このキットもそうですがグラントというとリーと共通金型でリーの方がメインで出来てるから そのまま作ってもまともなグラントにならない。
おまけに最大の専用パーツである砲塔がどれもヒドイときてる。
エア、ハセガワは論外、タミヤも満足とは程遠い出来。
しかし、そういうものを好んで作りたくなってしまう自分の性分が困ったもんだ。
まあ私が出来のいいキットを素組みしてもどってことないからいいんですけどね。
それにしてもサイドスカートがないのはまあいいとして箱絵はグラントなのにデカールがリー用 のみってどういうこと?



第一幕・ほうとう推理ドラマ


まず最大のキモである砲塔の製作から。
とにかくこれをやっつけてしまわないと話が前に進みません。
最初キットのパーツをもとに肉盛りしようと思ったのですが図面とつき合わせてみると大きさがまるで違う。
改造は早々にあきらめてスクラッチをすることに。

なお、今回の資料はガリレオ出版の「AFVファイルVol.3」 1冊のみ、他はネットで探した実車写真数枚です。
以下、図面といえば同書掲載の図面を指します。

砲塔の作り方はいろいろ考えられると思いますが今回はバルサ材を使用。
理由は家にあったから。

まずいつものように1/35の図面を46%にコピーして砲塔の各面を大きめに切って古ハガキに貼り付けます。
アウトラインにそって丁寧に切り抜いて外側は2つに分割、これをゲージにするわけです。
切り抜いた上面図をバルサのブロックに貼って外形にそって垂直に削ります。
作例ではやってませんがブロックの厚さを予めだしておくと後の作業が楽です。
次に側面形のシルエットを削ります。
ときどきゲージを当ててチェックしながらぴったり合うように。
同様に正面形を整えます。
これで上面、側面、正面の3方向のシルエットが図面通りに削れました。
ここからシルエットに現れない面を削るわけですが、これはいろんな角度の写真を見ながら感覚をたよりに するしかありません。
コツは基本形を構成している大きな面とそうでない小さい面(エッジの丸みとか)を区別してまず大きな面 を先にキチッとだすこと。
これを一緒くたに作ろうとすると骨格のよく分からないグズグズの形になってしまいます。

写真は荒取りが終わったところ。
この時点では削りすぎてしまったりまだまだ形状の捉え方があまい。
ここからさらにパテを盛り削りして形を追い込んでいきます。
パテはコニシボンドの「ウッドパテ」を使用しました。
単純に木につけるってことで選んだのですが乾燥は速いし肉やせは少ないし乾燥後はさくさく削れるしで この手の工作には向いてると思いました。

ここまで作ってある角度から見ると実車写真とイメージが違うことに気がついた。
これはどうしたことか。
さあ、ここからがほうとう推理のはじまり。

形状はほぼ図面の通りにできてるはずなのでまず図面がまちがっているのでないかと疑ってみる。
図面も作成者が資料をもとにして描いてるはずなので当然間違ってることはあり得る。
特に鋳造砲塔なんてのは仮に実車取材したとしても面の起点、終点がはっきりしないので実測のしようがない、 どうしても作成者の主観的解釈が入ってしまうでしょう。

今一度実車写真と図面を子細に比較してみると背面の長方形の面のプロポーションが 横長すぎるみたい。
真後ろからとらえた写真がないので正確なことは言えませんがもうちょっと横幅が狭く、天地が高い感じです。
まずこれが1点。

次の問題が左右の側面。
これは正面から見ると斜め、つまり面としては円錐面に近いものです。
この面が後ろに伸びていって背面長方形の左右の辺(垂直線)につながる、つまり斜めから垂直に、 どこかで変化してるわけです。
図面ではこれが砲塔の後ろ半分でなだらかに変化しているように描かれている。
タミヤの砲塔も同じ解釈で作られています。
砲塔を斜め前から見るとこの変化面の途中がシルエットになって見えるのですが上記形状だとかなり垂直に近い見え方に なるんですね、当然ながら。
しかし写真ではかなり角度がついてる、つまり円錐面が角度を保ったままかなり後ろまで 続いているように見える。
これをどう解釈すべきか。


あれこれ思案して出した結論が図の形。
左が従来の解釈、右が私の新解釈です。
すなわち側面と背面の間にもうひとつの小さい面が存在するというもの。

この面と側面の境界はなだらかでその存在は写真を見てもよく分からない。
あると思って見るとあるようにも見える、という微妙なもの。
でもいろんな写真を見るとこう解釈するしかないんですよ。
(図は模式図なので形は正確ではありません)
自作砲塔とキットパーツを並べてみました。
こんなに違うんですよ。
以上の考察をまとめると基本形を構成している面は図のようになっていると思われます。
左右側面以外はほぼ平面と考えて間違いないでしょう。
こうやって面に分解してみるとそんなに複雑な形でもない。
シャーマンのような単純な形のものよりイメージをつかみ易いかもしれません。




一応完成した砲塔です。
「AFVファイル」に載ってた特徴的な写真と同じアングルで撮ってみました。
本をお持ちの方は比較してみてください。
どの角度もいい線いってると思うのですがいかがでしょうか。

やれやれ・・・
ここまでで相当エネルギーを使ってしまったのでしばらく押入れにしまって 数ヶ月後に改めて「素組みの気持ち」で車体を作ろうかと思います。(笑)

(2004,3)



製作記 2