「鉄道員(ぽっぽや)」

 かの浅田次郎の大ベストセラーの映画化作品。主演高倉健・監督降旗康男・撮影木村大作の 堂々たる東映映画! 

 そもそも浅田次郎の 「ぽっぽや」 は短編集で、かの大号泣作「ラブレター」や西田敏行主演 でテレビドラマ化された 「角筈にて」 等もこの同じ本の中の一遍。
原作本の短編はどれも童話を読む楽しさを思い出させてくれる様な、読む者にイマジネーショ ンをかき立てさせ、気持ちを揺さぶって感動させる素晴らしい本でした。

本には本ならではのリアリティとか描写の技巧があると思うんだけど、映像にするにはそのイマ ジネーションを具現化する作業があって、当然出来た物は別物になる。

 前出の「ラブレター」の映画は本当に素晴らしかった。「ラブレター」の原作には悲劇のヒロ インは実物としては登場しないし、主人公の五郎とも一面識も無いまま描かれていて、それが読者 にヒロインを想像させる効果になっていたのだけれど、映画ではコレを中国人? の女優さんが原 作を飛躍した素晴らしさで見事に演じ切っていて、いや〜泣かされましたねぇ。
 一方主人公のチンピラ役の中井貴一さんの方は、どうしてもふとしたところに品の良さが感じら れてしまって、ちょっと違和感を感じました。
 小説の中の人物を具現化するのって本当難しいですよね。

 ところでこの 「ぽっぽや」 の主人公の駅員はと言うと、原作ではくたびれた老人のダサダサの おっさんで、大よそ健さんとはかけ離れたイメージ。
 雪景色に健さんとくれば絵になるし、やっぱり映画はこうでなければ……て言うのも分かるんだ けど……やっぱちょっと健さんの絵面は任侠ヒーロー物とかなら良いけど、こう言う泥臭い人情 モノだとリアリティに欠けますよねぇ。きっと原作好きの人には不評だったのではないかな。

 オレはそんなに原作に思い入れもなかったので、綺麗な映画に仕上げたもんだなぁと思いました けど。
 でもやっぱり死んだ娘が会いに来る件は誰がやろうとジンと来ますね。健さんを主演にして映画 に華々しさを加えつつ、原作の泣かせどころもしっかりと押さえて、良く出来た作品と言えるので しょうね。

 でもコレやっぱり原作のイメージからすると主役は左トン平さんとかケーシー高峰さんくらいが 似合ってたんじゃないかと思いますけれど……でもそれじゃお客が入らないか。

 まぁこれは紛れも無く健さんのカッコ良さを見るのがひとつの魅力になってる作品ですねー。志 村けんが出て来た時には笑ってしまいましたけど……。



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