ネタバレ必須! 新作映画感想文

「エイリアン:コヴェナント」

 よくもこう何度も何度もおんなじ話を映画化するものだ。と思った。

 旅行中の宇宙船~謎の電波を察知して未知の惑星に着陸~エイリアンに憑依され~母船に連れて来ちゃって~実はアンドロイドがワルで……って「プロメテウス」も基本フォーマットは同じでしたよねぇ。リドリー・スコットって、第一作の監督は他の人が散々断ったのが回ってきたらしいけど、どんだけエイリアン好きなんですかねぇ。

「VSプレデター」にも続編が出来たりと、かなり乱発されたシリーズ? ですけれど、今回はあの第一作を見た時の、元来の不気味さと怖さを彷彿とさせる作品でした。終始ヨダレを垂らした総銀歯の口からまた小さな口が飛び出してくる! 身体を傷つけると酸性の体液が流れ出す! 見境なく飛び掛かってくる! 純粋動物としてのエイリアンを堪能しました。

 洞窟に並んでる大きな壺みたいなのから、覗き込むと顔に張り付くの、アレ嫌でしたね、あんなキモチワルイのが顔にくっつくんですから~ホント生理的にイヤでした。

 ショッキングな演出はかなりエスカレートしていて、例のお腹を食い破って幼虫が出て来る描写が何度もあったり、残酷な演出は凄かったです。

 しかし、今回小さなタマゴ? を踏んずけると黒い粒子みたいのが舞い上がって耳とか鼻に入って体内でエイリアン化するのって新しいシステムですよね、システムを後付けするのは折角秀逸だったオリジナルの設定をフヤケさせてしまいますね。

 前作「プロメテウス」からの巨人族? の関連とか、裏設定を探りながら観るのも楽しかったけど、相変わらず分かり難い。まどーせ作り物なんだからどうでも良いとも思うけど。

 毎度登場するアンドロイドと製作者の会話とか、謎の惑星で出会った旧型アンドロイドとの進化論の問答とか、人類の根源に関する深淵なテーマがあるかと思えば、残虐なグロ描写があったりと、まぁ総じて盛り沢山? で圧倒される作りになっていました。勿論まだ続きますね。






「ダンケルク」

 観客を否応なく戦場へ導く冒頭から一気に引き込まれました。でまんま止まることなくラストまで突き進んでいく。ず~っと戦場のサバイバルの中に身を置かれて、途切れることなく圧迫されるので、1時間40分の上映時間が3時間くらいに感じてしまった。

 あんなにだだっ広い海岸線なのに逃げ場が無い! 広いのに閉塞感があるってのも凄い表現ですね。

 でもこの映画戸惑うんですよ、まずは大勢の兵隊が船を待って並んでいる桟橋にテロップが出て「1週間」って1週間前? と思っていると場所が変って自家用の釣り船で兵士たちを助けに行こうとしているおじさんにテロップ「1日」へ? と思っていると今度は空を飛ぶ三機の英軍機スピットファイアにテロップ「1時間」?? ってなんぞやと思っていたら、以降この3つの時間軸が複雑にカットバックしながら進行していくのだけれど、どうやらコレ、同時進行の話じゃなくて、同じ現場に絡んでいるけど1週間・1日・1時間という3つの違う長さの時間を1時間40分の流れの中に納めているという……新しくって面白いんだけど、何の意味があるのか? と考えてみるに、現実に起きた出来事を時系列に沿って描いても展開的に退屈するのでこんな風に工夫したのかな? と思いました。確かにそれで面白かったし。

 しかしてそれ以外は極力作りもの的なドラマ要素を排したドキュメントタッチに徹した作りには、退屈してしまった向きもある様ですね。釣り船のお父さんのエピソードには一番ドラマが仕組まれていましたけれど。

 あとスピットファイアのパイロット=英雄を演じたトム・ハーディさんは「ダークナイトライジング」の時もそうだったけど、マスクで顏が隠れる役が好きなんですかね、ラストまでこの人がこの人だったとは分かりませんでした。

 こうした映画でこういう言い方は不謹慎と思われるかもしれませんが、メッチャ面白かったです。鮮明な戦争描写。何しろ一番燃えたのはスピットファイアとメッサーシュミットの空中戦ですよ! かつて「空軍大戦略」を思い出させる。近頃戦争映画を娯楽として観る向きには抵抗があるけれど、ハイ正直に言います。子供みたいに燃えてしまいました。

 オレ不勉強で知らなかったのだけれど、ダンケルクの大救出作戦というのは実際にあったことなんですね。まるでその時のその場に居合わせた様に圧倒的なリアル感で、上映時間中ずっと死ぬか生きるかのサバイバルに放り出されます。

 でも終わってみると映画としての着地点はハッキリしませんでした。救出作戦の成功を祝うのか、それともやっぱり戦争の虚しさを表現したのか? そのどちらとも取れる描写で終わったことに意図があったのでしょうか。

 一部には現在イギリスがユーロから離脱して、フランスも後に続けという政治的な情勢になぞらえたのだとする解釈もある様ですが、そんな意図でこの映画を作ったのなら当時を生き抜いた人たちが怒るかもしれませんね。






「三度目の殺人」

 是枝監督のオリジナル企画・脚本でこんな映画が……どんななんだろうと興味津々でした。

 面白かったんだけど、でもコレなら是枝監督でなくても撮れるんじゃないか。と思いました。って勝手に是枝監督のテイストを決めつけて言ってますけど、どこまでがドキュメントなのか堺が見えない様な作風が魅力だったのに、本作はまるっきりフィクションに振り切ってしまった。

 それが悪いとは思わないけれど、でもフィクションとしてもそんなに新味は無かったです。

 役所広治さんはいいんだけど、主人公が犯罪者と面会して翻弄される……って仕立てをやるなら元祖レクター博士を凌駕するくらいのキャラでないと無理ですよねぇ。

 それとミステリーなんだから一番の見どころになるのはネタですよね。観客は皆考えながら見てるワケで、中盤すずちゃんが告白した事って大体の人が思いつくことなんじゃないかな? ドッチラケました~それでも終盤にもうひとヒネリあったので良かったですけど、でもかつて日テレの「火曜サスペンス」でもこれくらいの作品はあったと思います。

 折角新作をお金出して観に行くのだから、観客としては想定外の物を観たいですよねぇ。
 今や面会シーンのお約束になっている「天国と地獄」のラストでクロサワが発明した、一方の顏をガラスに映すことで両者の顏を同時に映すのをやってましたけど、やり過ぎじゃないですかね、これでもか! これでもか! と両者の顔を同じ画面に映しまくっていました。
 あと関係ないけど被害者の奥さん役の斉藤由貴さんが容疑者の役所さんとの不倫を疑われると、何故か絶対クロだろうと思ってしまった。役者のイメージって大切なんですねぇ。






「ベイビー・ドライバー」

 銀行強盗の逃がし屋、ってのは「ザ・ドライバー」や最近の「ドライヴ」のバリエーションで、そんなに新味は無いのだけれど、主人公の変わった設定と、劇中に流れる楽曲とシンクロしたカーアクションの見せ方とかは新趣向で面白かった。

 でもこの「いつも音楽聴いてないといられない天才ドライバー」ってキャラはすっごくエッジが効いてるのに、途中から普通のツイテない青年になってしまい、それにつけて後半は既視感のあるノワールな展開になっちゃったのは惜しかった。

 ボスキャラのケビン・スペイシーの立ち位置はわざとぼかしてるのか、時折敵なのか味方なのか分からなくなる。彼の恍けた感じが活かされてる感じもしたけれど、なんかインパクトには欠けたかなぁ。あと揉め事を起こす仲間たちのキャラも割とステロタイプで定番な展開でした。

