「千と千尋の神隠し」

 まぁコレはもう言わずもがなですけどね。素晴らしかったですね、この美術、イマジネーション。オレ事あるごとに言ってるんだけど「もののけ姫」が嫌いで(失礼)それに比べて……とつい言っちゃうんだよね。もののけ姫で一番嫌だったのは理屈っぽさで、それに比べてコレの理屈抜きの楽しさには圧倒されたノダ。

 昔からのオトギ話のセオリーをしっかり踏まえていて、社会で生きて仕事の厳しさを学んで行く少女の成長は感動的だし、あの広大な水面の上をサーッと走って行く列車の情景のなんと素敵なことか! そして文字通りなんの説明もなく最後まで素性が分からないのに突出しているキャラの「カオナシ」今までにあんなキャラはどんな映画にも無かったですね。

 最近の宮崎作品は全くの監督個人のスタンドプレイですよね。勿論アニメを製作するにはアニメーターを始めとするたくさんのスタッフがいるだろうけど、内容に関しては全く宮崎監督個人で考えられたモノで脚本もひとりで書かれていますね。そこがディズニーの様に全てがシステマティックに作られている作品と違うところではないかな。

 悪く言えば「ハウルの動く城」でもそうだったけど、監督だけが分かっていて観客には分かりにくい部分もあるが、個人で考えてるだけに「カオナシ」の様な不思議でしかも人間っぽい独創的なキャラも生まれて来る。理屈を言えばこの作品も最後の川の神様と千尋の因果関係とかちょっと腑に落ちない点もあるけど、でもそんなことを吹き飛ばす全編の絢爛たる美術! ぞくぞくとやって来る神様たちの造形! 久石嬢の音楽! 海の中に建つ湯屋等々……この色使い、アニメならではのイマジネーションの素晴らしさに子供の様に目を奪われてしまいますね。

 千尋がオニギリを食べながらあり得ない大粒の涙を流す表現が賛否両論みたいですけど、オレは一緒に泣きそうになりました(笑)

「ハウルの動く城」でも終盤主人公が大粒の涙を流すシーンがあるんだけど、こちらはちょっと違和感があったかな……皆さんはどうお感じになったでしょうか?



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