「シン・ゴジラ」
いや〜日本のCGもここまで来たか! と思える最初の這いずって進む幼虫? みたいなののビジュアルショックはそ〜と〜な物でした。でもアレが品川の河で船をガチャガチャ押しのけて進んで来るのがマックスの興奮だった。あ〜のリアルな描写が今回の魅力でしたね。
「ゴジラ」はもう世界規模でひとつの「演目」になっていて、今回のゴジラはどんな役者でどんな風に演じるのか……というのが見どころになっていますね。
大筋は大体同じで、核エネルギーが原因で古代の恐竜が巨大化したゴジラが暴れるので、何とかして退治しましょう……という話。今回国連の決定でゴジラに核ミサイルをぶつけようというのは1984年版でもありましたね。
オリジナルの本多版から金子版「総攻撃」があり、ギャレス・エドワーズ版があり、今回庵野版という感じ。予告編を見た時から、ああコレは「巨神兵東京に現る」な感じだなぁと思っていたらその通りでした。
今回ゴジラの新しい趣向としては背ビレが光るだけじゃなくてレーザー光線みたいのが放射状に出てミサイルとかを撃ち落としちゃう。あと尻尾の先からも光線が出る。身体が半分爛れてるみたいで赤いのは「ゴジラ対デストロイア」といつも溶けそうな「巨神兵」からきてるのかな。
同じ話でもキャラ設定が変わると全てが新しく見える……な興味で楽しかったのだけれど、毎回の見どころは設定と退治する方法ですね。今度のジョーズはどう倒すか……みたいな。1984版の「帰巣本能を利用する」って設定は何か哀れを誘うところもあって良かったのだけれど、今回のはちょっと仕組みがややこしかったかな。
終わってみるとやっぱり同じですね。どんなにCGが発達して鮮明でリアルなゴジラになっても、クラシックな伊福部昭の楽曲がマッチするのはやはりゴジラはゴジラだからなんでしょうねぇ。
やっぱりゴジラは伊福部の音楽が無いと……とも思うけど、結局毎回オマージュになってしまうんですね。皆ゴジラ好きだけど(笑)エンディングで例のテーマと「ゴジラの恐怖」「三大怪獣地球最大の決戦」「怪獣大戦争マーチ」と昭和シリーズに加えて平成のメカゴジラのテーマをチョイスする辺りはおお〜と唸ってしまった。
楽しかったけど、やっぱしもう一度「キングコング対ゴジラ」の頃の敏捷で爬虫類な活きの良いゴジラや三つの首がクネクネ動くキングギドラやズビズビと身体を律動させて歩くモスラ〜みたいなのが見たい。
そりゃゴジラは着ぐるみだからゴジラだったワケで、昔の「モスラ」の幼虫が海を泳いでいるショットとか、渋谷の街を壊しながら這い進む描写の方がず〜っと心がこもって生々しい迫力がありましたね。
それと今回カット割りにアニメを思わせる様なところがあって、特にひとことセリフ等の時に人物の顔に寄りすぎで気持ち悪い。オッサンとか息が臭いそうなんだもの。石原さとみとかなら良いけど(笑)大スクリーンでカメラ寄り過ぎでしょう。
肝心の展開については、前半部はビジュアルの凄味もあって「エヴァ」の最初の方みたいな興奮があったけど、やっぱり後半失速するのかなと思っていたらやっぱしダレました。ビジュアルショックはある意味「出落ち」ですからね、作品の良し悪しを決めるのはむしろその後の展開ですよ。
前半部の、こうなったらこうなるだろう……というリアルな政府の反応とか、あるべき混乱がリアルに描かれてくのが面白いのに、後半に登場する石原さとみ嬢がリアリティ無さすぎでしょう。そりゃ可愛い子ちゃんがひとりは出なくちゃ、って意向なのかもしれないけれど、折角の前半部のリアルをぶち壊された感じだ。
単に可愛い子が出れば良いという訳でもないだろうに、出るなら出るでロマンスが生まれるとか、何かテーマに通ずる確執を生むとか、何かなくちゃですよねぇ。只のアメリカとの連絡係というか、お婆ちゃんが日本人で原爆の被害者だったって一言言ってたけど、それだけですもん。そりゃ石原さん出て来るだけである意味テンション上がりますけど(笑)いたずらに余計な雑念を呼んでただけの様な気がする。
それよりも冒頭のヨットで遺言を残した生物学者? の事情をもっと掘り下げるとかした方が良かったのではないかな。そこがちょっと喰い足りない気がしました。
でもやっぱりゴジラ大好きですよ。作り手たちがどんなにゴジラが好きで、愛して、コレを作ることに情熱を傾けているのかがヒシヒシと伝わります。本当楽しかったですよ〜。