 タランティーノみたいなタイトルの出し方とか、楽曲とアクションのカット割りのシンクロとか、クールなタッチはすっごく楽しめました。






「ワンダーウーマン」

 マーベルコミック? とDCコミック? の区別も分からない私は、バットマンとアイアンマン以後のいっぱい出て来るややこしいヤツとか全く観ていません。

 ワンダーウーマンって、昔テレビでやってたグルグル回ると爆発して変身するリンダ・カーター? 版のチープだったの思い出して、ぜんっぜん観る気なかったのだけれど、今回久々にこの手の観たら、いやはやその本気度には恐れ入りました。この絵空事に莫大な製作費を掛けて、大勢の優秀なスタッフたちがマジで作っているのが凄い。

 そもそもワンダーウーマンてコスチュームのイメージから宇宙人絡みかと思ってました。彼女の育ったアマゾンてのも熱帯雨林じゃなくて、神話に出てくる女性の楽園だったんですね。まずは前半のアマゾネスの描写の見事なことよ! 島にそびえる山や滝、全部スラリとしたお姉ちゃんたちのコスチュームから暮らしぶり、戦闘訓練に励んでいる華麗なアクション。もうここでエエッと見入ってしまった。

 そ~してまた第一次世界大戦という時代設定を忠実に再現することで、そこに現れるキャンペーンガールみたいなワンダーウーマンをリアルに見せるという力技の凄さはどうですか!

 イギリスへ渡ったウーマンが戦争の最前線へ来て、楯を構えて敵の攻撃の前へ踏み出して行くと胸が熱くなって泣けた(笑)こんなに乗れるとは思ってもみなかったので驚きました。

 そうして終盤へ掛けてウーマンの宿命やラスボスも現れるに及び、壮絶なアクションと葛藤を見事に盛り上げましたね! いや~楽しんでしまった(笑)。





「家族はつらいよ2」

 かつて盆と正月に松竹の映画館で観ていた「寅さん」二子玉川の新ピカシアターで山田洋次作品を観るというのはどうも居心地悪いのだけれど……。

 始まってみたらア~タ、大勢の観客が同じところで笑う、同じところで涙をすする……ああ~コレは、かつて寅さんを観ていた空気に包まれました。

 平日の昼間だったので~きっと観客はご近所のご年配の夫婦連れとか、きっと寅さん好きだった世代によって起きた現象かと思われます。

 しかしホントに凄いのは、一瞬にして客席の空気を換えてしまう山田監督の作劇術ですぁね。古いとか昭和とか言ってるけど、こんなに泣いたり笑ったり出来る映画を他に作れる監督がいるか。

 映画を観に行くのって心のマッサージですよね。笑いと涙のギャップがある程気持ち良い訳ですよ。こ~んなに小刻みに泣いたり笑ったり泣いたり笑ったり出来るなんて最早脅威ですよ!

 観ながらコレはまるで新体操のあの若い男子のとても人間技とは思えないウルトラCだなぁと思ったのでした。ちょっとヘンか……。






「八重子のハミング」

 たまの休みに見るならあまりチョイスしない系ですが(失礼)知人に誘われて観ました~

 まだ認知症のことを痴呆と言ってた頃にはやった「恍惚の人」や「人間の約束」を思わせる夫婦愛を描いた真面目な作品でした。

 自ら癌に侵され三度もの手術を経ながら、アルツハイマーにかかった妻を介護した夫の実体験を映画化したのだとか。

 テーマは重いけど脚本が良く出来ていて、テンポ良く最後まで一気に観せる素晴らしい感動作でした。

 でご一緒した知人が「アルツハイマーになった奥さん役の高橋洋子ってあの高橋洋子?」っていうから、考えてみたら、高橋洋子ってかの「旅の重さ」でデビューして当時16歳? にして全裸で海岸にうずくまるスチールが強烈だったあの高橋洋子? まさか違うよね~等と話してたんだけど、調べてみたらやっぱしあの高橋洋子だったのでした!

 鮮烈なデビュー作の後忘れられない「サンダカン八番娼館」があって、その後「傷だらけの天使」にゲストで出たりしてたけど、暫く見ませんでしたよねぇ、でもそう言われると確かに面影がある。

 あんまし見たことないけどずい分芝居が上手い女優さんだなぁ~と思って見てたんですけど、そうならハナから知って観たかったですね。いや~素晴らしい。

 この監督さんは「半落ち」なんて大作も撮ってる一方で、鹿児島で和菓子屋の三姉妹を描いた「六月燈の三姉妹」なんて小さな好編を撮ってたり、とにかく自らのポリシーに沿って作品作りをされてるんだとか。

 大ヒットはしないのだろうけど、こういう映画を作る人もいてほしいな……と思う作品でした。言い方ヘンかな……






「スプリット」

 待ってましたよ~楽しい楽しいドンデン・シャマラン監督作品! ここんとこ不発が多かっただけに、久し振りの今作には期待しちゃいますよね~。

 三人の女子高生が多重人格者に拉致されて~翻弄されるというトンデモオモロそ~な設定に始まり~時間軸も三つに分かれ、ど~なっちゃうんだ~と尋常じゃない緊迫感でストーリーが走って行く。面白テイスト満載だ!

 毎度過っていく過去作品は「コレクター」「羊たちの沈黙」やっぱし同時進行で特殊能力を解説するベッソンの「ルーシー」など。

 今回の作品で新しいなぁと思ったのは多重人格者が進化して超能力を発揮していくという設定。コレは妙にリアリティがあった。

 で犯人と女子高生の知恵比べになってくのかと思いきや~そこはデングリシャマラン君。一筋縄では満足しません~どんなドンデンなるんだろうと思いますやね。で今回はどうだったでしょうか、この結末は流行なのか?

 最後に突然ブルース・ウィリスが映る。こないだ「キングコング」の最期にゴジラが出てきて今度は対決だ~を思い出した。し~かしここへ来てまさかの「アンブレイカブル」とは思いませんでした。

「アンブレイカブル」で絶体死なないヒーローになったブルース・ウィリスと悪役〝ガラス″のサミュエル・ジャクソンが今回多重人格から進化した〝ビースト″と三つ巴の戦いみたくなるんスかね(笑)

 キングコングの時はやるって薄々噂が流れてたし~そう驚きも無かったのだけれど、コレは結構ヤラレタ感がありました。シャマラン君は何処へ行くのか。

 結構怒ってる方もいる様ですが、オレはそんな不快じゃなかった。というかオイラ「アンブレイカブル」大好きやし(笑)けどもう20年ちかくも前やし、そんなに評価も人気も高い作品じゃなかったけどね~一番シャマランらしい作品だとは思ってますけど。
 まぁ良くも悪くも想像したのとは違いました~だから面白いとも言えるのか~






「ムーンライト」

 アカデミー賞騒動も記憶に新しい受賞作! んでもたまの休みに観るならやっぱ「ララランド」ですあね。それを押し退けてヌカ喜びに陥れ、見事に受賞した本作はずっと観たいと思いつつ~なんだか辛気臭そうな空気も感じてて腰が上がらなかったのだけれど、やっと観ました。

 主人公の少年期、青春期、青年期、を3幕に分けて順番に描かれて行く……少年期は内気で苛められっ子で、母子家庭のママはヤサグレてるし~主人公は何故かヤクの売人のオッサンと知り合ってメシ喰わせて貰ったりするのだけれど、俯くばかりでウンともスンとも言わない……。それが後の人生に多大な影響を及ぼすことになる。

 第二幕の青春期も~相変わらずの内気でオトナシ君な主人公は苛められ、ちっとも喋んない、売人のオッサンは亡くなったそうで、その彼女とはまだ付き合ってメシ喰わして貰ったり、母親が男を連れ込む夜は泊めて貰ったりしてる~でも黙りこくってて喋らない……うう~もっと喋れよ! と言いたくなる。

