お読みになる前に





ぷち・あだると。なシーンが含まれる話になりますので、一応R18としておきまする。
皆様のご判断にお任せしますが、その点ご了承下さい。


ちなみに、ぷちですので、さほど露骨な描写はありませんが・・・まぁ、取り方は人それぞれですので。
ぬるい!とかこれは、隠すべきとか・・・判断は私はあえていたしませんが、ご了承の元、続きをお読みいただければ幸いでございます。











 



「ん・・・ふぅ・・・」
 熱が籠もった吐息が唇から漏れる。
 堪えようと思っても、それを妨げるようにナルが触れてくる。
 冷房によって冷えた肌に再び、温もりを戻すように。
 微かに残っている太陽の残光が、逆行になりナルを黒く塗り潰そうとしている。
 ただでさえ、与えられる快楽に意識が霞み、浮かんでくる涙に視界がぼやけている中で、逆光でその姿が見えないというだけで、急に不安が押し寄せてくる。
 震える腕を伸ばしてその背にしがみつくと、ナルが微かに上体を起こし顔をのぞき込むように近づいてきた。ここまで近づくと、逆光も関係なく、滲んだ視界でもその顔をはっきりと見ることが出来る。
 不安そうな眼差しで自分を見上げてくる麻衣に、ナルは軽くキスをする。
 触れてくるナルはいつになく優しかった。
 そう思うのは気のせいだろうか。
 いつものようにナルは触れてきているというのに、失うかもしれないと思った恐怖感が、錯覚させているのだろうか。
 別にもう、恐怖に怯えることなどないというのに。
 力強い腕がこうして、抱きしめていてくれるというのに。
 いつか、また同じように喪失してしまうのではないかという恐怖が、しこりとなって消えない。
 どうすれば、彼は無茶をしなくなるのだろうか。
 あんな思いは二度としたくない。
 だが、ナルはどうしようもなければ、またその力を使うだろう。
 どんなに止めても。
 止めてと叫んでも。
「使わないで・・・・・・・・・・」
 漏れた囁きに、ナルは動きを止める。
「二度と、PK使わないで・・・・・お願い・・・もう、やだから・・・二度と、二度と目の前で倒れられるの・・・ヤだから・・・あんな、ナル見たくないっっっ」
 あふれ出した言葉は止まらない。
 ナルが倒れるところを見るぐらいなら、この目を抉り抜きたい。
 そうすれば、蒼白な顔で倒れるところを見なくて済む。
 ナルの呼吸が止まるのを確認するぐらいなら、自分の呼吸を止めたい。
 そうすれば、鼓動が止まり呼吸が止まり、冷たく硬くなっていくのを知らずに済む。
 そう思うことじたい狂っている。
 こんな事を言われたら、言われた方とて困るだろう。
 下手をすれば、気味悪がるかもしれない。
 過ぎる想いは相手に負担としかならない。
 判っている。
 異常だ・・・今までこんなに強い衝動に駆られることは一度もなかった。
 判っていても、こうして温もりを再びこの腕の中に抱きしめてしまえば、いつか来るかも知れない喪失の恐怖がますます強くなる。
「・・・・・刳り抜かれたら、困るな・・・・・・・・・・」
 言葉に出さなかった想いは、ふれ合うことでナルに伝わったのだろうか。
 ナルはそれ以上言葉にせず、麻衣の意識を奪うように深く口づける。
 熱を帯びた舌が、僅かに開いた唇の隙間から潜り込み、麻衣の小さな舌を絡めとり、呼吸さえも止めんばかりに深く口づけをする。
 指先は背筋をなぞり、腰骨の辺りを円を描くように撫で、もう片方の手は豊かとは言い切れないが形の良い乳房を包み込む。
 軽く力を入れるだけで、白い肌は赤く色づき、熱い吐息がナルの肌をくすぐる。
 ナルが離れていかないようにと言う無意識の行動なのか、いつもは消極的な麻衣が自ら足をナルの身体に絡める。
 それほどまでに、今回の騒動は麻衣の心に深く傷を付けたと言うことなのだろうか。
 いつもはこうして肌を重ねていけば、麻衣はすぐに何も考えられなくなるというのに、理性を飛ばすこともなく常に喪失の恐怖を心の片隅に置いている。
 その、恐怖が双眸にも浮かび上がり、縋るような光を放っている。
 唇を離し、肌に一つ一つ、刻むように朱痕を散らせれば、身体が小さく震え、熱を帯びた吐息が漏れるのだが、唇からは歓喜の声がなかなか漏れない。
 聞きたい・・・・
 理性を飛ばして、ただ、熱に浮かされて求める声を。
 その衝動に突き動かされながら、彼女の心に深く残るしこりを拭うように、白い肌に触れてゆく。
「麻衣、僕はここにいる」
 背に回った腕をとり、その掌に口づけ胸の中央部に押し当てる。
 平常よりも幾分早くなっている鼓動を確かに感じ、いつも冷たい肌にはうっすらと汗をかき、熱が伝わってくる。
 直に感じる・・・聞こえる音に、安堵のため息を漏らすのはこれで何度目だろうか。
 それでも、手が離れたその瞬間から、喪失の恐怖に身が竦む。
 それを察しているのか、ナルは何度も同じ言葉を囁く。
「ここにいる。もう、不安に怯えることはない」
 二度と使わない。とはナルも約束することは出来ない。
 いつ、必要になるか判らず、使った時どうなるかはナルも判らないからだ。
