「タクシー・ドライバー」
ロバート・デニーロの原点と言えばなんといってもコレと「ゴッド・ファーザー2」ですよね。
映画ってモノによってはよく訳が分からなくって詰まらん! って言う批評をするけれど、でも基
本的に芸術って理屈じゃない……よね。勿論理屈が良く分かって面白い、と言うのも映画だけれ
ど、ホントに気持ち良い映画ってのは、理屈じゃなくて、訳も分からないけれど面白い、のだと思う。
快楽って理屈じゃないもの。コレは極上の快楽です。
も〜う狂おしくって狂おしくって、何度観ても飽きることがない、深夜都会を巡るタクシー、ひとり
孤独な運転手、「ああ〜何処にいてもひとりぼっちだ……」と嘯くセリフ……たったひとりの正義感
で少女売春婦を救おうと決意して買い揃える拳銃! 身体を鍛え、鏡に向って「誰に向って言って
るんだ? 俺か?」と拳銃をサッと構えるポーズ! 特種なレンズを使って撮影したと言う幻想的な
夜の街を澱めくネオンの光と狂おしいサックス……。
そしてもうひとつ凄かったのはこの時13歳! で売春婦を演じたジョディ・フォスターの何たる存
在感! 13歳って恐らく作品中で自分のポジションがどう言うものだか理解出来てなくて演じてま
すよねぇ、監督の持って行き方もあるのだろうけれど、この得体の知れない妖艶さと星占いを語る
幼さが相舞った存在感は凄かったですねぇ。この作品を知った頃はそんなに凄い人だとは思わな
かったポン引役のハーベイ・カイテルが嘘の優しさでジョディを抱いて踊るシーンの空恐ろしさ……。
ホントに気持ちの良い映画って好きな音楽みたいなモノですね、気持ち良くって、魅力的で、映
画だけが持つ魅力、映像と、音楽と……キリがないのでもうやめますが(笑)。
だけど今になってこの作品のことを考えてふと思うのは、ここのところ頻繁に出没する「誰でも良
いから殺そうと思った」と言う輩たち
って、ある意味この映画の主人公と共通していますよねぇ。キーポイントは「都会の孤独」都会に
暮らす人々って全く一人一人がそれぞれ何考えて暮らしてんだかお互いに分からない中で生活
してますよね。人間って何もせずにじっとしてることは出来ない生き物だから、話し相手もいなくって一人
の世界で考えに浸っていると、独りよがりな正義感に走ったり、又は世の中全てに憎悪を燃やしたり
と、自分でも気付かぬうちにあらぬ方向へ暴走してしまうことがあるんじゃないかな。この主人公のトラビス
も、自分なりの正義感で少女を悪の巣窟から助け出しはしたけれど、一方では大統領候補を銃殺
しようとしたりもしている。やっぱり狂気には違いないんですよ。