 そんな主人公にこっちもイライラしてきて~コレじゃ苛められてもしょうがねぇだろう~とか思ってしまい、マサカこのマンマで最後首括り「ダンサーインザ……」じゃねぇだろうな……と心配なってきたら~中盤マサカのホモ展開! でその彼にも裏切られたオトナシ君はついに爆発! 苛めっ子を後からイスで殴打! ヤッターとなっての第三幕ですよ。

 大人になって、すっかり貫録も付き、立派なヤクの売人と化した主人公君、かつて因縁のある例の〝彼″と再会するんですね……。

 終ってみれば新手の〝ホモ物″でした。確かに新しい、男なんか手も触るの嫌だけど、かつて「蜘蛛女のキス」や「ブロークバックマウンテン」には、ああ~こんなこともあるのかなぁ……と思わせた、そのまた新しいパターンが生まれたって感じですね。ホモへの目覚め方三部作とでもいいましょうか。

 そんな要素もあるとは聞いていたけれど、前半は全然そんな気配はなくて、その場面がきて一瞬エッ? となるんだけど、それまでの展開に必然性が仕組まれてたことに気付かされる、上手い構成になっていました。

 でもそれをテーマとしてズバリと全面に押し出していないところがこの映画の新しかったところかな、こ~の主人公と彼との関係は「友達以上、恋人未満」な感じなのだ。彼も主人公も根っからゲイという訳でもなく、彼には結婚してた妻との間に出来た子供もいる。

 まぁでも全体にはやっぱし辛気臭いですよ。明るいか暗いかで言えば暗い。でも新しく良く出来た、アカデミー作品賞の名に遜色ない映画でした。この手の素材で作品賞を取ったのも新しいですよね。

 第一幕に出てきた、少年期の主人公の面倒を看てくれた売人のオッサンはと~っても芝居が上手くて存在感バリバリだったのに~第二幕ではもう死んでいなくなってて、どしたんだろう~と気になってしまった。コレは観客の興味を惹き過ぎたのかな、作者の計算ミスなんですかね、あの人あれだけの出番なのにアカデミー助演男優賞を獲ったんですねぇ。






「パッセンジャー」

 超絶オモロそうな状況設定なんだけど、コレで後半どんな盛り上げ方をするのかな~と予測してみたら……

 地球を出た時点でそうなる様にプログラムされていたとか、宇宙船の危機を救う為にオートで起こされたとか、宇宙人が起こしたとか……いずれにしてもまぁ及第点なSFなんだろうなぁと思っていたら~

 コレが思いがけず、考えされられる二人の出会いの発端とドラマが仕込まれていました。

 コレ宣伝文句だと二人だけ起きちゃった~と言ってますけど、本当は男の方一人だけだったんですよ。250人だかの乗組員と5000人の旅行客は全員冬眠状態。巨大な宇宙船に一人っきりですよ、あと90年もあるのに!

 ここでこうなったらこうなるだろうな~ということを全てやってる。ゲームセンターとかプールもレストランも一人占め。まぁ男子やし、フルチンで走り周ったり……

 で1年ですよ! 一人ぼっちで……で話し相手も欲しいし、どうせなら美人が良いし……ってなりますよね、きっとオレでもそうなるだろうな~と思わせるところが面白味ですよ。

 彼女の方は自分も機械の故障で起こされた~と思ってる訳ですから、まるでこの世に二人きり、嫌でも仲良くなりますやね、でも彼に起こされたのだと知ったらどうでしょう。いや~面白く作られていました。

 悪気も無いのに秘密をバラしちゃう人間みたいなバーテンダーロボの使い方も絶妙でした。

 まぁ終盤の盛り上げ方は~ハリウッドエンタメとしてはどうしてもスペクタクルな見せ場を作りたい為に~突っ込みどころが出て来ちゃうのは仕方ないですかね、んでも十二分に楽しめる人間ドラマになっていて、SFの楽しさを満喫したのでした。






「お嬢さん」

 お~モロかったですよ~殆ど予備知識もなく、知人の口コミだけで行って来ました。

 都内で2館しかやってないんですね、んで満員ですよ。オモロそうな匂いを嗅ぎつけた映画好きな人たちが集まって来てる感じだ。

 エロチックサスペンス? くらいな予備知識しかなかったのが大正解。作者の意図に翻弄されて~十二分に楽しませて頂きました。

 3部構成になっていて~第1部の終わりで唖然としてから時間が戻り、視点を変えた第2部、更に第3部と続き、その中でも時間軸いじりまくりで壮大なサスペンスが展開するという趣向。

 時間軸いじり放題で複雑な展開がひとつの着地点へ向かうという構成は、ペドロ・アルモドバルの「バッド・エデュケーション」やフランス映画「女はみんな生きている」を思わせる。

 そ~れが本作は何と日本軍に併合されてた頃の朝鮮半島が舞台、というのが異色だ。何しろセリフの半分は現地の人が話すカタコトの日本語で、和洋鮮? 折衷のセットや美術の中で展開するのが新鮮で、味わったことのないエキゾシズムを醸し出している。

 こ~の鮮烈な映像と複雑に絡みながら鮮やかに昇華するラストは見事でした。エロ描写も韓国映画はここまで来たか、と思わせます。

 いや~本当エンタメしましたねぇ。






「母 小林多喜二の母の物語」

 この映画を製作した〝現代ぷろだくしょん″て聞いたことあると思っていたら~かの山村聰監督の「蟹工船」1953! から始まって、オレも公民館で観た「はだしのゲン」やかの橋本忍の大傑作「真昼の暗黒」も作ってる。

 設立から一貫して社会問題や人権問題を鋭く問い掛ける作品を作り続け、設立者が亡くなると奥様が跡を継ぎ、脈々と映画製作を続けているという、凄い会社なのでした。

「真昼の暗黒」は冤罪と言われた裁判がまだ進行中なのに企画を立ち上げて、当局からの「やめろ」という圧力にも屈せず製作~上映したという反骨精神も凄いけど、今観ても超絶凄い脚本で見応えバッチシ! こうした警察の行き過ぎた取り調べ~虚偽の自白強要って60年も前から変わってないんだな、と空恐ろしくなる。

 でこの映画ですよ「蟹工船」小説の作者で当時特高警察に捕まって取り調べリンチで殺害された小林多喜二のお母さんの物語。

 まず思ったのは懐かしいタッチ! カメラはほぼフィクス! フィクス! フィックスですよ! というか実は時代考証を施した建物とかを映してちょっとでもパンすると現代が映っちゃうのかな……とも思うんだけど(笑)何せお金を掛けずに作ってるのがみえてしまったり。

 でもオイラはやたら手持ちでユ~ラユラ画面を揺らすのが嫌いなので~コレぞ映画の撮り方だと落ち着いて観れました。ドラマは役者の演技を堪能する物ですからねぇ、コレのがずっとストレートですよ。

 セット等にお金を掛けられない分(失礼)役者さんは寺島しのぶさんを初め渡辺いっけいさんとか上手い人が沢山出てました。

 まぁねぇ、娯楽作という訳ではないし、若い人とかやっぱラララ~の方に行っちゃうんでしょけれど、大作メジャーの一方でこうした映画屋魂みたいな物もあるのだということを知って欲しいですねぇ。

 全国で10館しかやらないし、新宿なんて朝一回きりのモーニングショーですぜ。でも満員で入れない方もいました。殆ど年輩の方ばかり。

 こ~の方言とか佇まいとか、見事な役作りをされた寺島しのぶさんに主演女優賞をあげて欲しいんですけどねぇ。






「ラ・ラ・ランド」

 いや~楽しい楽しい楽しい楽しい♪♪
 
 オープニングの高速道路モブダンスにゃ製作費の半分くらい掛かってんじゃないでしょうか、一挙に作品世界へ引き込まれます。

 昔ジーン・ケリーやフレッド・アステアがニッコニコで歌ってたミュージカルを思い出した。カットの繋ぎや場面設定、シーンが変わる映像処理等、始終アナログなタッチが通されてます。

