「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
こ〜れは興味深かったですね。一般的にゃなんと言っても「ローマの休日」を書いた人ですけど、オレ的にゃなんと言っても「パピヨン」ですあね。
「ローマの休日」の第一稿は「王女と無骨男」とう題名だったとか(笑)ジョン・ウェインが共産党糾弾の急先鋒だったとか、虐げられた彼に手を差し伸べたのがカーク・ダグラスで、その作品が「スパルタカス」だったとか、身を乗り出して見入ってしまった。
過ぎ去った黒い歴史といえばそうなのだろうけど「哀愁」のロバート・テイラーが公聴会で共産主義者を非難する発言をしてたりとかは複雑な心境になりますね。
他にも映画には出てこなかったけどチャップリンはイギリスに追放されたし、エリア・カザンは仲間を売って助かったとか、誰が味方なのかも分からない孤独感を西部劇にしたというフレッド・ジンネマンの「真昼の決闘」や当時の審問会の様子を克明に再現したデニーロの「真実の瞬間」とかも観てましたからねぇ。
今までこうしたハリウッドの赤狩りやトランボの伝説はあちこちで語られていて、断片的には知っていたけれど、こうして実録的な映画にするにはそれなりの時間が必要だったのでしょうね、少なくともジョン・ウェインが生きてるうちはダメだったでしょう。
そんな中で映画界から干されたトランボが偽名で書いた作品が「ローマの休日」であったというのは驚嘆ですね、明日どうなるかも分からない絶望的な状況なのに、あんなに楽しくてロマンチックで感動的なお話を書いてしまうなんて!
後年の「栄光への脱出」「ジョニーは戦場へ行った」「パピヨン」あたりは赤狩りで虐げられた思いが爆発した感がありますね、刑務所に服役する時に全裸にされて口の中から肛門までを調べられる描写は正に「パピヨン」でした。
しかし共産主義者だからといって、直接彼等からの実害があった訳でもないだろうに。なんでここまで迫害されるのだろう……と思ってしまうけど、当時それだけアメリカはソ連の存在が恐かったということなんでしょうね。
だって共産主義者といいながらトランボは庭に池のある大邸宅に住んでるし、彼にしたって共産主義がどうこうというよりは個人の信念を捻じ曲げようとする体制と戦っているという感じだ。
オレとしては彼の創作の何たるか……をもっと知りたかったけど、お風呂で全裸で半身浴しながらタバコ吸って酒飲んでタイプライター打ってるという。その絵面だけでも読み取れるところが多々ありました(笑)。