「スティング」

 言わずと知れた……いわゆる「大ドンデン返しモノ」の古典です。

 この映画を踏襲したモノってもう星の数ほどあると思うけど、なんかみん な結構いい加減で〜原点であるこの作品程歯切れ良く完璧なドンデン返しに なってる作品にはそうお目にかかれない。

 何年か前の「ファイト・クラブ」とか見た時にも感じたけれど、ドンデン返 しと言うモノはそもそも最後に全てがひっくり返った時点で観客になんの矛盾 も感じさせてはならないと言うのが大前提だ!

 それまでの展開と最後のドンデン返しの結末でビックリ仰天させると同時に、 それまでの展開と何の違和感もなく「ああ〜そうだったのか! やられた」と 心から驚ける完璧な筋立てがなければ本物とは言えないのだ。

 だから脚本家は頭をヒネるし観客も騙されまいと一生懸命映画を観る、言わ ば脚本家と観客の戦いがこの手の映画の醍醐味で面白さナノダ。

 しかし「ファイト・クラブ」のドンデンには釈然としないモノを感じなかっ ただろうか?。ひとことで言うと「そりゃちょっと無理でしょ」と言いたくな る様な。やっぱり観客を唸らせるドンデンのルールとして、決して観客に嘘を ついてはならない、と思う。

 そりゃ嘘をついて良いのならいくらでも騙せるし後から「実はこうでした」 なんて観客が知らなかった事情を後から説明してつければいくらでも出来るワケ だ。
 んでもそんなのは本当のドンデンではない! それこそこの映画をよく見ろ!  だ。

 ドンデンまでの展開に後から考えても何の矛盾点も挙げられないだろう、それ は飽くまで観客に主人公たちの計画を伏せられていたと言うだけで、ビックリ仰 天させられて後からその前の展開を思い返してみると、全てに納得が行く様にち ゃあ〜んと考えて作られていたことが分かる。

 これこそが本当のドンデン返しダ。いやぁ、懐かしい(苦笑)。
 この作品、ロバート・レッドフォードも勿論なんだけど、どちらかと言うとポ ール・ニューマンの映画ですよね、この二人はこれに先立つジョージ・ロイヒル の傑作「明日に向って撃て」に共演してて、その時は内容的に対等な相棒と言う 設定だったけど、本作ではベテラン詐欺師のニューマンにレッドフォードが助け を求める若手みたいな設定になってる。

 キャリア的にもニューマンの方がずっと上なのでやはりここではニューマンの 貫禄勝ちと言うところかな。
 髭無しで爽やか青年みたいなレッドフォードは「明日に向って……」のニヒル なサンダンス・キッドとは大分違った印象で、でも後のレッドフォードの持ち味か らすると本作の方が正しいイメージだったのかもしれませんね。

 そしてかの超渋いロバート・ショウもお間抜けな悪役を見事にこなしていますけ ど。何よりこの作品の魅力は歴史に残る脚本とジョージ・ロイ・ヒルの演出ですよ ね。良い映画をたくさん残してますよね……同じくレッドフォードの「華麗なるヒ コーキ野郎」も大好きだったなぁ……。


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