「逃亡地帯」
アーサー・ペンの作品には独特の恐さがありますね。群集の恐さと言うか、社会大
衆の恐さと言うか、この作品の主人公は刑務所を脱獄して来た囚人なんだけど、そ
の囚人を街の人々が捕まえてリンチにしようとする物語。
それだけ聞くと脱獄囚なんて悪いんだからリンチになってもしょうがないじゃないか
……と思うけど、この主人公がロバート・レッドフォードで、脱獄したことにも聞けば納
得出来るだけの理由があるのだと言う。そんな主人公の立場から見れば理由も聞か
ず脱獄囚だと聞いただけで「それ捕まえろーリンチだ!」と異様に盛り上がる街の人
々の群集心理が恐ろしくなる。
珍しく? 良い者役のマーロン・ブランド保安官を殴り倒してまでリンチを決行しようと
する群集たち、アメリカの社会が抱える集団心理の恐ろしさ、ってことだけれど、人間
社会ってどこでもこう言う状況ってありますよね。
この独特の社会集団の醸し出す圧迫感と言うか空恐ろしさは凄い。アーサー・ペン
にしか作れない映画でしたね。