 そして、麻衣も約束をしたからと言って本当の意味でその言葉を信じることはできないだろう。
 麻衣は一言も口を開くことなく、与えられる熱にジッと耐えるように目を閉じる。
「二度と僕を見ることは出来なくなるぞ? それでも構わないのか?」
 掴んでいた手に口づけ、指先を口に含みながら告げられ、麻衣は大きく目を見開く。
「そ・・・そうしたら、ナルに・・・責任とって貰う、もん」
 甘いうずきが背筋を這い上る。
 寒気にも似た、だがそれとは別の甘いうずきが、身体の奥深くから生まれ、背筋を這い上る。
 こみ上げてくる物を唇を噛みしめることで堪え、ナルをまっすぐに見つめる。
 指先を含んでいた唇は、掌に、手首にキスをし、腕の内側の柔らかい場所を優しく噛む。微かな鈍い痛みの後に生まれるうずきに、息がさらに乱れる。
「片時だって・・・目が、離せなくなったら・・・無茶、しないでしょ・・・・・」
 背を撫でていた指先が、大腿部に触れさらに上へと上がっていく。
 今まで直接的な愛撫はなかったにも関わらず、ナルが触れた箇所はすでに変化をし始めている。軽く触れるだけで微かに聞こえる濡れた音。
 濡れた音を響かせるようにナルは触れるが、麻衣は呼吸を無理矢理整えることで、こみ上げてくる物を堪え言葉を紡ぐ。
「ナルが、無茶をしなくなるな・・・ら、なんでも・・・ん・・・やる・・・・・・・・よ・・・・・ぁ」
 言葉が乱れ、与えられる悦楽に肌はさらに染まり、呼吸が乱れながらも、麻衣はそれだけに意識を奪われることはなかった。
 譫言のように掠れた声で囁き続ける。
 どれほど、愛撫が強くなろうとも、意識を凌駕せんばかりに快楽が這い上がろうとも、止める気はないようだ。
「・・・・・・・・僕が面倒を見ると?」
 睦言を囁くように耳元で囁けば、堪えきれなくなった歓喜の声とともに麻衣は答える。
「例え、自分勝手で・・・我が儘な行動でも・・・ナルは、優しいから・・・・・見捨てない」
 間断なくもたらされる悦楽に身体を震わせ、甘い吐息を漏らしながらも、熱に潤んだ瞳でまっすぐにナルを見つめる。
「ナルを・・・なくさなくて、済むなら・・・・・なんでも、出来る・・・・・・・・・・んぅ」
 ナルは麻衣の双眸をのぞき込んで苦笑が浮かぶ。
 どれほど強気な発言をしようとも、狂いじみた想いを告げようとも、麻衣の本心は変わらない。
 どんな想いをぶつけようとも、相手の重荷になることだけは麻衣はしないと言うことだけはナルとていやと言うほど判っている。
 倒れる姿を見るぐらいなら、目を刳り抜いてしまいたいと言いながらも、麻衣はこの鼓動が止まるその最後の瞬間まで、片時も・・・瞬きをする一瞬の間も惜しんで、自分を見つめ続けるだろう。
 最後の最後まで・・・・どれほど、麻衣にとって辛い事であろうとも。
 彼女はけして逃げることはしない。
 だが、それとこれは話は違う。
 普段なら彼女の奥底に沈められて浮上してくることなどないであろう言葉。
 不安という浮力によって浮き上がった想いを・・・どこまで麻衣の言葉を引き出せるだろうか?
 愛撫が深くなればなるほど、それに応じるように麻衣の言葉も深みを増していく。
 正常の意識を保っている状態ならば、重荷に感じることを怖がって・・・・いや、理性という重りに沈められて深遠に沈んで、告げられることのない程の言葉を引き出すために。
 麻衣すら気づいていない言葉を、生み出させるために、ナルはゆっくりと身を沈めていく。
 その瞬間だけ、背に回った指が爪を立ててしがみつく。
 虚ろな瞳はそれでもナルを映し、喘ぐように開閉して空気を吸い込む唇は、まるでキスを請うているようにナルには見えた。
 誘われるがままに口づけをし、ゆっくりと腰を押し進める。
 足が身体に絡まり、もっと強く抱きしめて欲しいと言わんばかりに、背に回った腕が強くしがみついてくる。
 ナルを求めんばかりに揺れる細腰を掴んで、抉るように動かせば、掠れた悲鳴が漏れる。
 どこまで、言葉を引きずり出そうか。
 いつもは、遠慮をし、理性が邪魔をし、彼女にここまで言葉を出させることはなかなか出来ない。
 小さな唇から漏れる、狂気じみた言葉は麻薬のようにナルの理性を狂わせる。
  相手に溺れすぎているのは、彼女か。それとも自分か。
 麻衣が自分しかいないと泣きながら告げたように、自分にとっても女は麻衣しかいないのだから。
 苦笑が知らずうちに漏れる。
 すすり泣く声を心地よく感じる。
 彼女が自分を求める声が、理性を崩していく。
 衝動だけが自分をつきおこす。
 そのままの勢いで深く求めれば、苦しげな悲鳴が空気を震わせる。
 すでに、快楽は苦痛になり、解放されることを身体は望んでいる。
 自身をも締め付ける力が強くなり、ナル自身限界が近づいてきていた。
 だが、それでも麻衣は離れることを厭うかのように腕を伸ばして縋ってくる。
 背に縋る指に力が籠もり、爪が皮膚に食い込んでいるのが判る。
 その痛みさえ甘美に感じるのだから、始末に負えないと思いながらも、止める事はもう出来ない。
 ただ、己の本能が突き動かすままに求め続ける。