「パリの恋人」「巴里のアメリカ人」とパリ繋がりやし、昔懐かしいハリウッドミュージカルを多分に意識してるのが分かる。全体からオマージュが発揮されていて、それでいて楽曲も俳優も新しいのでピッチピチです♪

 街の夜景をバックに二人でタップダンスをカチャカチャ踊り出したら~泣けてきた(笑)何気なく会話しながら~靴をタップシューズに履き替えてくんだもの、ニヤケますねぇ。

 ストーリーだって何の変哲もないベタベタのボーイミーツガール~で夢はあるけど金がない~片方が成功すると亀裂が入りケンカ~仲直り~で成功はしたけど失う物も……でおしまい。

 終盤5年後に飛んで別れ別れになった二人が再会し、もし一緒に添い遂げていたら~と空想回想するのがちょっとだけヒネった感じかな。

 でも本当、ミュージカルには楽曲と踊りが重要なファクターなのだなぁと改めて思わされて、嬉しかったですね。やっぱ観てる方も踊り出したくならなきゃですよねぇ。






「マグニフィセント・セブン」

 血沸き肉踊らない……

 そもそも出発点としてサム(クリス)は何故金にも名誉にもならない農民の頼みをああもアッサリ引き受けたのか……ここは大事なとこですよねぇ、そ~れがずっと気になって入り込めないまま話が進む。せめてそれらしい素振りでも見せて、きっと何か因縁でもあんだろな……くらい思わせてくれりゃまだついて行けるのに、最後ラスボス倒す時になって説明されてもなんだかなぁ……という感じだ。

 他のガンマンたちの描き方も表面的で極めて雑だ。イーサン・ホークは南北戦争の優秀なスナイパーで、人殺しすぎでPTSDなって人が撃てなくなっちゃったみたいなんだけど、描写がひじょーに中途半端で心に響かない。彼の相棒の東洋人なんてインパクトあるキャラなのに、二人の友情も気持ちに訴えてこない。イーサンは後半何で一人で逃げちゃって、また戻ってきたの?
 
 インディアンはただウロウロしてたら知り合って、サムに鹿の心臓あげたら喰べたから仲間とか、彼だって部族から追放された? かなんか事情抱えてるでしょうに、こっちは知りたいんだから描けよ!

 説明しないのが流行りなのかもしれないけれど、それぞれがどんな経緯でこの戦いに加わるのか、それぞれにバックボーンがあるのが群像劇の醍醐味じゃないか。スッ飛ばし過ぎでしょう。彼等の人柄が心に触れてこないんじゃ感動もクソもない。ドラマの味わいがことごとく削がれてしまった感じだ。

「七人の侍」のコンセプトは人間を描く力を弱めることなく活劇を描く……だったんじゃないのか「荒野の七人」もかなりスカスカだったけど、7人のガンマンがそれぞれ人的魅力に溢れてたから、一人また一人と倒れていくのに悲壮感があったのだ。

 最後のエルマー・バーンステインのテーマ曲だけが燃えた。






「ダーティ・グランパ」

 まぁまぁなんとも美味しそ~なお膳立てなことよ! バディでロードムービーでセオリーな設定と展開にデ・ニーロとくれば、大好きコースでゴキゲンでした♪

 し~かしこのお下品全開にゃ顔をしかめてしまう向きもあるでしょうねぇ。オイラは大好きですけれど(笑)

 妻が死んだので、40年ぶりにハメを外して若い女とイッパツやりたいというジイサンが、新妻の尻に敷かれて生真面目な弁護士の孫を無理やり連れて旅に出る。

 見どころはこの珍道中に巻き起こり、段々エスカレートしていくエピソードですが、まぁ~盛り上がりましたね。本当行くところまで行ってくれます。何しろデニーロ御大が最高である。

 難を言えば孫の奥さんがちょっと可愛そうに感じてしまうところかな。孫だってそんなに旅先の彼女に心が振り切ったという感じでもなかったし。

 きっと作者の主眼はあくまでこの最低な二人の掛け合いであって、女性陣は深く掘り下げてない感はありましたね。特にデニーロに執心する女子大生とか雑ですやね(笑)それも含めて女性にゃ反感を買いそうでした。

 途中で関わったオモシロキャラたちはずっと絡んでくるし、随所の小ネタも効いてるし、楽曲もノリノリだし。よく出来た美味しいお料理でした。それも高級というより通向きのラーメンという感じ。

 悪くいうと野郎のイヤな部分丸出しだ。スーパージイサンバンザイ!






「ローグ・ワン」

 ターキン! ターキン! モフ・ターキン! ジェダイでもないのにベイダーより偉かった唯一の男! あの名優ピーター・カッシングが! まだこんなに若々しくて健在だったなんて! 思わず立ちあがて叫び出しそうになった!

 も~うふんだんに出て来るスターデストロイヤーの周りをブンブン飛んで戦うタイファイターとXウィング! ああ思い出す何度も通って夢中になったスター・ウォーズ! 興奮で落涙ですよ。

 やっぱしベイダーが出るとおお~スターウォーズだぁ! と思いますね。んでもちびっとしか出ないしライトサーベルもやんないのかな、と思っていたら~ラストへ来て鬼キャラ発揮! ブンブンぶん振り回したら拍手喝采ですよ! まるで終盤になってやっと出てきた死亡遊戯のブルース・リーみたいだ! 敵キャラなのにヒーローなのはターミネーターに通じる感じだ。

 ラストのレイア姫も顔映さずに済ますのかなと思たら~あ~らピチピチレイア姫が! 本人じゃないか! こ~のCG技術は人の心を弄びますね、エピ7のしわくちゃ(失礼)レイアとソロよりも、本人としか思えないモフ・ターキンやレイア姫は大感動でした。エピ7よりも断然コッチですよ!

 し~かし若返りした作り手たちにリアル世代として言わせて貰えば、今回もキャラクターの描き方はヘタですね。段々キャラが揃って冒険に出る桃太郎型ストーリーで後半皆死んでくけれど~エピ7の時も思たけど、前半でもっと各人の印象をガッツリ売っておかなくちゃダメですよ、後半次々に死んでもそう感慨も悲壮感も沸いてこない「七人の侍」をちゃんと観たのかと言いたくなる。

 で~も本当少年の日々が蘇えり、言い知れぬ感慨に襲われました。何より作り手たちのスター・ウォーズへの思いが共有出来たみたいで感激でした。






「疾風ロンド」

 心情的な感動はあまりないけれど「面白かった!」タイプの爽快感がありました。

 CMとか見ると阿部寛さんがガッツリ主役な感じだけれど、実は極秘に開発された細菌兵器を巡る奇想天外な群像活劇といった趣向だ。

 何せ一番の見せ場であるスノボーチェイスはAKBの大島さん担当ですからねぇ。

 雪山に細菌兵器の瓶が埋められてるという図式はかの「復活の日」を彷彿とさせるけど、本作はガラリと変ったドタバタコメディテイスト。

 いるだけでそこはかとない可笑しみを醸し出す阿部寛さんの存在が作品の色合いを物語っています。

 ボスキャラの柄本明さんが嬉々として演じている悪役は~きっと一日で撮影しちゃったんでしょうけれど、全く楽しそうにシャウトして分かりやすい(笑)

 モロツヨシさんのふざけっぷりも楽しいですね。この役はどの様にも演じられる余白のあるところを、お持ちの個性をのびのびと爆発させてる感じでした。

 マクガフィンを巡るハチャメチャ活劇が終盤見事に集結していくという展開は、昔フランスのニューヌーベルバーグと言われた「ディーバ」とか思い出しました。

 痛快でしたよ~






「聖の青春」

 ライバル同士がひとつの競技に没頭し、彼等にしか分からない深みの境地にはまって行く……という趣向は卓球の「ピンポン」や素潜りの「グレート・ブルー」とかあったけど、全く絵面の動かない将棋という素材でそのテイストを表現したのは見事でした。

 まだ20代なのに余命幾ばくもないと医者に宣告され「女も抱いたことがない」という主人公、何故死ななければならないのか、生きてきた理由は将棋しかない。

 そんな宿命に追い詰められた主人公の佇まいを、体重を増やすというデニーロ・アプローチで見事に体現した松山ケンイチさんはアカデミー賞ですね。

 宿命のライバル羽生名人の描き方も素晴らしい。ひょうひょうとしていながら勝負に掛かるとギラリと変わる目つき、対局の後二人で人知れず居酒屋へ行き、和んで飲んでる恋人同士の様な初々しさと「君に負けたことが死にたいほど悔しい」というビビットなひとこと!

