「プラトーン」(86米)
僕たちはこの映画でベトナム戦争を知った……と言える。
って言うか世界的にベトナム戦争と言うモノに対する認識を変えたんじゃないかと思えるスゴイ映画だった。
それ程この映画の出現は衝撃的だった……。それ以前に出たベトナム戦争映画と言えば一番古く思い出されるのはジョン・ウェイン「グリーン・ベレー」これは南ベトナムの兵士を悪者インディアンみたいに扱ったとんでもない作品だった。
その後がかの「ディア・ハンター」これも衝撃的だったけど、飽くまで戦争場面は間接的表現で、その悲惨さはロシアン・ルーレットと言う比喩的表現に逃げてた気がする(まぁ当時としてはこれもかなり感動し心を揺さぶられたのだが)。
そして「地獄の黙示録」これも凄かった……けどこの映画はベトナム戦争の実態と言うよりは人間と言うモノの哲学的な分析と定義付け的な作品だった。
それはそれで凄いのだけれど、やっぱり実際にベトナムで戦闘に参加した兵士のリアルな実体験を観客に始めて伝えたのはコレでしょう。
それまで間接的にしか知り得なかったベトナム戦争の本当の実態を世界に知らしめたオリバー・ストーンの渾身の力がこもっていた。
そこには実際にその場にいた者だけが描き得る恐い恐いリアリティーがあるんだよねぇやっぱり。
それまでオレたちはベトナム戦争と言うとアメリカが圧倒的な国力でベトナムを侵略しようとした悪い戦争だった印象しかなかったのだけれど、これを見ることによって一気にその認識が覆ったのだから、それはきっと世界中でのことだろうけれど。
一本の映画がこれだけ世界の人々に与えた影響を思うと改めて「映画って凄いんだなぁ…」と思った作品でした。
ラストで累々たる死体を俯瞰で捉えながらチャーリー・シーンを乗せたヘリコプターが悲壮な音楽に載って飛び立って行くところを見ながら思い出したのは、かつてみた広島の原爆映画「はだしのゲン」や「二百三高地」の情景でした。
戦争がもたらすモノって結局はどこも同じなんだなぁ……と理屈抜きに実感させられた。