「SPACE BATTLESHIP ヤマト」

 ついに日本でもスターウォーズが出来る様になったのか! といえるくらい壮大な宇 宙戦闘シーンから始まる。そもそもスターウォーズはヤマトから多大な影響を受けていると思わ れるので、それがヤマトへ戻って来たというところか。

 古代守の討ち死に!(堤真一!)〜そして思いがけず「無限に広がる大宇宙……」とナレーシ ョンが流れ出した時にゃ胸から熱いものが込み上げて来た。おお〜よみがえるよみがえるぞ少年 時代!

 スターウォーズが出現するまでは、オレの部屋はヤマトのポスターやプラモだらけでした。  知ってるかい? バンダイから最初に発売されたヤマトのプラモって、船体の下にゴムのタイ ヤが付いててゼンマイで走ったんだぞ!
 それがどうにも納得行かなくて、タイヤの付いたゼンマイ部分を糸ノコで切り落とし、如何に 上手く手製の第三艦橋を作れるかがステータスだった。
 かつて調布駅近くにあった模型店のショーウィンドーに、上手に作ってあるのが飾ってあって 「おお〜凄ェ」と顔くっつけて見たもんです。

 そして地球に降り注ぐ遊星爆弾〜地底で暮らす人類〜地表に埋まってる戦艦大和〜とアニメ場 面が再現されて行く……涙涙。

 飛び立つ前にヤマトを破壊しようとガミラスが放った巨大爆弾を波動砲でぶっ放し、黒煙の中 からCGヤマトが姿を現すと、興奮は最高潮! おおーーいいぞ! 行け行けぇ〜〜〜でも結果的 にそこがMAXでした。

 最初に違和感が生じたのは、やっぱしオリジナルと異なる設定になった黒木メイサとキムタク の絡みが始まってから。やはり本作の評価を分けるポイントはキムタク古代の賛否にあると思い ます。

 しかして他の役者さんたちは概して皆さん素晴らしかった!
 何より山崎努さんの沖田艦長! 最初にテレビスポットを見た時は取ってつけたような髭と制 服でおかしな印象だったけど、アニメ沖田を踏襲しつつ凌駕している!
 最期の「地球か、何もかもみな懐かしい……」というセリフもそのままに、見事に生身の沖田 艦長を体現していました。

 報道では凄い入れ込み様だったという真田志郎役の柳葉敏郎さん。声を作ってアニメ真田に近 づこうとしてる芝居に胸が熱くなる。確かに "ヤマト愛" なる物を感じました。

 徳川機関長の西田敏行さん、地球防衛軍長官の橋爪功さんも素晴らしい! 航海長の緒方直人さ んも設定は大分変っちゃったけど、新しい島大介を作り上げていました。

 森雪の黒木メイサさんはそりゃアニメ森雪と違和感はあったけど、アニメのままだとレーダー 係でずっと艦橋にいるのであまり動きのある芝居の見せ場がない。ので設定を変えたのかな。個 人的に黒木メイサは素敵なので(笑)この置き換えはそれ程悪くないと思った。

 でも女優さんたちに関して気になったのは、皆さん美容院に行ったばかりみたいなサラサラヘ アーで、とても戦争中とは思えないこと。
 コレは他の時代劇とか戦争映画でもいえることだけど、みなさんお顔が艶々していて綺麗すぎ る。そりゃ女優さんは少しでも綺麗に映りたいというのは分かるけど、そんなことより物語のリ アリティを優先すべきではないでしょうか。

 そしてキムタク古代……今回の古代進って一体どんな男だったのか? 他の役者さんたちはそれ ぞれアニメのキャラを考慮しつつ自分の役作りに挑んでいた痕跡が見えるのに、木村拓哉さんは 人物像に一貫した役作りが出来ていたとも思えない。その時その時で「いつものキムタク」な感 じだ。

 勝手に推測するに「いつもの木村拓哉でやって下さい」なんて注文だったんじゃないかと思え てしまう。他の役者さんたちが素晴らしかっただけに、浮いていた感は否めませんでした。

 演技を抜きにした台本上の古代像にも違和感を覚えるところがあった。沖田艦長との反目にし ても、38歳の軍隊経験者ならばとっくに克服しているであろう葛藤を抱えてることに幼さを感じ る。いっぱしの男面してるのにガキっぽいというか。少なくとも共感やカッコ良さは感じられま せんでした。
 メイサ雪とのキスシーンも、20代の男ならまだ分かるけど、火事場のどさくさに紛れて何やっ とんじゃ! という感じだ。

 18歳だった古代を38歳に変えるのが必ずしも悪いとは思わないけれど、変えるならしっかりし た新しいキャラにして欲しかったですね。せめて28歳くらいなら良かったのに。
 同じジャニーズでももっと若手を持ってくるという手もあったのではないかな。

 興業的に成功させなければならないという理由で起用したのかもしれないけれど、その通りだ としたらキムタクが悪いのではなく、彼を出せばお客が入ると思って、それだけの理由でキャス ティングした人が悪い!
 本人としても「何をやってもキムタクだ」と言われるのはもう嫌なんじゃないかな。

 あと他に不満だった点は、宇宙空間とかのCGはともかく、船内のセットがどれも小さくてセ コセコしていましたねぇ。何より第一艦橋小さすぎでしょう? 実在した戦艦大和に合わせてる のかな? コレは松本零士の緻密に描かれたオリジナルのデザインを踏襲して欲しかったですね ぇ。予算が無かったのかな。
 ほかにも艦長室・娯楽室・営倉・機関室・格納庫・個室……みんな小さいセットを使いまわし てどうにか出来ましたという感じだ。
 とても何百人という隊員を乗せている巨大な船には思えなかった。実写になった分スケールが 小さくなってしまった感じだ。
 なのでCGの外観と内部のセットとのマッチングが上手く行ってない。ハリウッドのテレビシ リーズ「宇宙空母ギャラクティカ」と船内のセットを比べると遥かに見劣りしてしまう。

