かつて日活ニューフェイス! でデビューし、映画やテレビで活躍する女優、西尾三枝子さんの主催する 女だけの芝居を上演する劇団「女塾」の第二回公演。前回は戦後の混乱の町を舞台に、男たちによる戦争の犠牲にされ、 身体を 売って生きるしかない女たちの葛藤やそれぞれに事情を持った女同士の確執が描かれていた。言ってみれば 実に”重い芝居”であった。ところが今回作・演出を務めるのはお笑い劇団「アーバンフォレスト」の 伊丹ドンキー氏。女塾の前回の暗さ重さと伊丹さんのアッケラカンとした明るさおバカさがどう融合 するのか・・・と興味を持って観ました。結果はう〜ん、良くも悪くも暗い女塾テイストと明るい アーバンテイストが混在すると言う感じ。前回の作品では客演していたアーバンのスター大友恵理ちゃん のアーバン的テンションがひとり浮いてた印象だったのが、今回作演出に伊丹さんを迎えた分 恵理ちゃんは水を得た魚の様に泳ぎだした。しかしここにはアーバン作品では見られない泣きの場面が用意されて いた。恵理ちゃん演ずる元気な看護師がレントゲン写真の取り違えで末期癌を告知されてしまい、本気で自分 の人生の終りに慟哭すると言う場面なんだけど、このウルトラヘビーさはどうだ! ここまで泣いた恵理ちゃん の芝居って始めてだったんじゃないかな? 女塾と言うことで伊丹氏はそれならと思いっきり暗の方へ走って みたのか、と思っていたら後にレントゲン写真の間違えでケロリと大復活すると言うオチが付いた。そんな風に 本作は女塾のダークさとアーバンのライトさが入れ替わりながらの少々イビツな展開。足を怪我した少女 が足を切断しなければならないのだが、心配する少女に看護師が「足は切らなくても大丈夫」とうっかり失言 してしまい、その後それが嘘だったと分かって塞ぎ込んでしまった少女を元気付ける為に看護師たち が奮戦するエピソードがお笑いたっぷりに展開するのだが、どんなにその様子が笑えても、足を切断すると言う事実 の重さの前に心から笑う気になれなかった。でも全体としてはいろいろな仕掛けや伏線があってなかなか面白い 本に仕上がってました。脱税の罪から逃れる為に仮病を装って入院に来た細木数子を 思わせる占い師と女外科医との友情や、医療ミスで患者を死なせた過去を持つ婦長の事情等が絡んで物語 は最後までサスペンスフルに展開し、大団円を迎えるまで良くまとまってた。 外科医と占い師を演じた普段あまり見る機会の無いベテラン女優さんたちの芝居は見応えがありました。 だけど何より大友恵理ちゃんの演技幅の広さが際立った印象だったかな。