々と殴り合う件は、後の男映画に随分引用されてたのではないかな。