「プロメテウス」

 注意! 宣伝に偽りアリ! コレは「エイリアン」第一作のリメイクですよ。正しい題名は 「エイリアン ビギンズ」とでも言ったところか。グロイ怪物が出て来るSFパニックです。

 けどこの予告編見たら誰でも「2001年宇宙の旅」や「未知との遭遇」〜「コンタクト」に類 するサイエンスフィクションかと思いますよねぇ、でもチラリと「エイリアン」で観たよな宇 宙船や砲台(実はコクピットだった)が予告に映るので、どうリンクするんだろう……って思っ ていたら……。

 乗組員たちを雇った社長がホログラフで現れて、皆に説明する場面でジェリー・ゴールドス ミスの「エイリアン」の旋律が流れてきたので「オヤオヤ? ……コレは」と思ってからは答 え合わせをするように……。

 前段の乗組員たちが目的地に着くまで冷凍状態で眠っていたこともそうだし、乗員のひとり が会社の命令にしか従わないアンドロイドだったり……と、展開が「エイリアン」を踏襲して いるのを確かめて行くうちに顔がニヤニヤしてきました。

 でも怒ってる方の意見も分かりますよねぇ、冒頭の白塗りのギリシャ人みたいな「宇宙人」 が人類が生まれる前の地球に来て、DNAを撒いて生物の萌芽を促すところなんかジョン・ブ アマンの「ザルドス」みたいだし、人類の起源について哲学的な命題でも出て来るのかと思 いますやねぇ。
 そゆのを期待してたのに、このグロイ内容じゃ混乱しますよねぇ。怒る人がいるのも無理な いと思いますよ。

 宣伝と内容にギャップがあり過ぎる! コレばかりではなく近頃「宣伝と内容が違う!」っ て思う映画が多いと思いません? ちょっと思い出しただけでもやはりサイエンスフィクショ ンかと思いきや冒険活劇だった「第9地区」ヒューマンドラマかと思ったらやはり冒険活劇だ った「カールじいさんの空飛ぶ家」……。

 観た人が「良い意味で期待を裏切ってくれた」と思えるのなら良いけれど、カレー 屋だと思って来たのに焼きそばを出されたら、そりゃ大体の人は怒るんじゃないかな。

 コレが何かもし他の、例えば食材とかだったら「カニかまぼこ」じゃないけどパッケージに 書いてある材料と中身が違うって公共広告機構に訴えられますよねぇ。
 オレ映画の宣伝にもそういったチェック機関があっても良いんじゃないかと思うんですけど、 だって皆さんこれまでに「騙された」って思ったことありません?

 でもまぁ、オレはたまたまオリジナルの「エイリアン」も何回も見てるし、コレの場合は楽 しみましたけど(笑)。

 怒ってる方たちが概して仰ってるのは「内容がよく解らない」ってことですけど、確かに説 明が不親切で腑に落ちないところがありましたね。以下オレ流の分析でストーリーを追ってみ ますと……。

 まだ人類が誕生しない太古の昔、UFOに乗った宇宙人(白塗りのギリシャ人みたいの)が やってきて、自分の身体を分解してDNAを滝に流すことで地球に生物の萌芽を促した。

 そして将来人類の文明が発達したら、その星を見つけて宇宙を旅して来る様に、世界の各地 に星の位置を示した壁画を残しておいた。

 だが、人類の文明が発達するに連れ、宇宙人の方に何らかの都合が出来て、人類を絶滅させ る為に、壁画に描いた星に人類が来たらエイリアンに遭って絶滅してしまう様に、生物兵器「 エイリアン」をその星で育てていた。

 だが、その星にいた宇宙人たちは、自分たちの育てた「エイリアン」によって逆に全滅させ られてしまう。

 そこへ自分たちの創造主たる宇宙人に会おうと地球人たちがノコノコやって来て、宇宙人た ちの思惑どおりマンマとエイリアンに憑依され、新アッシュ(アンドロイド社員)の陰謀で主 人公の女学者(新リプリー)は腹の中にエイリアンの幼虫を宿してしまう。

 なんと新リプリーは自動手術装置を使い、自分で体内の幼虫を取り出すのだが、コレがなん と本来エイリアンの卵の次の形態、卵から飛び出して人間の顔に張り付く筈の「フェイスハガ ー」なのだ。

 前後してこの星で全滅した筈の宇宙人の一人が冷凍装置で眠っていることが分かり、解凍し て遂に創造主と対面するのだが、この宇宙人は何だか無愛想で暴力的、で地球人たちと喧嘩に なる。

 新リプリーの腹から取り出した「フェイスハガー」はいつの間にか巨大化し、乱暴な宇宙人 と戦いになり、宇宙人はフェイスハガーに身体ごと取り込まれてしまう……最早「フェイスハ ガー」ではなく「ボディハガー」だ!