 主人公の境遇や二人のやり取りから、将棋のルールを知らなくてもスリリングな勝負の厳しさや主人公の生きる刹那をここまで盛り上げたのは実に上手い作りだ。

 旅館の一室で将棋盤を挟んで対局する二人の背後に見える庭に、日が暮れて美しい灯りが灯っていく……気付きもせずに盤面を凝視し、身体を揺すっている描写など壮絶でした。

 クオリティという意味では今年バケモノ的なヒットをした数々の邦画よりもずっと群を抜いているのではないかな。






「ガール・オン・ザ・トレイン」

 設定が良いです。アル中で仕事クビになったのに同居してる友達に言えず、電車で通ってるフリしているイタい女(もうガールって感じちゃうけど・失礼)……電車の窓から元彼と住んでた家が見える、結婚して済む筈だったのに、その家で元彼が別の女と結婚して住んでる……。

 電車が走るに連れてそのまた隣りに見えてくる家では、いつも仲睦まじくしているカップルが見える……ある日その若妻が夫ではない男とキスしているのを見てしまい……コレは放っておけないと、主人公に歪んだ使命感みたいのが生まれ……。

 この辺までの引き込み方はバツグンですね。あ~面白いの始まったぞ! と思わせる。で事件が起きるんだけど、ここでの人間関係がちょっと複雑。

 その若妻は自分の元彼の家にベビーシッターに来てたんだけど、失踪し~遺体が発見される。そこで警察の捜査が及ぶに連れて、主人公が容疑者にされてしまうのだ。

 犯行時、確かに主人公は近くにいたのだけれど、アル中で自分が何をしていたのか記憶が無いという……そこがこの映画の一番のミソで、終盤そのネタが事件の真相も含め彼女の人生までも覆してしまう急展開が鮮やかでした。

 事件のミステリの方は割と呆気なく犯人の予想が付いちゃって~前半の盛り上がりに比べるとチョイ肩すかしだったかな。

 何しろイケてない女主人公の冴えなさっぷりが良いです。この女優さんどっかで見たことあるなぁと思ってたら、なんとあの「マイ・ニード……」のタフな女兵士だったとは~演技派なんですねぇ。






「この世界の片隅に」

 この夏大ヒットした「君の名は。」もそうだったけど、やっぱり思うのは「アニメは絵なんだなぁ」ということでした「かぐや姫の物語」を彷彿とさせる絵のタッチで、ほのぼのとした、日本人のDNAが刺激される昭和初期の暮らしが細やかに語られて行きます。

   そんな生活がビビットなインパクトを持って観る者に伝わってくるのは、時折り表記される年月日を告げるテロップが次第に「昭和20年8月」に近付いてくるから。舞台の広島に原爆が落ちた日が絶対的なサスペンスになって、人々の日常が強烈な意味を持って観客に迫ってくるという趣向。

 戦争の悲劇については今までに手を変え品を変え、いろんな形で私たちの前に現れて来たけれど、それでもやっぱり忘れるんですよねぇ。毎年8月になるとテレビで「火垂るの墓」をやったりすることで思い出されるという効果はある訳で。

 これからもこうした新しい趣向で戦争の惨さを伝える作品は出てきて欲しい、必要なことだと思いました。理屈じゃないですよ、全く可哀相で可哀相で見ていられません。

 エンドクレジットに列記される何とかファンド? でこの映画に出資した方々の名前を見ていると、こんなにも多くの人の同じ思いがこの作品を産み出しているんだなぁ、と思いました。

 本作は拍子抜けな程ほのぼのとしたタッチであるだけに壮絶なインパクトを残す。コレが創作におけるリアリティというものだと思いました。

 それでいて最初に出てきたバケモノ? や終盤に出て来る母親を失った孤児とヒロインとの幼い頃の記憶のリンク……等、フィクションならではの隠喩もあって、とても奥行きのある作品に仕上がっていました。






「キリマンジャロは遠く」

 最近では「相棒」の恐い上司ですけど、片桐竜次さんといえばその昔「大都会パート3」の第1話でトラックの荷台から追ってくるパトカー軍団にバズーカ砲ぶっ放してたのが鮮烈でした。

 大好きだった「大追跡」「探偵物語」「プロハンター」……で狂暴な恐い役ばっかしだった名悪役さんが、俳優生活45周年の初主演だそうで、どうですかこの味わいは! 存在その物が絵になる感じ。

 枯れた味わいの名脇役が主演した映画といえば、デビッド・リンチがリチャード・ファンズ・ワースを主演に撮った「ストレイト・ストーリー」とか思い出します。

 物憂いシャンソン、煙草の煙、夜の都会~とムードテンコ盛り! それもその筈、監督は前出の所謂火曜夜9時~の日テレアクションに徹した脚本家として活躍されてた柏原寛司さんやし。

 監督が趣味に特化しなければ今時こんな場末な雰囲気の暗黒映画は作られませんやね。お金が掛かってないのがまた良いですよ。いや~楽しかった♪

 そ~してまた当時の懐かしい俳優さんたちが随所に散りばめられて……病院の屋上で一緒にタバコ喫ってた看護師さんて竹田かほりさんですよねぇ「ああ~っ」と声出しそうになった。長谷直美さんやケーキ屋ケンちゃんまでが登場し、懐かしいったら!

 トークショーのゲストだった武蔵拳さんが言ってた「ラストに竜次さんから拳銃を受け取る芝居を、もっと二人でじっくり見せたかった」ってのよく解りました。

 あえてアッサリ流したのは監督のハードボイルド演出ってところでしょうか、でも正直何故ラストで撃ったんだろう……って、トークショーで聞かなきゃ分かりませんでした。

 ポスターの容貌はチャールズ・ブロンソンを思わせるけど、オレ的にゃ「ガルシアの首」や「デリンジャー」のウォーレン・オーツみたく主演作を重ねて欲しいですね。






「怒り」

 この監督さんの作品って釈然としないことが多くって、ちょっと苦手なんですが、この大ヒット振りといろんな意味で話題性が高いので行って来ました。

 この監督は役者をギリギリまで追い詰めて芝居を引き出す手腕が凄いんですかね。皆さん渡辺謙さんとか宮崎あおいさんとか言ってるけれど、オ~レ的にゃ何より広瀬すずさんの犯されっぷりと犯人の人がブッチギリですよ。

 広瀬すずさんのファンなんてアレみたら引きつけ起こしそうですねぇ。

 未解決の世田谷一家殺人事件とノバ英会話教師殺害事件で無人島に潜んでいた市橋達也を絡めた事件設定。

 それを沖縄・千葉・東京の三ケ所に現れた犯人っぽい男たちと人々との関わりを群像劇的に繋げて行くのだけれど、この三人の男が三人とも犯人の手配写真や防犯ビデオに写った姿に似てるのが凄い! この映画のネタはコレですよ。群像劇の新しい見せ方を開発したという感じだ。

 結果的にはそ~と~面白かったのだけれど、し~かし観終わった後の釈然としなさはやっぱしで、一体何が言いたかったのか、何より犯人像が掴みきれないので何だかよく解らないモヤモヤが残る。

 しかしそのモヤモヤ感がそ~と~にボルテージの高いモヤモヤなので、コレはコレでひとつの着地点なのかもしれませんねぇ。






「ハドソン川の奇跡」

 面白い面白い~大型飛行機を河に不時着させた英雄なのに~安全委員会が「近くの飛行場まで飛べたんじゃん?」とイチャモン付けてくる。それが立証されれば英雄どころか高価な飛行機を壊し、乗客を命の危険に晒した責任を追わされてしまう!
 
