「おとうと」
近頃かの山田洋次監督がオマージュを捧げた1960年の同名作品。
可憐なる岸恵子がヤンチャで出来の悪い弟に翻弄され、時には喧嘩したりしながらも、
決して見放したり愛想を尽かしたりせず、最後まで気遣い、甲斐甲斐しく面倒を看たり
する。その姿を活写した作品。
そして、かつて一世を風靡した「水曜スペシャル」の川口浩隊長が探検に出る前の
若き日に弟役で出演しているのだ。
そしてかの大女優、田中絹代さんが二人から憎まれる継母役で登場し、ちょっとの出演
シーンでも存在感に唸らされる。
だからなに? って訳でもないのだけれど、こ〜の若々しい岸さんの活き活きとした
可憐さと、川口弟君のダメっぷり、それでも見捨てたりはしない姉という存在の絶対的
な情の深さに感心させられます。
その辺りは山田版「おとうと」に引き継がれてるところがありました。
そして何より、本作について映画の歴史上特筆すべきは、かの世界的に有名な映画カメ
ラマン宮川一夫が開発し、その後世界で使用される様になった「銀残し」という独特の現
像手法。正直よく分かんないんだけど(笑)。
本作の冒頭近く、お弁当を忘れた川口弟を追いかけて雨の中岸姉さんが追いかけてくる
シーン。
この雨降りの中を傘を差した群集が行く映像の「薄暗い」というか、霞掛かった独特の
質感は、他の映画では見たことのない物ですよねぇ。