「レスラー」

 い〜や〜驚きました。コレが本当にあのミッキー・ロークなのか!? 別人ですねぇ。 あ〜の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」で鮮烈に登場した傍迷惑な刑事っぷりは「フレンチコネクショ ン」のポパイにも対抗出来たのではないかな。

 思うにミッキー・ロークってちょっと個性があり過ぎて、作品に恵まれなかったのかもしれませんねぇ、 で〜も実はかのショーン・ペンに尊敬されている程の演技派だったんですよ。思えばウォルター・ ヒルの、ブ男が整形して美形になった姿を演じた「ジョニー・ハンサム」で整形後鏡を見るシーンな んてホントになんとも言えなかったですね。

 物語はかつて大スタープロレスラーだった男が落ちぶれて、地方巡業のプロレス興行で食い繋いで いきながら、老いが来てプロレスが続けて行けなくなると言う展開。

 そこまで聞くと「チャンプ」とか最近の「ロッキー・ファイナル」とかもありましたけど、本作が新しい のは興行で集まったレスラーたちが組み合わせを聞いて、対戦する相手と「ここでこうなってああなって、 最後はコレで決めよう」等と打ち合わせして、試合で血だらけになりながら後でお互いに「見事だった ぜ」と称え合う件(笑)プロレスについてこんな描写をされたのは初めてじゃないかな。

 物語はレスラーとして孤独に生きて来た男が、心筋梗塞? で倒れ、プロレスが出来なくなってしま い、年増のヌードダンサーに助けを求めたり、別れて暮らしている娘に会いに行ったりするんだけれど、 そんな定番な展開がせっかくの鮮度を落としてる気がした。

 まぁそれはそれで胸に迫るドラマではあるのだけれど、それは他の作品でも観たことあるからね、何よ りマイナーなプロレス興行の描写が新鮮で面白かったので、オレとしてはありがちな人間ドラマよりもそ っちをもっと活写して欲しかったな。

女子プロレスの女二人組みとマネージャーのピーター・フォークが旅するアビルドセンの「カリフォルニア ・ドールズ」なんか思い出したな。あんなタッチでプロレス巡業の裏側を追って行くタイプの方がオレ としては観たかったかなぁ。

 でもまぁ、それはそれとして、本当素晴らしかったですよぅ。もう冒頭からぜ〜んぜん画面に金掛かって なくて、ミッキー・ロークの小汚いダウンの背中、背中、背中ですよ。映るだけでこんなに万感胸に迫る ってのは見事ですよ。

 それにリングに上がればヒーローなのに、それだけじゃ喰えなくてスーパーでバイトしてるってのもオレ なんて身に沁みて(笑)泣けますねぇ。あ〜の「もうやってられるかぁ! 辞めてやるぅ!」って物壊して 回るの、一度で良いからやってみたいですよねぇ(笑)。

 それとロークと恋仲になるバーのヌードダンサーを演じた女優さん。マリサ・トメイって言うんですね。 こ〜の人も素晴らしかったですねぇ。場面によって良い女になったり、可愛いかったり、また年増の寂 し気な雰囲気を出していたり、台詞無しに表情だけでこれだけ演じ分けられるってのは凄いですよ。

 まぁ全体としてありがちな感動作になってることが良くも悪くも……ってとこですが、好きですよ。だ〜 い好きです(笑)。



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