 それは、片方が一方的に求めるものではなく、
 互いが互いを、求め続ける。
 乾いた大地が潤いを欲するように。












 溺れていると、彼女は掠れた声で呟く。
 幻想的な響きを宿す言葉に。
 最も原始的な意味を持つ言葉に。
 気が狂わんばかりに溺れ、
 乾きを潤すように、その言葉を欲している。
 だが、その言葉はほんの一時の乾きを潤すにしか過ぎない。
 幾ら乾きを潤したとしても、再び欲する。
 潤ったことを知ったために、よりいっそう深いものを望む。









 溺れすぎているのは彼女か。
 それとも、彼女にか。












答えは、永遠に出ない




















終わり





☆☆☆ 天華の戯言 ☆☆☆

大変長らくお待たせしました・・・・すみません。正直に申せば忘れてました・・・更新すること(平伏)
ファイルの準備出来てないと思っていたのに、後はUPするだけでした・・・はははは。その状態で何ヶ月放置していたのでしょう?
とりあえず、これにて「Affogato」終了です。
少しでも楽しんでいただけたら幸い!!
また、感想等お聞かせ下さったらもう何よりも嬉しいです♪♪

ってか、遅いよ!!って言われそうですが・・・相済みませんっっっ




今後ものんびりまったりと、いつになるのか判らない更新速度になるかと思いますが、思い出した頃にでもふらりと立ち寄っていただければ、幸いでございますv