「スターリングラード」

 ジャン・ジャック・アノー(「薔薇の名前」「愛人・ラマン」「セブンイヤーズ・イン・チベット」)は一時期個人的に一押しの映画監督でした。

 寡作なんですよね、それだけ自分のペースで、きっと自分のやりたいモノを自分のやりたい様に作っている監督なんだと思う。キューブリックの様にね。

 その作品の作り方と言うか姿勢はかのデビッド・リーンを思わせる様な、歴史的大スケールの中に個人のドラマを描き込むと言う手法。
 こう言う風な映画の作り方をオレは「文化人類学的映画」と呼んでいるんだけれど、これこそが映画と言うモノの究極の作り方だと思うノダ……。

 例えばかのデビッド・リーンの「ドクトル・ジバゴ」は当時ソビエトで発売禁止になったロシア文学をイギリスの俳優がシベリアかなんかで撮影した英語の作品。

 ベルドルッチの「ラスト・エンペラー」は中国の歴史をイタリアの映画監督が英語で作り、日本の作曲家(坂本龍一)が音楽を書いた。

 原作者・監督・演者・スタッフが国境を越えて結集し、歴史のうねりの中で葛藤する人間の姿を描いて行くと言う、なんと言う素晴らしさ!

 本作では歴史に名高いスターリングラードの激戦の中で実在したスナイパーとドイツ将校との戦い、戦場の恋、家族、運命等……とにかく歴史の事実と言う重みと映画の巨大なスケール……その中に描かれる人間。

 これを見た時は久々に嬉しかった。アノーはきっと今も新作を作っている、何年先になるか分からないけれど、本当期待してる。

 きっとまた「これこそが映画だ」と言うスゴイ物を見せてくれるに違いないのだ。


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