「座頭市」
その名を聞けば血沸き肉踊る楽しい楽しい大娯楽活劇！ まさかその新作をこんなにもワクワク
した気持ちで観ることが出来るなんて！ 映画ファンの大大醍醐味でしょう！！
まさか座頭市を勝新
以外に出来る人がいたなんて！？ タケシがやると聞いた時、違和感よりも「なるほど」と思った。
そうだよ、勝さんのとは全然違うけど、北野武の座頭市はアリだ！ 単純に「観たい！」それでこそ娯
楽だ。しかしスゴイ人だよねぇ、あの勝新太郎とは全く異質のキャラでありながら全く引けをとらない
存在感があるんだな。
タケシはインタビューで「盲目で居合いの達人と言う設定だけを借りて全
く違うモノを作る」と言っていたけれど、どうしてこの座頭市は勝新シリーズのエッセンスを忠実に引
き継いでいる。そもそも適役の浅野忠信（全く素晴らしい！）の設定なんかかつての名敵役、天地茂の
そのまんまやんけ。幼い姉妹（？）の敵討ちを市が加勢したり、お約束のタクハツ僧侶集団とか（笑）
も登場して往年のファンは二ヤケっぱなしだったんじゃないかな、オレなんかもう嬉しくって嬉しくっ
て（泣）本当にそのまんま勝新が入れ替わって演じても違和感のない、文字通り定番の座頭市ストーリ
ー。そこに全く異形のタケシが扮して違う個性を発揮していると言うオドロキ！
そもそも北野監督は
時代劇を撮ることが正解だったのではないかと思わせる程、これまでのヤクザ物で見せた殺気がマッチ
していた。立ち回りはきっと引き絵で見たらかつての勝新の方が格段に上だろうけれど、そこは今日の技術、
カット割りやＣＧを駆使した血しぶきでスゴイ迫力！ ここでも「プライベート・ライアン」が流行ら
せてるデジタル鮮明画像に望遠コマ落ちのアクションが効果を上げている。この成功はやはりタケシの
「いかに勝新と違う座頭市像を作り上げるか」が魅力的
に仕上がっているからだろう。
まぁこれを敢えて比べるとすればやっぱり勝新の方が殺気で押しまくる
タケシと違ってユーモアもあり哀愁もあって役の持つ人間的な深みを言えば比べるべくもないけれど、
でもそこが裏を返せばタケシの魅力なのでしょう。オレはこれを「芝居が上手いんだか下手なんだかも
分からない存在感」と言ってるんだけど（笑）。
それとやっぱり特筆すべきは往年のファンからすれば
仰天のあのオチ！！ 言われてみれば「そうかその手があったか」と思
うけど、思いついてもなかなか出来ませんよそりゃ、偉大なる勝新シリーズの根底を覆してしまう……
だから驚きもあった。しかも散々こちらを驚かせておきながら最後の最後まできて軽くいなしてしま
う二段オチのあのオトボケ！ もう怒るの通りこして大喜び（笑）まさにこれこそが北野映画だぁ！
タケシは凄いけど近頃の激詰まんなかった「ＴＡＫＥＳＨＩＳ’」とかその次の「監督ばんざい」も
詰まんなそーでしたよねぇ……も一度お客の喜ぶ娯楽路線に戻って欲しいッスよねェ……自分だけの
世界に入って行って欲しくないですよね。松竹ではきっと「寅さん」の企
画も上がっていたんじゃないかな……渥美清が亡くなった時に片岡鶴太郎の名前が上がっていたそうで
すが、タケシの下町育ち、渥美さんとまた違った意味での人情味とユーモア……見たいですね、でも山
田洋次監督はやらないだろうなきっと。
それともうひとつ、ここで勝手に断言してしまいましょう。行
く行くは必ず今まで誰にも出来なかった「七人の侍」リメイクをやるでしょう。もちろんタケシは勘兵
衛で。鳥肌が立ちますね、まだどこからもそんな話は出てないけれど、絶対にタケシの頭の中にあると
断言してしまいましょう。日本の映画人が全員一度は考えながら生前の頃には黒澤に「出来るもんか」
と一蹴され、もしくはあまりの巨大な業績に尻込みして誰も手を付けられなかったであろうリメイク。
これをやる権利のあるのは黒澤から「日本映画を頼む」と言われた北野監督以外の誰がいましょうや。