「アウトレイジ」

 北野監督久々に本分に戻る? 徹底的なヤクザ抗争作品!

 まぁ楽しかったけれど、要はリアリティを欠いた「仁義なき戦い」ですね。豪華なVシネって感じでした。
 どこから見てもお人好しそうな北村総一朗を諸悪の根源に持って来たのは分かるのだけれど、「仁義なき戦い」シリーズの山守組の金子親分のあの強烈な存在感の前にゃ消し飛びますぁね。

 血で血を洗う抗争劇と言うのも、外国映画も含めて何ら新味は無く、北野タッチのアクションは楽しめるけど、要はこれまでの北野作品から詩情を除いてヤクザドンパチ部分だけを集めてきた様な内容。
 その部分だけ好きな人にはかなり気持ち良いのではないかな。

 例えばレストランに手榴弾を投げ込まれて子分たちを失う件は爆発の描写は無く、ズズーン! ってSEだけで間接表現するところなんか昔からの北野タッチですね、そんで冷めた顔して残骸を見て「これで終わりか……」って表情も変えずに言うところなんざ昔の「荒野の決闘」のヘンリー・フォンダみたいな貫禄でした。
 全体に非現実的で劇画調な世界観は石井隆監督の「GONIN」みたいでしたね。

 役者陣ではなんと言っても椎名桔平が突出していましたね、こ〜のニヤニヤしつつ凶暴なキャラは魅せましたよ。
 死にっぷりも凄かったですね、他の組員は皆普通に撃ち殺されたり手榴弾で吹っ飛ばされたりしてるのに、何で椎名桔平だけあんな手の込んだ方法で自殺に見せかける? 必要があるのか分かりませんでしたけど。それまでの悪行の罰だったのかな?
 そういえば椎名桔平とビートたけしは「GONIN」でもコラボしていましたっけ。

 それと役者で興味を持ったのは加瀬亮ですよねぇ、あ〜の線の細い平凡サラリーマンみたいな印象で、啖呵切ったり人を殴ったり出来るんだろうか……って思ってたけど、いや〜この英語も喋れるインテリヤクザ振りは凄い役作りだと思いましたよ。
 眼鏡かけて風貌も作り込んでいますけど、この人やっぱし上手いんでしょうね。

  三浦友和は前から北野作品が好きで、出られて嬉しかったらしいけど、手下に紙袋に入った手榴弾を渡して「コレ投げ込んでこい」って言うとこなんかちょっと笑っちゃいましたね。
 何だかワザと最初っから惚けた演技してるのかなと思った。

 あと残念なのは、北野作品って現代物の邦画で唯一拳銃が本物に見えると思ってたのに、本作はあまりに皆さん軽々しく、それも形の違ういろんな銃を振り回すので、玩具に見えてしまってリアリティを欠いてしまったことですかね。

 音楽は北野映画と言えばずっと久石嬢とセットな印象があったけど、本作は「座頭市」の人なんですね、ドンドコドンドコとインパクトがあって良いと思いました。

 まぁいろいろ言いたいことはあるけれど、娯楽作として充分に面白かったですよ。同じ娯楽ヤクザ物の「BROTHER」よりはずっと好きです。
 映画館を出たら誰かに向かって啖呵を切って殴り飛ばしてみたくなりますね(笑)。



リストに戻る