 ヤマトに乗っているはずの乗組員たちも少なくて、何百人も乗ってる感じがしない、あの制服 で少数精鋭な印象なのでウルトラ警備隊を思い出してしまった。
 制服はデザインを実写用に置き換えているけれど、上半身だけというのはヘンだった。アニメ と同じパンタロンみたいの履いてたらもっとおかしかったかもだけど。なんだかオートバイ乗り の革ジャンみたいでしたねぇ。でも西田さんとか似合ってた。

 斉藤隊長の率いる騎兵隊も人数ちょびっとしかいないんですねぇ。この騎兵隊っていわば上陸 作戦の時先陣を切っていく海兵隊みたいなもんでしょ? ショボすぎますよ。

 アナライザーは最初あんなに小ちゃくて寂しいと思ったけど、後半戦闘機に乗る時はR2−D 2になって、終盤ガンダム化した姿を現した時にゃ「そう来たか」とニヤリとした。でも酒飲み でスケベだというロボットらしからぬ設定は活かして欲しかったなぁ。
 あと音響が物足りなかったですねぇ、ピカデリー音量絞ってたのかな? せっかく映画館なん だからもっとズズーンと腹に響くよな大音響でやってくんなくちゃ。

 本作はオリジナル第一作の「イスカンダル偏」と後半「さらば宇宙戦艦ヤマト」をミック スしたよな構成で、設定を変えつつも波動砲の発射口を塞ぐドリルミサイルや第三艦橋に張り付 いて自爆するドメル。白色彗星の巨大戦艦……等が形を変えて登場し「おお〜アレはコレか、コ レがアレか」と思い出させる楽しさがありました。

 あと地球との交信が途絶える直前に乗組員たちが交代で地球の家族と交信する件は、テレビシ リーズのヤマトがそれまでの冒険アニメと一線を画する鮮烈な印象を残すエピソードでした。
 どうしても家族が恋しくて規則を破って勝手に交信していた隊員がいて、地球に帰りたくなっ てヤマトから宇宙へ飛び出してしまう。一人で宇宙空間を漂う姿が子供心に強烈な印象を残しました。
 オリジナル版の映画ではカットされていたけれど、今回再現されて嬉しかった。

 逆に再現されなくて残念だった場面は……ヤマトへ乗る為に行進する乗組員たちの列に声援を送 る群集〜ヤマトから地球が見えなくなる時に艦長室で酒を飲み「さようなら〜必ず帰って くるからな!」と地球に別れを告げる沖田艦長と古代〜戦闘の後に廃墟となったガミラス星で泣 き崩れる雪と、戦争の虚しさに古代が気付くシーン〜等々。
 あと懐かし組としてはラストに「真っ赤なスカーフ」が流れないのも寂しかったかな。

 スターシャが出てこないのも寂しいと思ったけれど、考えてみればデスラーにしても、今時実 写で役者が宇宙人に扮して登場するとドッチラケになるという配慮からでしょう。

 ガミラス(デスラー)=イスカンダル(スターシャ)が実態の無い生命体であるという設定は、 実写でヤマトをリアルに再現する為の工夫だと思いました。
 放射能除去装置を授ける為にイスカンダルの生命体がメイサ雪さんに乗り移って喋りだし、例 のスキャットが流れ出した時には「ほう〜そうきたか!」と思いましたよ。なかなかよく考えら れているじゃないかと、ちゃんと前もって斉藤隊員がデスラーの生命体に乗り移られる伏線も張 ってあったし。
 そもそもイスカンダルに放射能除去装置があるというのは、沖田艦長と防衛軍長官が人類に希 望を持たせる為に企てた嘘だったというヒネリは、今回一番の特色でした。

「スターシップ・トルーパーズ」みたいな群がり来るガミラスの兵士たち「スタートレック」第 一作みたいなヤマトの艦橋に出現するガミラスの生命体等、他のSF作品を思わせる描写が随所 にありましたけど、コレ等は「真似してる」というよりは、如何に実写版ヤマトにリアリティを 持たせるか、といろいろ研究した結果ではないかと、好印象を受けました。
 ブラックタイガーの戦闘機描写とかヤマトのワープの描写は先出の「ギャラクティカ」に似て いますけど、あちらの方がヤマトのアニメより後発ですよね。

 演出に関しては、一年で地球が滅亡するかもしれない背水の陣で戦っているという空気感が出 来ているとは思えなかった。
 例えば、このタイミングで皆でお酒飲んで冗談を言い合う様な心境にゃならんだろう? と空気 に違和感を感じてしまう場面が幾つかありました。

「宇宙空母ギャラクティカ」は異性人に攻撃され、コロニーを追い出されて行き場のない人類の航海と いう物語なのだけど、その空気は冷徹に支配されていて違和感を感じるところなんてない。常に 過酷な戦いに挑む人類の悲壮感が支配している。CGの技術とか規模のレベルでなく学ぶ点が凄く ある気がする。

 何より一番気になったのは、ラストの古代と森雪の別れのシーンで、延々と続く涙の別れが終わ るまで、何故ガミラスのミサイルは待っていてくれるのか? 今時何故またああいう演出をするの か?
 シークエンスの順番を工夫すれば、もっと自然に見せることも出来たのではないかな。例えばも っと早い時点でミサイルの存在に気付いておくとか。

 ついつい文句が多くなってしまったけれど、アニメ世代としては言いたくなってしまうのでスン マセン。でも脚本の工夫や目を見張るCG映像、素晴らしい役者さんの演技など、熱意を感じると ころが沢山ありました。



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