 その間に地球を滅ぼす為に自動操縦で飛び立った宇宙人のUFOを地球人の宇宙船が特攻体 当たりで撃ち落とす(かなり唐突)のだが、新リプリーはひとり生き残った。
 もう地球に帰る術はないと思ったリプリーだったが、首だけになったアンドロイドの新アッ シュの言うには「宇宙人の宇宙船はもうひとつあるから、それに乗って地球に帰ろう」という。
 だがリプリーは「人類を創造した宇宙人が、何故自ら作った人類を滅ぼそうと考えを変えた のか、を聞く為に、宇宙人たちの本星へ行く」と言って新アッシュの首と旅立つのであった… …。

 その時巨大なフェイスハガーとの戦いで死んだと思っていた宇宙人の腹を破り、正しい「エ イリアン」が誕生していたのであった(笑)。

 以上が大体のストーリーなのだけれど(違ってたらご指摘下さい)「エイリアン」のリメイ クとしても、ちょっと混乱しますよねぇ、何よりエイリアンの変化の形態が微妙に違う! 元 祖はいっぱい並んだ卵→フェイスハガー→人間の体内で幼虫→食い破って成虫へ。ですよね。

 それが本作ではロケットみたいな筒状の金属→液体が男性の体内へ→性交した女性の体内で フェイスハガーに育つ→体外でボディハガーにまで巨大化→宇宙人の身体をハガーして種を植 え付ける→身体を食い破ってエイリアン成体の誕生! ってなるんだけど、なんだかスッキリ しませんやね、コレは元祖の方が分かり易く不気味で絶対良かったですよ。

 あと上記とは別ルートで、ナメクジとヘビの合いの子みたいな不気味な白い生物に顔に巻き つかれて、口の中に尻尾(頭?)を突っ込まれて体内に子供を植え付けられ、やられた人は狂 暴なゾンビみたくなる……ってルートもあったんだけど、コレはシステムがよく解らない。

 でも本作によって明らかになった元祖「エイリアン」の謎が溶けた部分もありました。それ は「エイリアン」で惑星に不時着した乗組員たちが宇宙服を着て探検するところで、最初に出 てきた宇宙船の残骸や大きな砲台(実はコクピットだった)はてっきりエイリアンが昔使って た物だと思っていたら、実はエイリアンに滅ぼされた宇宙人たちが使ってた物だったんですね ぇ。
 そのことが解っただけでも何だか良かったなって感じでした。

 今回期待してたのと全然違ったけどオレはスッゴイ楽しかったですよ。でもやっぱし、元祖 と比べてみると、全編を貫く演出の一貫性とか、完成された世界観、面白さや美術や演出・音 楽……どれをとっても元祖の方が数段優れていたと思いますね。

 CGってリアルでも絵空事な感じが否めないですよねぇ。宇宙の孤独感や、あの不気味な惑 星の圧迫感は第一作の迫力に叶いませんよねぇ。
 モコモコした宇宙服を着て、宇宙船(ノストロモ号だっけ?)から船外へ出た時の、あの薄 暗くてビュービュー風の吹く惑星の不気味感とか、全く素晴らしかったですよねぇ。

 演出もCGを駆使したグロい場面が沢山あるけれど、やっぱ第一作のあの粘着質の口を開い た卵からフェイスハガーがガバッと顔に張り付くところとか、それが取れて良かったと思って 食事してたら急に苦しみだして胸を喰い破って幼虫が出るところとか、また乗組員のひとりが 争ってたら殴られた拍子に首がバカッと取れて、それでも暴れてるから何だこれは! と思っ ていたら実はアンドロイドだったと解るシーンとか……あ〜の衝撃度は群を抜いていましたか らねぇ。



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