「男はつらいよ・寅次郎恋やつれ」
寅さん48作の中で、一番人気のあるマドンナは誰かと言うと、そりゃあやっぱし4回も同じ役で
出場し、寅さんと同じ旅から旅の人生を送る腐れ縁の歌手リリーが挙げられますけど。でも正当な寅さんのマドンナ
としてはリリーはちょっと異色な存在ですよね? やっぱし寅さんの恋する相手は飽くまで堅気の人で、寅さんと
は全く相容れない生活環境とかにないと……。
オレ的には本作で二度目の出演となる歌子こと吉永小百合がマドンナ
ベストワンです。でも正直吉永小百合さん自体はあんまし好きじゃ無いんだけど(失礼)ハチキレんばかりに登場し
た「キューポラのある街」は正に掃き溜めに鶴の様に鮮烈でしたけど、ずーっとそのままでしょう? やっぱし
女優さんって影とか愁いが無いとダメなんですよねぇ。
で〜も寅さんに登場するこの歌子さんの、なんと儚げで幸薄い
ことよ! しかもお父さんは宮口清二(七人の侍の久蔵!)ですぜ! この娘の気持ちの分からないガンコな小説家・
宮口御大の何と言う存在感! 黒澤オーラの凄いことよ……。本シリーズで前田吟の父親役の志村喬もそうだけど、
クロサワ組と言うのは他の作品にちょこっと出演するだけでも作品全部を覆ってしまうくらいオーラを発している。
って話しがズレましたが、このマドンナ歌子さん、前回の出演では寅さんを振ったことにも気付かず好きな人と幸せ
な結婚をしたかと思いきや、本作の冒頭で寅さんと再会するなり、実は旦那が急死してお父さんとも断絶してしまい
悲しい状況に
あるとのこと、そんな強引な展開も物ともせずに、そんな歌子の心中を察しちゃあ黙っちゃおれない寅さんの何と
優しいことよ!
この山田監督の演出! 旅先で再会し、一端別れて行くバスの中から見る小さくなって行く歌子の
姿、寅さんを慕って柴又の寅屋まで訪ねて来た歌子を元気付けようと、皆で思いやる寅屋の人々のなんと暖かいこ
とよ! もぉ〜思い出すだけでホロリとして来やがる。もうコレは本当にメロドラマですよ、観て下さいよーオレ的
にはシリーズ中ベスト1、2に入る好きな作品ですね。