椎芽(おれ)とヤマト


「喫茶Memory」をよくご覧くださる方はご存知だと思いますが,ぼくは「宇宙戦艦ヤマト」のファンです。よい意味でうまく代替わりを続けている「機動戦士ガンダム」シリーズとは違って,この作品は,当時の西崎義展プロデューサが「ヤマト」以外では鳴かず飛ばずで借金地獄に陥って版権が国外流出するわ,あげくドラッグで捕まるわ,さらに第1作のキャラ設定責任者であった松本零士氏が中心になって版権を買い戻すや,西崎元Pと民事訴訟になっていまだにゴタゴタしているわ,っていう,悲惨な名作です。(いまのところ,版権表示はアニメーション制作会社になっていますが,これは裁判中ということで「預かり」扱い,ということなんでしょう。このおかげで,昔に比べると非常によい状況にはあります。)

最終作・「宇宙戦艦ヤマト完結編」では,西崎元Pの意向で,第1作最終回で病死したはずの初代艦長・沖田十三が生存→艦長,ヤマトとともに自沈,という幕引きになりました。これに対して,西崎元Pが捕まったあとで松本氏は皮肉を述べています。社会的には死んだも同然の西崎元Pですから,ここは死人に口無し,ということで,森雪=麻上洋子さんのようにコメントを避ける方が賢明だとは思うのですが…松本氏はそれだけ西崎元Pが憎いのでしょう。裁判やっちゃうくらいですから(苦笑)。(あとで書きますが,松本氏・西崎元Pのどちらの意向が勝つか,というので,シリーズの方向性は二転三転しています。)さらに,これに対する続編というのがあって…松本氏の「新宇宙戦艦ヤマト」は日の目を見ています。西崎元P側には,評判がいまいちだった,タイトルだけヤマトなOVAの他に,資金難と逮捕劇で封印された続編設定というのがあります。OVAに使う金があったら,こっちをやって欲しかったなぁ。スキンヘッドの真田技師長を見てみたかった…って,関東で「ハロモニ。」の前にやっている海外ドラマで,青野武さん=真田技師長が声をあてている俳優さんの頭は薄いですが(関係ない)。

ぼくは,「新宇宙戦艦ヤマト」を拒絶しています。松本氏の,その多くの作品をひとつのステージでとらえて書く手法(第1作の松本氏版コミックには,アルカディア号とキャプテンハーロック(=古代守!?)が出てきます)が苦手だ,というのは多分にあるんですが…ぼくの中ではもう「ヤマト」は完成されたものであり,後ろを振り返って愛するものであり,前を見ようと気は起きないんです。前を見る限り,松本氏vs西崎元Pの確執裁判を避けて通れない,ということにへこんでいるのも大きいんですが(^^;)。松本氏の手法は好きじゃないけど,西崎元Pはもう社会的信用を取り戻せる可能性が限りなく低い立場だし。ましてや,声優陣では,古代進=富山敬さんはもう亡くなって久しいし(プレステ版での山ちゃん古代も悪くは無いけど…栗貫ルパンのように似せようとしていないところがいい!),島大介=仲村秀生さんも引退されたし(「宇宙戦艦ヤマト完結編」製作中の病気引退でしたから…ご健在なんでしょうか…プレステ版での田中秀幸さんの島はいい感じでしたが),沖田艦長=納谷悟郎さんのプレステ版での声の衰えは痛々しい限りだし,デスラー総統=伊武雅刀さんはご健在ですが,何やらトラブルがあったらしく,もうヤマトには出ないという噂がありますし…もう無い物ねだり。ぼくは,もう前を向けないんです。

似たような感情が渦巻いた例がありました。第2作・白色彗星帝国編の結末が,劇場版「さらば宇宙戦艦ヤマト〜愛の戦士たち〜」からテレビ版「宇宙戦艦ヤマト2」で大きく転換されたことに憤り,以降の展開を拒否したファンが少なからずいらっしゃいます。まぁ,これも結局は西崎元P(=力の弱い独立系興業として上映せざるを得なかった=何が何でも話題が欲しい=映画版の展開=古代・島以外の班長は全員戦死,古代が雪の亡骸とヤマトで特攻)vs松本氏(=主役の若者を死なせるな=テレビ版の展開=士官のほとんどは生還,テレサが身代わりに特攻,ヤマトは帰還)の確執という側面が大きいんですが。

このとき,小学生だったぼくは,(後に,週200円の小遣いで,オフィシャルFCに入会=西崎元Pに貢ぐことになりました。)は,テレビ版を正編・映画版を外伝,として気持ちを納得させました。ぼくはついていっちゃったんです。確執と,ことの重大性を理解するのは,ぼくはまだ幼すぎたのかも知れません。…そして宇宙版学園青春ドラマの傑作(笑)・テレビ版「宇宙戦艦ヤマトIII」が創られます。


で,今回のハロプロの再編です。生身のタレントさん,しかもみなぼくより歳下の女性たちと,いちアニメーション作品をだぶらせるのはずいぶん乱暴だなぁ,と自分で書いていても思うんですが(^^;)。

展開についていけたり,拒否したり,ひとつの物語に対して,ぼくは両方経験していたんだな,ということを,ぼくの「ヤマト」への愛憎のことで思い出しました。なので,この変化を受け入れる方も,そうでない方もいらっしゃる,というのは理解できるつもりです。が,前を向けない気持ちを,後ろ向きに出すのは…正直苦手です。「後ろ向きな行動からは何も生まれない!」なんて能書きをたれる気は全くありません。ぼく自身が,自分の気持ちがすさんでしまったときにそういう行動に出てしまうこと,そういうときの自分のことを大嫌いで,他の方のそういった様子を見聞きすると,そういう自分を思い出してしまい,へこんでしまうんです。理由はそれだけです。
それを,ひとりの意見として出すのは受け入れなければいけません。ぼくがこうやって意見を書いている以上,意見が出るのは認めなきゃいけない。内容への賛否は別として。当たり前です。いま,前を向けない気持ちになっているみなさんが,文章で表現するのもアリでしょう。それを行動で示すのもアリでしょう。皮肉で表現するのもアリでしょう。「新ユニットの新譜リリース日に合わせて,チャート集計店で旧譜をみんなで買おう」というのもアリでしょう。

…ぼくがついていけるかは別として。

ぼくが甘ちゃんなんでしょうね。幸せな「夏休み」の時期にハロプロの世界に足を踏み入れた,というせいもあるのかも知れません。

2002.08.06