 も~う始まって5分でガッツリ本題に引き込まれますよ。この辺りは毎度作りが上手くて呻ってしまう。

 事実をエンタメにするのって難しいと思うけど、こ~の河に不時着した機長の判断が正しかったのかどうか……という是非を巡る展開に、事故の状況を再現したシュミレーションやボイスレコーダーの再生など、謎解きの面白さも加わって実にスリリングだ。

 そして観客が一番見たい不時着時の再現が要所に小出しにされていき、最後の調査委員会で核心が明らかになる。こ~の盛り上げ方も上手いですね! 見事な感動とカタルシスもあってニッコニコですよ。

 そして全く見事にピンポイントで浮彫りにされていくテーマ! こ~の何でも自動運転になってく世の中で、やっぱり人間て凄いじゃないか、と思わせてくれる。

 トム・ハンクスは今回も良い子の役でまた鼻につくのかな、と思ってたけど、イーストウッド御大の抑えた演出のお陰で全く自然な存在感だ。副機長さんも何処かで見たなと思っていたら「ダークナイト」で半分ガイコツになったあの人だったんスね。まぁいいオジサンになったこと。

 ちょっと不満があるとすれば96分の上映時間じゃ物足りない気がしたことかな。

 超満員で観る怪獣やアニメも好きだけど、封切り二日目でガラガラだけどこっちもご馳走ですよ~






「君の名は。」

 大大ヒットしてるんでしょうけど、渋谷の映画館さん、30分も並んだ挙句に「売り切れです」は無いだろう。もっと早く言ってくれなくちゃ無駄に並んでしまった人も多かったのではないかな。しょーがないから次の回へ繰り越して、2時間放り出されて読書が捗ってしまった。

 なにせ透明感のある絵が良いですね。日常を写実的にアニメ化するアプローチはあるけれど、あんましリアル過ぎても「んなら実写で良いんじゃん?」となってしまうし。アニメは「絵の味わい」が大切だなぁと感じました。

 かと言って絵だけが素敵でもドラマとして盛り上がらなければ意味が無い訳で、その点新海監督は脚本も良く出来ていて、観客の気持ちを盛り上げるのが上手いと思います。

 モノローグの詩的な表現も素敵だし、オープニングからカット割りや楽曲の入れ方とかもビビットで気持ち良く、とってもいいですねぇ。

 何せ日常のありふれた風景をこんなにも美しく見せてくれると、何か自分も実はこんな素敵な世界の住人なのかな? と勘違い(笑)させてくれますね。四谷駅とかこれからは違って見えそうだ。東京であんな星空はあり得ないけど。

 なので内容的にも日常のちょっと延長線上みたいな話が良いと思ってたし、今回は何せ題名が岸恵子と佐田啓二の……若い人は知らねぇか。やし、素材も「転校生」~「ラブレター」(スペシャルサンクスに岩井俊二ってありましたね)の焼き直し的で、もっと地味な展開を予想してたのだけれど、後半驚きのスペクタクルな展開に乗れるかどうかで評価が分かれるかもしれませんね。

 これまでにあった入れ替わりの設定に新味を加えて、ファンタジックな展開がスケールアップしていくのだけれど、それだけ突っ込みどころも増える訳で、でも同じくらい主人公たちの気持ちも盛り上がっていくので楽しく観れました。

「耳をすませば」や「時かけ」もそうだったけど、10代の青春時代(笑)を思い出させてくれるにはアニメの世界のが適してるのかなと思いました。

 ん~でも今回あれだけスペクタクルでファンタジーな展開をした後で、日常の石段ですれ違っても、なんか余韻というよりそらぞらしいな……と感じてしまった。やっぱし「秒速5センチ」の方が好き。

 新海監督の映画はあり得ない美しい星空がオレ等の日常の延長に見える……という魅力な気がする。






「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

 こ~れは興味深かったですね。一般的にゃなんと言っても「ローマの休日」を書いた人ですけど、オレ的にゃなんと言っても「パピヨン」ですあね。

「ローマの休日」の第一稿は「王女と無骨男」とう題名だったとか(笑)ジョン・ウェインが共産党糾弾の急先鋒だったとか、虐げられた彼に手を差し伸べたのがカーク・ダグラスで、その作品が「スパルタカス」だったとか、身を乗り出して見入ってしまった。

 過ぎ去った黒い歴史といえばそうなのだろうけど「哀愁」のロバート・テイラーが公聴会で共産主義者を非難する発言をしてたりとかは複雑な心境になりますね。

 他にも映画には出てこなかったけどチャップリンはイギリスに追放されたし、エリア・カザンは仲間を売って助かったとか、誰が味方なのかも分からない孤独感を西部劇にしたというフレッド・ジンネマンの「真昼の決闘」や当時の審問会の様子を克明に再現したデニーロの「真実の瞬間」とかも観てましたからねぇ。

 今までこうしたハリウッドの赤狩りやトランボの伝説はあちこちで語られていて、断片的には知っていたけれど、こうして実録的な映画にするにはそれなりの時間が必要だったのでしょうね、少なくともジョン・ウェインが生きてるうちはダメだったでしょう。

 そんな中で映画界から干されたトランボが偽名で書いた作品が「ローマの休日」であったというのは驚嘆ですね、明日どうなるかも分からない絶望的な状況なのに、あんなに楽しくてロマンチックで感動的なお話を書いてしまうなんて!

 後年の「栄光への脱出」「ジョニーは戦場へ行った」「パピヨン」あたりは赤狩りで虐げられた思いが爆発した感がありますね、刑務所に服役する時に全裸にされて口の中から肛門までを調べられる描写は正に「パピヨン」でした。

 しかし共産主義者だからといって、直接彼等からの実害があった訳でもないだろうに。なんでここまで迫害されるのだろう……と思ってしまうけど、当時それだけアメリカはソ連の存在が恐かったということなんでしょうね。

 だって共産主義者といいながらトランボは庭に池のある大邸宅に住んでるし、彼にしたって共産主義がどうこうというよりは個人の信念を捻じ曲げようとする体制と戦っているという感じだ。

 オレとしては彼の創作の何たるか……をもっと知りたかったけど、お風呂で全裸で半身浴しながらタバコ吸って酒飲んでタイプライター打ってるという。その絵面だけでも読み取れるところが多々ありました(笑)。






「シン・ゴジラ」

 いや~日本のCGもここまで来たか! と思える最初の這いずって進む幼虫? みたいなののビジュアルショックはそ~と~な物でした。でもアレが品川の河で船をガチャガチャ押しのけて進んで来るのがマックスの興奮だった。あ~のリアルな描写が今回の魅力でしたね。

 「ゴジラ」はもう世界規模でひとつの「演目」になっていて、今回のゴジラはどんな役者でどんな風に演じるのか……というのが見どころになっていますね。

 大筋は大体同じで、核エネルギーが原因で古代の恐竜が巨大化したゴジラが暴れるので、何とかして退治しましょう……という話。今回国連の決定でゴジラに核ミサイルをぶつけようというのは1984年版でもありましたね。

 オリジナルの本多版から金子版「総攻撃」があり、ギャレス・エドワーズ版があり、今回庵野版という感じ。予告編を見た時から、ああコレは「巨神兵東京に現る」な感じだなぁと思っていたらその通りでした。

 今回ゴジラの新しい趣向としては背ビレが光るだけじゃなくてレーザー光線みたいのが放射状に出てミサイルとかを撃ち落としちゃう。あと尻尾の先からも光線が出る。身体が半分爛れてるみたいで赤いのは「ゴジラ対デストロイア」といつも溶けそうな「巨神兵」からきてるのかな。

