「証人喚問前夜」

劇団成人式第5回公演(2006年3月23日築地本願寺ブディストホール)

昨年の大河ドラマ「義経」を書き、数々のテレビドラマの脚本で活躍中の金子成人さんの主宰 するその名も「劇団成人式」の第5回公演。この劇団最近の公演は成人先生が忙しいせいかお弟子さんの脚本 だったり、演出が映像畑の方だったりで多分に「ハズレ」な作品が多かった(失礼)だけに、今回は いよいよ成人先生じきじきの作・演出と言うことで期待して観たのですが・・・。いゃね、金子成人 と言えば第一線で活躍する、オレなんかから見ると倉本聡の一番弟子で御大大先生なんですよ、だから あまり失礼なことは言えないんですけどね、でもね・・まぁちゃんと入場料払ってチケット買って観た 一観客として言わせて貰うとですね、詰まらんかったです、それも凄く(すんません!)設定はある政治家 が不正入札とか政治献金のこととか、問題ある疑惑を抱えており、明日は国会の証人喚問に出頭しなけ ればならない。そこで各党の質問者の追及に対してボロを出してはいけないと、各党の質問を想定して 言い逃れる為の予行演習をしようとする、それがつまり「証人喚問前夜」なのだ。芝居はいきなり出演者 全員が板付きで既に本題に入っており、主人公の政治家を中心に追及する議員役の人たちが代わる代わる 様々な疑惑について主人公を追及して行くのだが・・・物語はそこから何も進展しない・・・一体 この議員は何を一番追及されているのか? 何が問題で、その疑惑が晴れなければどうなってしまうのか も語られない。つまり前提が無いのだ。何が重要な問題で? 当人の言い分が何なのか? がハッキリしないの でサスペンスも無い。そもそもこの主人公の国会議員のキャラが全く立っていない。コレは役者さんの 責任では無いけれど、どうみてもただの人の良いオジサンにしか見えない。疑惑を追及される様な 腹黒さは微塵も感じられないし国会議員の貫禄も無いからリアリティも無い。作者は一体何をやりたい んだろう? モデルにしている鈴木宗男議員の実像に迫るでもなく、かと言って テーマを体現する為の人物像を創造するのでもなく、後半母親の霊魂? が夢の中で現れて幼い頃の自分の 夢等が語られるんだけど、それとて今の現状を迎えるに至った原因にもなっていない。一体何がやりた かったのだろう??? と思ってしまう。芝居のスタイルとしてはそれぞれの登場人物が敵対したり 利害が絡んだりして葛藤すると言うモノではなく、まるで主人公議員の一人芝居の背景として議員の秘書 や、質問する議員役に雇われた役者たちや演出家等が配置されている。証人喚問 を明日に控えて練習すると言う設定は面白そうなのに、疑惑の問題点がハッキリしないのでちっとも面白 くない。た〜だ一般的に政治家がよく攻撃される談合疑惑とか献金等の話題が延々と続いて行くだけ。ただそ う言う話題が羅列されるだけの芝居なのだ。ここの劇団はベテランの方から若手の 人たちまで役者さんたちがとても頑張っているので勿体無いですねぇ。なんて生意気言って悪いけど、 「義経」とか本当面白くってオレ全部見てたのに、一体なんでなんでしょう。 お客さんたちは見た感じいかにも現場のスタッフやドラマで見かける俳優風情な方が多く見かけられまし たけど。コレはきつかったんじゃないかなぁ・・・。



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