「スラムドッグ$ミリオネア」(08英)
こお〜れスゲエ面白かった! 殆ど予備知識無しに観たのも良かったと思うんだけど、謎解き・サスペンス・冒険アクション・ドキュメントタッチ・時間軸の解体・サクセス・カタルシス・ロマンス・等々映画ならではの技巧を使い尽くしていました。
テレビのクイズ番組と言う奇抜な状況設定で、スラム街で育った貧困層の少年が何故ここまでクイズを勝ち抜く知識を持ちえたのかと言う謎から始まり、一転して警察の取調べで彼の激烈な幼年時代の回想がその謎を解き明かしながら、そこでの兄とのサバイバル〜知り合った少女とのロマンス〜やがて生き抜く為にワルの道へと身をやつした兄貴との決別〜と怒涛の様に物語が走り出す……。
貧民層で生き抜く為に子供たちが犯罪に身をやつして行く悲惨な状況はちょっと前のブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」を思い出しますが、本作はインドのそんな厳しい状況をドキュメンタリータッチのリアリティで描きながら、現実的な描写だけでは重苦しくなるところをクイズ番組を切り口にすることで面白く引き込んで行く構成になってる。
監督は「トレインスポッティング」に始まり「28日後」等作品ごとに全く違うテイストで完成度の高い作品を撮ってる人なんですね、素材がどうと言うより映画として面白いモノを作っていると言う感じですかね、主人公の幼年時代スラム街を走り回りながら警官と追っかけっこする件の手持ちカメラは今流行りの何がなんだか分からないブレではなく、何か懐かしいなと思っていたら、かつて深作欣二の「仁義なき戦い」を思わせるソレでした。やっぱしこの監督はイロイロ研究してるのかなと思った。
クイズが最終問題に近づくに連れ主人公の回想録も現代に近づいてシンクロして行く様はまさに映画的興奮に満ちていましたねぇ。そんなアレやコレやで観客の興味を惹きつけながら、終わってみると宮崎駿の冒険アニメを観た様に鮮やかな着地点なのでした。
ただ気になったのは生き抜く為にワルの世界に身をやつした兄貴が何故最後にヒロインを逃がす気持ちに至ったのかの気持ちの変遷がイマイチ明確で無かったことかな。
ラストでみんなで踊っちゃうのはインド映画のお約束? と言うより「映画」と言う物のカッコ良さを高らかに謳いあげている様で涙が出ました。