 同じ話でもキャラ設定が変わると全てが新しく見える……な興味で楽しかったのだけれど、毎回の見どころは設定と退治する方法ですね。今度のジョーズはどう倒すか……みたいな。1984版の「帰巣本能を利用する」って設定は何か哀れを誘うところもあって良かったのだけれど、今回のはちょっと仕組みがややこしかったかな。

 終わってみるとやっぱり同じですね。どんなにCGが発達して鮮明でリアルなゴジラになっても、クラシックな伊福部昭の楽曲がマッチするのはやはりゴジラはゴジラだからなんでしょうねぇ。

 やっぱりゴジラは伊福部の音楽が無いと……とも思うけど、結局毎回オマージュになってしまうんですね。皆ゴジラ好きだけど(笑)エンディングで例のテーマと「ゴジラの恐怖」「三大怪獣地球最大の決戦」「怪獣大戦争マーチ」と昭和シリーズに加えて平成のメカゴジラのテーマをチョイスする辺りはおお~と唸ってしまった。

 楽しかったけど、やっぱしもう一度「キングコング対ゴジラ」の頃の敏捷で爬虫類な活きの良いゴジラや三つの首がクネクネ動くキングギドラやズビズビと身体を律動させて歩くモスラ~みたいなのが見たい。

 そりゃゴジラは着ぐるみだからゴジラだったワケで、昔の「モスラ」の幼虫が海を泳いでいるショットとか、渋谷の街を壊しながら這い進む描写の方がず~っと心がこもって生々しい迫力がありましたね。

 それと今回カット割りにアニメを思わせる様なところがあって、特にひとことセリフ等の時に人物の顔に寄りすぎで気持ち悪い。オッサンとか息が臭いそうなんだもの。石原さとみとかなら良いけど(笑)大スクリーンでカメラ寄り過ぎでしょう。

 肝心の展開については、前半部はビジュアルの凄味もあって「エヴァ」の最初の方みたいな興奮があったけど、やっぱり後半失速するのかなと思っていたらやっぱしダレました。ビジュアルショックはある意味「出落ち」ですからね、作品の良し悪しを決めるのはむしろその後の展開ですよ。

 前半部の、こうなったらこうなるだろう……というリアルな政府の反応とか、あるべき混乱がリアルに描かれてくのが面白いのに、後半に登場する石原さとみ嬢がリアリティ無さすぎでしょう。そりゃ可愛い子ちゃんがひとりは出なくちゃ、って意向なのかもしれないけれど、折角の前半部のリアルをぶち壊された感じだ。

 単に可愛い子が出れば良いという訳でもないだろうに、出るなら出るでロマンスが生まれるとか、何かテーマに通ずる確執を生むとか、何かなくちゃですよねぇ。只のアメリカとの連絡係というか、お婆ちゃんが日本人で原爆の被害者だったって一言言ってたけど、それだけですもん。そりゃ石原さん出て来るだけである意味テンション上がりますけど(笑)いたずらに余計な雑念を呼んでただけの様な気がする。

 それよりも冒頭のヨットで遺言を残した生物学者? の事情をもっと掘り下げるとかした方が良かったのではないかな。そこがちょっと喰い足りない気がしました。

 でもやっぱりゴジラ大好きですよ。作り手たちがどんなにゴジラが好きで、愛して、コレを作ることに情熱を傾けているのかがヒシヒシと伝わります。本当楽しかったですよ~。






「ルーム」

女優さんがアカデミー主演女優賞を取った話題作。
 どんなかと思ったら~何故か小さな密室で幼い息子と二人暮しの若いお母さん。息子は5歳くらい。何の説明も無く部屋の中から一歩も外へ出ない二人の暮らしぶりが描写され……。

 たまに謎のオッサンが来て食料等を持って来るらしい「仕事が無くなった」とお母さんにボヤき、気に入らないことを言われると「誰の為に働いてると思ってんだ!」と凄む。その間ボウヤはず~と狭いクローゼットに隠れてる……どういうこっちゃ?

 はっは~どうやらこの母子はこの男に監禁されてるらしい……と解かって来る。そして恐ろしい事実、このお母さんはボウヤが産まれる前からこのルームに監禁されており、ボウヤはここで生まれた。だから生まれてから5歳になる今までボウヤは一度もこの部屋から出たことが無いのだ……。

 コワイですねぇ。遂に脱出し、初めて空を見て、陽の光を浴びた感動……てのが前半の趣向。

 し~かしコレは前に第二次大戦中にナチスから逃れる為に地下に隠れて暮らす人々の「アンダーグラウンド」というのがありましたね、アレはもっと、確か10年以上地下で育った少年が初めて地上へ出た時の、キラキラ光る湖か何かを泳ぐところが実に感動的で、アレのが凄かったかな。

 し~かしこの映画は中盤で母子は助かっちゃって、後の展開どうすんのかな……と思っていたら、長年の監禁生活の心的ダメージから立ち直る為の過程が描かれる。

 ふ~んなんだか「ルーム」って主題から逸れちゃったな……と思っていたら、終盤に来て心の傷を克服する為に、なんと二人でもう一度監禁されていた部屋を見に行くのだ!
 
 ほほ~そう来たか、と思いました。そ~して坊やが5歳になるまでを過ごした部屋を見て「こんなに小っちゃかったんだね」としみじみと語る……。

 思い出しましたね。以前10年以上を過ごしたアパートの部屋を引っ越す時、荷物を運び出してガランとした部屋を去る時のあの言い知れぬ感慨……それは引越しを経験した人なら誰しもあるであろう原体験ですよね、そこで過ごした年月が、自分の人生に対する愛おしさの様に込み上げてきて……。

 おお~ここへ持ってきたのか、と思いました。まさしくコレは「ルーム」じゃん。って。






「あやしい彼女」

 女手ひとつで娘を育て、過酷な時代を逞しく生きて来たお婆ちゃん。今も勝気でイケイケで、現代社会にカツを入れたいと思ってる。そんな70歳のお婆ちゃんが、20歳の肉体を手に入れたら……

 若返ったお婆ちゃんは歌が超上手い! で歌うのは彼女が生きて来た昭和の歌謡曲……こ~の若返りパートを演じる多部未華子さんが唄う加山雄三や美空ひばりの楽曲が良い(笑)

 原作は韓国映画だそうですが、これからドイツやフランス? 世界各国でリメイクされるそうで、そりゃ日本にも懐メロがある様に、外国にもそれぞれ懐メロソングという物はある訳で、この趣向は何処の国でもアリなんでしょうね。世界にあてはまるフォーマットというのか、ハナからそういう趣向で考えられた企画ではないんでしょうけれど。

 唄って踊ってホロリとさせて、楽しい楽しいエンターティメントでした。特に多部未華子さんの何と弾けて魅力的なことよ。

 ただ気になるのは~テレビ局主導の映画というのはどーして雰囲気もこうテレビドラマっぽくなってしまうのか。音の入れ方とか編集やカット割りとか……まぁそれは仕方ないのかな。でも映画館でソレを感じると冷めますやねぇ。

 それと終盤へ来てクライマックスのエピソードが偶発的な交通事故という……オリジナルがどうだったのかは知らないけれど、折角良い気分で観てたのに~悪く言うと台無しにしてる気がしました。






「百円の恋」

 余りにも評判なので観に行って来ました。金がなくても創意と工夫と、役者の熱演があればこんな面白い映画が作れるのですねぇ。

 ボクシング物としては言わずもがなの「明日のジョー」~「ロッキー」だしその女子版だって「ガールファイト」~「ミリオンダラーベイビー」と後だしジャンケンのそのまた後だけど、主人公のキャラに引き篭もりのデブデブ女を持って来たことですっかり新鮮な面白さが生み出されました。

