「ロッキー・ザ・ファイナル」
いや〜懐かしい懐かしい。こりゃかつてのシリーズに胸を熱くしたファンたちへの同窓会
みたいな作品でした。
この作品で初めてロッキーを観ても面白く無いこと請け合いです(失礼)オレなんかは観
てて何度もジンと来る様な感慨を覚えてしまいましたけど(笑)。
初老のロッキーの顔を見ていると、かつてシリーズを観ていた頃の自分の思い出が過ぎっ
たりして、エイドリアンが死んじゃってるって設定は製作側の事情もあったのだろうけど、
それだけ回想シーンが盛り上がりましたね。
オレが第一作を始めて観たのは調布の公民館で無料上映会だったんだけど、プリント状態
が悪くって、途中で何度もフィルムが切れてその度に中断して、会場の電気が点いちゃう訳
よ、もう映画の流れはズタズタで、果たして最後まで観れるのか心配しながら観た記憶があ
ります(余談でした)。
しかし何と言っても第一作あってのシリーズ物ですよ。名も無く貧しく、世間の片隅で
「こんチクショウ!」って生きていた若者が、世の中に対して自分の存在を賭けて闘いを挑
んだ姿は、本当に本当に素晴らしかった。
あの物語が、あの音楽がどれだけ僕等に勇気を与えたことでしょう。今回の作品は正直今
更……って感は否めないけど、スタローンも他にヒット作も出来なくて、まさに劇中のロッ
キーと同じく"もうひと花咲かせたい"って気持ちだったんでしょうか。
不器用だけれど胸に消せない熱い物を秘めたロッキー。それにあのちょっとボクトツな感
じの話し方が懐かしく、スタローンが名優に見えます(失礼)。
でも脚本があまり練れていない、老境に差し掛かったロッキーが再びリングに上がらなけ
ればならない動機が今ひとつドラマチック度に欠けた。
動機は幾つかあって、一番の要因はエイドリアンを失ってからレストランの経営者として
生計を立てている暮らしが辛いこと、それにサラリーマンになっている息子と余り上手くい
っていなくて、ビックな父親の陰に隠れてしまう自分にコンプレックスを持つ息子に「自分
の生き方に自信を持てないことを親のせいにするなんて卑怯だ」と、周りに反対されても自
分の生き方を貫く姿勢を見せようとする。
再びボクサーとして試合に出る為にライセンスを取得しようとするのだけれど、審査会の
委員に「体力的には問題はないが、我々の判断でライセンスは出さないことにする」と言わ
れて「自分の夢に向おうとする人間を阻む権利なんか誰にも無い!」と力説する姿には感動
もするけどちょい説教臭い。
要は「幾つになっても人間は夢を捨ててはいけない」ってことなんだけど、それがそのま
ま考え方として言われるだけで、遺恨とか止むに止まれぬ事情では無いので、今ひとつ胸が
熱くならない。
とは言え後半試合を決心してパンパーパカパーパカパーパカパー…♪ とトレーニングが
始まると泣いちゃいましたが(笑泣)。
あと対戦相手が現役のヘビー級チャンピオンって言うのもね〜無理ありすぎでしょう。
現役チャンピオンと60歳のロッキーが対戦するには相当納得の行く展開が無いとキツイ
ですよ。若きチャンピオンが人気取りの為にかつてのヒーローを引っ張り出す、って言うの
は何だかなぁ……と思ってしまった。
そもそもそのチャンピオンが不人気になった原因て言うのが、余りにも強すぎていつも試
合が1〜2ラウンドで終わってしまうから……って言うのもねぇ。
それだけ強ければかえって人気が出ると思うんだけど、それならかつての亀田兄弟みたく、
強いけど生意気で世間の反感を買っている……とでもすれば良かったのに。
その若造のチャンピオンがあんまし憎たらしく無いのも面白くない、過去のシリーズの対
戦相手は皆超憎ったらしくて凄い強くて怖かったですよね、アポロもミスターTもドラコも
皆ロッキーと対戦したお蔭で他の映画に出演する様になったくらいなのに。
リングサイドで一言出演するマイク・タイソンも全くの蛇足。作品を大事にするなら出さ
ない方が良いでしょう。
そもそもタイソンはロッキーの対戦相手として出演したかったらしいけど、そっちの方が
ずっと面白かったのではないかな。
試合のシーンもかつての事を思うと迫力に欠けましたねぇ、まぁ60歳ってのもあるだろ
うけど、何より撮影に昔程金が掛かってないことが分かる。
全盛期のシリーズ程のヒットは望めないと思ったんでしょうけど。それに何より現役チャ
ンピオンと60歳のロッキーとの試合を一体どうやって見せるのかと思っていたら……なん
と途中で偶然にもチャンピオンの腕の骨が折れるんですぜ!
そうでもしなきゃ最終ラウンドまで闘うことに説得力が無いと思ったんでしょうけど、コ
レには興醒めしたなぁ……。
いつもロッキーを見守ってたエイドリアンの代わりに出て来る彼女の設定も浅かったです
ね。
まぁオレ今回きっと最後はロッキー死ぬんだろうと高をくくってたんだけど、それが無か
ったのだけは良かった? のかな。
な〜んていろいろ言いつつエンド・クレジットの最後まで鳴り響くロッキーのテーマに聴
き入って、とっても感慨深く映画館を出て来たんですけどねぇ(笑)。
いや〜映画って本当に良いもんですねぇ。