「ラストエンペラー」
絢爛たるこれぞ大超大作! ベルナルド・ベルドルッチの紛れもなく代表作で、歴史に残る10年に一本の
映画……と言ってもそれほど過言ではないんじゃないかな。
監督はイタリア人、ロケ地は中国で中国の歴史を描く、俳優は多国籍、セリフは英語で、音楽は日本の坂
本龍一! 国籍を超えた一流のスタッフが結集して描く歴史絵巻。 オレが勝手に提唱している "文化人類
学的映画" と言う名称を思いつくきっかけでした。
ベルドルッチ監督と言う人はこれもそうだけど後の「リトル・ブッダ」「シェルタリングスカイ」(どっちもあんまし
面白くなかったけど…)を見るにつけ、こんなにも博学に世界の歴史や文化のことを知り尽くしている人はい
ないのではないか、と思った。見てて凄い知識と言うか頭が良いと言うか、天才を感じてしまう。
いつも言ってるけど歴史の教科書なんかよりこゆ映画見た方が何倍も勉強になる。中国に何千年も続
いた国の皇帝として生まれ、僅か3歳で皇帝に即位した溥儀。
皇帝として生まれたことは人から羨まれるかもしれないけれど、それはそれで当人にとっては過酷な程
に周りに翻弄されて行くのだ。
生母からは引き離され、城内から外へ出ることは許されず、出ようとした溥儀の目の前で巨大な門が扉
を閉める描写がまさに人の運命と言うものを象徴する。
成長した溥儀は立派な皇帝になるが、戦争になり、日本に侵略されると日本が勝手に作った新国家 "満
州国" の皇帝とされ、戦争が始まると更に翻弄されて行く。
まさしく運命・運命・また運命……運命劇と聞いてまず思い出されるのはこの映画ですねぇ。
ベルドルッチは巨大な歴史のうねりと、それに翻弄されて行くたった一人の人間の有り様をミクロとマクロ
を自在に行き来しつつ壮大にシビアに描いて行く。
なんと言う人間の運命! なんと言う人生のはかなさよ……巨大な歴史のうねりの中で木の葉の様に舞
うラストエンペラーのこの哀れ、憂いが絢爛たる歴史絵巻の中に紡ぎ出されて行く感動。これはかのデイビ
ッド・リーン作品にも劣らぬ見応えを覚えた作品でした。