「東京物語」
世界に名立たる日本の映画監督三大巨匠といえば黒澤明・溝口健二・小津安二郎。
本作は小津安二郎のおそらく代表作として世間に認識されている作品。
外国の映画評論家とかがよく日本の映画人に「小津の様な日本映画は何処へ行ってしま
ったのか?」というらしいけど、まぁその流れを受け継いでいるのは山田洋次監督であり、
テレビの「渡る世間は鬼ばかり」ですねぇ。
ひとことで言えば「ワビサビ」ですかね、言われてみれば確かに日本特有の情感とでも
言いましょうか、でもそれが確実に外国の人にも感覚として伝わっているというのが、や
っぱり映画というものは素晴らしいのだなぁと思いますね。
田舎に暮らす両親が子供たちに会いに東京へ出て来たのに兄弟みんな仕事や何かで忙しく
誰も構ってやらない! んで仕方なく二人で熱海に行ったら旅館で隣の部屋が煩くて寝られ
なかったり、海岸を歩いてたらお母さんは具合が悪くなって座り込んでしまったり……。
こうゆう描写は今観ても身につまされます。
日本のホームドラマの原型は小津映画から来ていると思うけれど、それでもやっぱしこの
独特の空気感は真似出来ない。
だってこ〜のセリフ棒読みの笠智衆お父さん! おそらく腕の位置や顎の角度まで指定さ
れているのではないかと思える俳優の不自然な佇まい! とてもヘンなセリフの言い回し!
人物を真正面からとらえたカットの切り替えし、ふざけてるみたいな積み重ね等々……。
でも! でもでもそれが全くリアルで良い味わいになってくるというか、小津ワールドと
いうのか、コレはもう味わってみなければ分からない(笑)。
いや〜コレがいいんですよねぇ〜最初のうちは慣れなくてヘンな感じなんだけど、終盤に
つれ心に染みてくるというか、味わいがねぇ〜。
特に本作は、家で座敷に夫婦が座ってて、窓の外から近所のおばさんが声を掛けるあの
有名な構図が冒頭と最後に反復されることで、全てが監督の意図の元にあるのだということ
が解って感動しますね。