 何かの公募で「松田優作賞」というのを取ったという脚本が上手いことよ。冒頭の家庭での引き篭もりっぷりから家を出て~男が出来て~捨てられ~ボクシングに興味持って~と淡々とヒロイン一子(いちこ)の行動を追って行くだけなのが良い。

 人から「何でボクシングやろうと思ったの?」と問われても上手く答えられない一子ちゃん。でも観てるこちらにはひしひしと解る。何故やるのか……こ~れが映画の気持ち良さだ。理屈じゃない物が、言葉で説明出来ない物が伝わる快感。

 いつも一言二言ボソボソ喋るだけの一子のセリフは全編合わせても1ページくらいにしかならいんじゃないかな。最後の試合シーンはロッキーやジョーにも負けない熱い気持ちが爆発しました。






「家族はつらいよ」

 ひとことで言うと橋爪功さんの役者としての名人芸を堪能する感じだ。

 山田洋次監督なんてもう大御所中の大御所なのだし、歴史的に見てもかの小津安二郎と同じかそれ以上の存在を示していると思うのに、ここへきてなんですかこの「東京物語」への過剰とも思えるリスペクトは。

 橋爪さん演じるお父さんの部屋に何気なく置いてあるDVDがソレだっただけでも充分な気がするのに、橋爪さんが鑑賞してる本編を3カットも見せて、その上「何見てるの?」と問う奥さんに「小津安二郎」と名前まで言わせている。

 どうしてなんだろうと考えてみるに、もしかして「若い人に知って貰いたい」のかなと思いました。というのは最近セルジオ・レオーネやサム・ペキンパーの話が出来る若い女子がいて感激し「なんでそんな古いの観る気になったの?」て聞いたら「バックトゥザフューチャー3」の西部劇編で、過去にマーフィが落ちた渓谷が現代に戻った時に「イーストウッド渓谷」て呼ばれているネタが解らず「イーストウッドって誰?」と興味を持って古い映画を観たらハマったとのこと「家族はつらいよ」もそんな風に若い人が小津安二郎を知るきっかけになれば……って思ったのかな、と考えたワケです。

 しかし本当に本当に、橋爪さんもそうだけど、山田監督も名人ですね。観客を笑わせるだけ笑わせながら~ちょっと考えさせ、最後にはホロリとさせて、ソレを味わいに来た観客の期待を決して裏切らない。さすがですあねぇ。






「マジカル・ガール」

 数々の 「うるさ型」 の批評家さんたちがこぞって絶賛し、如何にも 「映画好きによる映画好きの為の」 面白そ~うな臭いがするので行って来ました。が……。

 スンマセンと~っても退屈で眠くて眠くて腕をギュ~とツネりながら観ました。

 そりゃ 「先が読めない」 というのは面白さのひとつのテイストであることに間違いないけれど 「一体オレは何を喰わされてるんだ?」 が中盤を過ぎるともう辛いですね。

「サジ加減」 とよく言っているけれど、あんまし見え透いた話だとバカにされてる気がするし、逆にタルコスフキーまで行ってしまうと熟睡ですね。勿論個人差はあるでしょうけれど。

 オレ的にはま~あジム・ジャームッシュかヴィム・ヴェンダース辺りが限界ですかね 「ベルリン天使の唄」 は寝ましたけど。でもコレはそんなに観念的な描写がある訳ではなくて、ただ単に 「観客に教えない」 ことを吸引力として引っ張っていく感じだ。

 こ~の皆さんが評価してらっしゃる 「観客の一番見たいところを見せない」 という趣向をどう取るかで評価が分かれるトコなのかな。オレは 「なんだい勿体ぶりやがって、変なハッタリ噛ましてんじゃねぇよ!」 て思いました。

 んでもギリギリ寝なかったから~ある意味絶妙なサジ加減だったのかな。最後のバキューンにゃ身体がビクッ! てなりましたよ(笑)






「リリーのすべて」

 これまでの同性愛物と違い、そんな気も無かった男がある日ふと違う自分に気付いて、最初は戸惑い、でも目覚めてしまった本性を抗いがたく、そうなって行く過程がビビットに描かれています。

 絵描きの妻の来られなくなったバレリーナのモデルの代わりに足だけの代役を頼まれて、パンストを履いた時にアレっ……なんかいい感触……そしてお化粧してふと鏡を見たら……あ、私、綺麗?……みたいな。

 妻が描いた自分の女装姿の絵を見た人が「綺麗な人だ」「会ってみたい」と盛り上がり、シャレのつもりで女装してパーティに行ったら男に口説かれてキスしちゃったり……と徐々に女性になっていく過程が段階を追って巧みに表現されていきます。

「蜘蛛女のキス」や「ブロークバック・マウンテン」とは違う、男が本当の自分は女だったことに気付かされていく展開に興味を惹かれました。

 同性愛じゃなくて「性同一障害」この言葉が出回り始めたのは15年前頃「金八先生」で上戸彩さんが演じたり、その後現実にカミングアウトした競艇選手がいましたね。

 今じゃ性転換手術と聞いてもそう驚きませんが、草分け的なカルーセル麻紀さんが手術をしたのが昭和48年で、そ~と~大変だったらしいけど、本作で描かれるリリーはそれに先立つ1930年ってんだから麻紀さんより更に43年も前ですし、世界で初めての手術だったってんだから~恐れ入ります。

 凄い勇気……というよりそうせざるを得ない程のことだったんでしょうね。自分のアイデンティティってやっぱり命よりも大事なんですよ。今まで誰も受けたことのない大手術を、命の危険も顧みずに受ける彼(彼女?)の姿が胸を打ちます。

 そしてそんな夫? の意志を貫く為に力になる奥さんが素晴らしいですね。アカデミー賞取りましたねぇ。

 ラストで風に飛ばされて空を舞うリリーのスカーフは、自由を得た嬉しさに飛び回っているようでした。






「ヘイトフル・エイト」

 そりゃ面白いかツマラナイかで言えばそ~と~面白かったし、こゆの好きか嫌いかって言われりゃ大好きですよ。でもネ、血みどろなって殺し合い~皆死んでおしまいって、アカデミー賞狙うよな2時間50分のハリウッド大作でコレはダメでしょう。

 そりゃ毎度の楽しいスリリングで意外性のある展開の面白さは十二分に出ていたと思うけど 「レザボアドックス」 のウエスタンバージョンですあね。正直もう引き出し無いんじゃないんですかね、底が知れてしまった感じだ。

 そんなにビビットなメロディでもないのにモリコーネにだけアカデミー賞が贈られたということが物語っていますね。宝のモチグサレですよ。

 モリコーネ繋がりでいうとレオーネの 「ウエスタン」 より長いんですぜ! 映画を志す者なら誰もが思い描くよなサクセスストーリーを実現させて、巨匠に近い立ち位置にいるのに成長する気もないのか? ここへ来てモリコーネがサントラを書くということがどんだけ羨ましいと思っているのか、それに応えて一生忘れられないよな映画作ってみろよ! といいたくなる。

 結局タランティーノの魅力って継ぎ接ぎでサントラ使い放題の "ハリウッド製作の自主映画" だったのかもしれませんね。新作が出る度に今度はどんなサントラ引っ張ってくんのかな? とちょっと楽しみにしてるからね、またサントラ買おうかとか。

 騙し合いと殺し合いとスリリングな展開なだけ。誰にも共感しない、何がしかのカッコ良い生き様も示されない、物語の背景から何らかのテーマが浮かび上がってくるでもない。ただ血だらけなって皆死んでおしまいなだけ。

 こんなモノ1時間30分に編集してテレ東のお昼のロードショーか深夜に字幕スーパーでやってりゃ良いじゃん、て感じだ。

 なんだか思わせぶりに仰々しく始まるオープニングもただ思わせるだけ。南北戦争直後という時代背景もだから何だというと何でもない。

 70ミリで撮ったらしいけど、日本では最早上映出来る劇場が無いのだとか……んでもコレそんな大画面の必要もないじゃん?
 






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