「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」

 思えばこのスター・ウォーズの新三部作が公開された時の異様な熱狂は何だったんだ ろう……やはり時間が経ちすぎていたのか、旧三部作が終了してから16年は長すぎたん じゃないだろうか。

 その間にジョージ・ルーカスは当然歳は取るし、無理もないけど作家としてのテイストも 作風も大きく変わってしまっていた。
 旧三部作とキャラクターの描き方が全く違う! 公開前に全米の評判が入って来た時に 「ブーイングがあった」と聞いてたけど、観てすぐ「ああそうか……」って思いましたね。
 あの無我夢中で観ていた旧三部作の宇宙の広がりは何処へ行ったのか、胸倉をつかん で宇宙の彼方まで連れて行かれた様な忘我感は全く味わえない。
 登場人物たちの誰ひとりとして旧三部作のどれも突出したキャラたちに見合っていない。 でも観ずにおれないのはやっぱし旧三部作があまりにも素晴らしかったからだ。
 何せオレなんてダース・ベイダーがルークの父親だったことは人生で二番目くらいのオ ドロキでしたから(笑)。

 つまり皆さん旧三部作を愛してるので、あの物語に至る歴史を知りたいと言う興味で新 三部作を観てるのだ。ただそれでルーカスが満足しちゃってるのが悪い! 旧三部作がブ ッ飛んでしまう様な何かもっと凄いドラマをみんな期待してたのに。
 悪い見方をするとコレは作家が作品(旧三部作)を書く為に人物や前の時代の設定を決 めておく為のメモ書きです。
 面白いドラマを書く為に作家だけが知っていれば良いと言う資料にすぎません。かつて 「七人の侍」を書く時にクロサワは侍ひとりにつき大学ノート一冊分の設定を書き込んでい たと言うアレですよ。
 だからそれ自体は面白いモノではないのだ。もっともそのノートが現存するならチョー見 たいですけど(笑)きっと菊千代の生い立ちとかも詳しく書いてあるんでしょうねぇ……。
 新三部作を観たいと言う気持ちはそれと同じですね。新三部作を作品として評価するな らスター・ウォーズと言う世界の歴史を知りたいと言う興味でしょう。コレはもう歴史の勉強 に似ている。
 現実世界で何故今の日本がこうなったのか、今までに世界でどんな戦争が行われて来 たのか……それを知りたいと言う興味と同じですよね、ただしスター・ウォーズの場合それ を調べようにも調べられない、それはジョージ・ルーカスの頭の中にしかないのだから。
 結果が分かっていることの前歴を学ぶと言う意味では全く現実の歴史探索と変わらない のに、それが作家の創作の世界でしか体験出来ないと言うことは今までに全く無かったこ とですよ。

 旧三部作の時にも思ってたけれど、やっぱしスター・ウォーズの主人公はダース・ベイダ ーなんですね。
 不思議だけれど、映画や芝居に登場する一番魅力的なキャラクターって悪人なのかもし れませんねぇ、ルパンとかゴルゴ13も悪人ですよねー。
 正直に言うと「ジェダイの復讐」の時ベイダーが日和ったのがどうにも嫌だったもんなぁ (笑)ルークなんか助けてねえで皇帝殺して首領になれーって正直思いませんでした? オ レだけかな……そしたら旧三部作のまだ先が充分面白く作れたと思いません?
 ベイダーが皇帝になって全宇宙を支配するワケよ、そんでルークもダークサイドに入って ベイダーよりも悪い幹部になって、そんでルークの子供が反逆軍で頑張るとか……観たい なぁ(笑)。



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