「猿の惑星」
でんぐり返るくらいドキドキして夢中になって見た恐い恐い悪夢の様な作品でした(笑)
最初にロケットが不時着した惑星の荒涼たる光景は、何処で撮影されたのか知らないけれ
ど、全く異星感に溢れていて、ジェリー・ゴールドスミスの異次元な音楽と相まって素晴ら
しかった。
コレを観た後しばらくオレは、間違いなく宇宙人は猿だと思っていた「スペクトルマン」
や「ゴジラ対メカゴジラ」もそうでした。
当時小学生だったコレはかの「2001年宇宙の旅」と同じ年に公開されて、今ではSF
映画の二大金字塔、なんて言われてるけど、キューブリックは嫌だったろうなぁ(笑)
当時はただひたすら恐くって、どんなストーリーだったか内容もよく把握して無かったん
だけど、後になってコレ見直して見ると、恐いのは不時着した惑星で猿が人間を支配してい
ると言う事実と、それに捕まってもう絶対どうすることも出来ないと言う究極の絶望感でし
た。
この発想はただ事ではない。どうやったらこんな、世界がでんぐり返る様な発想が出て来
たのか、知っています?
この作品の原作者はフランス人で、第二次世界大戦中に何処かの国で日本軍の捕虜になっ
ていたらしい、その時の体験を元にこの小説を書いたのですって……。
その話を聞くと「ああ、なる程なぁ……」とうなづくと同時に日本人としてはSF映画ど
ころでない、もっと奥底の深い現実の恐怖みたいなモノを感じてしまいますね。
この作品は最初のとっかかりはそういった極限状態の物語として進行して行くんだけど、
後半は人間の進化論について、猿と人間との見解についての相違の話になって行きます。
実はコレ後半は結構学術的で地味なお話になっていくんだよね、そしてかの有名なあの結
末を迎える!
「そもそも猿がみんな英語しゃべってんだから地球に決まってんじゃねぇか」と言う実もフ
タもない突っ込みはさておき、この結末が無かったらこの映画はここまで後世に残らなかっ
たでしょう。
この結末を思いつくことは、猿が人間を支配している世界の映画、と言うアイデアを思い
つく以上に凄いことです。
とっかかりのアイデアだけなら誰でもいろいろと思いつくことはあるだろうけど、作品と
して深く人の心に残るにはつかみのアイデア以上に、見てる人がひっくり返る様なもっと凄
い発想が必要です。
作家が頭をヒネって苦労するのはソコですから。ソレがその作家の資質を決める技量と言
っても良いと思います。
そう言う意味で、コレは凄かった。だから後にどんどんシリーズ化して展開して行くこと
も出来たし、タイムスリップ物としてターミネーター等にも影響を与えたのでしょう。
確かに今見ると結構チャチでチープだったりすけれど、だからと言って最新のCG技術を
駆使して作られたリメイク版がちっとも面白くなかったことからも、映画の面白さは技術で
はない、ってことが良く認識出来ると思います。
だって、こ〜の着グルミの猿の方が、最近のCG駆使したバートン版よりずっと猿っぽく
て怖かったですよ。
後に猿の指導者になるチンパンジーのコーネリアスの着グルミに入ってたのが、あ〜の
「ヘルハウス」等の名優ロディ・マクドウォールだったということからも、やはり人の胸を
打つものは人の手作りに勝る物は無いのではないかと、改めて思ってしまいますねぇ。