「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」

 何故アナキンがダース・ベイダーになったのか……の興味に対する答えにはなってるんだけど、気になった点がふたつ。

 ひとつはアナキンが暗黒面のフォースを身に付けたかった訳はアミダラの命を助ける為と言う動機付けがなされているけど、そのアミダラが死ぬかもしれない理由がアナキンの見た予知夢と言うのが動機として弱い。
 アナキンが母を失った時も同じ様に予知夢を見たから……と言うけれど、あのダースベイダー誕生の理由としては今ひとつ弱い気がした。
 まぁ強い力を身に付けて自分を認めてくれない大人たちを見返してやりたい、みたいな野心も分かるんだけど。
 単に予知夢を見たと言うのでなく、不治の病にかかってるとか、シスの人質にされてるとか、現実に止むにやまれぬ理由があって、どうしてもアミダラの命を救う為に……みたいな事の方が良いのではと思った。

 それともう一点は、最初のエピソード4が公開された時から言われていた「ベイダーは昔オビワン・ケノービと戦って火山に突き落とされてあんな身体になった」と言う噂が再現されるのだけれど、師匠と弟子であるオビワンとアナキンの戦いでアナキンは両脚と片腕を切断されて、這いずってるところへ溶岩の火が燃え移って重症を追うのだけれど、そこでオビワンがまだ生きてるアナキンにとどめを刺さずに去るところがどうもご都合主義で引っ掛かった。
 あの流れならオビワンは「弟子を救うことが出来なかった」と言ってるくらいなんだから止めを刺すだろう。
 それでなくともあんなに苦しんでて可哀相なのに……。

 とは言えこのエピソード3はエピソード1・2がどうでもいい様な印象だったのに対して、旧三部作に続いて行く終局の再現が言い様もない興味と興奮でのめり込んでしまった。

 オレの世代が面白いと思って観てるのはあくまでも旧三部作が好きだからだ。旧三部作を知らずに新シリーズから観た人にとっては 「何で皆そんなに夢中になって観てるのか?」 ピンとこないに違いない。

 子供の頃部屋中にポスターを張り巡らし、プラモデルを作り、2枚組みのサントラLPを穴の空くほど聴いた世代にとっては、このエピソード3の次にあの自分の少年の日々が続くのか……と言う言い知れぬ感慨に耽るのだ。

 あの若きルーク・スカイウォーカーが農家のおじさんに大学に行かせて貰えず拗ねて見つめていたふたつの太陽が沈む夕陽が、生まれたばかりのルークがおじさんに預けられるシーンで同じ二つの夕陽の情景が映るところは胸がダーッと熱くなった。

 コレは今までに観た映画では感じたことのない不思議な感慨だ。これからの歴史の結末を知っていながら誰も知らない過去を観る面白さは他にない。

 それともうひとつケチをつけるなら、あのダースベイダーのコスチュームになったアナキンがアミダラの死を知ってウォーと叫ぶのもちょっとヤだったな、そもそもアミダラを助ける為に暗黒面に落ちたのに、結局予知夢のとおりアミダラは死んじゃったのは悲劇だけれど、なんだかマヌケな感じもした。

 オレとしてはベイダーの姿になった時点でそれまでの人間性はキッパリ捨てて悪の権化に徹して欲しかったな。
 ベイダーは強くて恐いからこそのベイダーだと思うんで。とは言え本当長い間楽しませてくれましたね。
 プロデューサーのマッカラム氏が言ってたけど、映画は終わったけどこのエピソード3からルークやレイアが育った後のエピソード4へと続く間の20年間を、なんと100時間のテレビシリーズとして製作することが決まってるんだと! ……まぁ作れば絶対商売になるのが分かっていながらやらない訳も無いですからね。でもコレは楽しみですねぇ。

 そう言えば昔三船敏郎が出演のオファーを受けて断ったと言うのはオビワン役だとばかり思っていたら、実はベイダー役だったってテレビで言ってたけど、ベイダーは所詮カブリモノだから断ったのかな?……という憶測も間違いで、じつは三船演ずるベイダーは素面でそのまま演じて欲しかったのだそうだ! 言われてみればベイダーのヘルメットって戦国時代の兜ですもんね。んで多分ひげを生やしたミフネの顔をSFチックなお面にしたらあんなデザインになったんスかね。
 だとしたらもしミフネがベイダーをやっていれば、その子供であるルークもレイアも、若き日のベイダーであるアナキン役も全部日本人俳優がキャスティングされていたかもしれませんよねぇ……だとしたら断ったミフネの過ちは計り知れないことになりますよねぇ。



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