フジミ M4シャーマン製作記



フジミオリジナル製品としては唯一のM4系、なのに支援用の105mm榴弾砲、しかもHVSSを選択するあたりは独特のこだわりと言うべきか。
今思うと帝国陸軍に特別の思い入れのある同社のこと、敵役のなかで比較的弱そうなやつをもってきたということなんでしょうかねえ。
穿ちすぎかな。
テレビの戦争特番を見ながら63年前の夏に思いを馳せつつ、30数年ぶりの製作です。


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組んだ後の感想ですが車体と砲塔の大きさ/高さのバランスは1/76シャーマン系の中ではピカイチだと思います。
ただし防盾を含めた砲塔前部の形状に問題があり、大分損をしているのでそこを中心に手を入れました。

1:砲基部はエッチングソーで丁寧に切り離し(後で使う)、省略部分をプラ板で再生します。
後ろのオーバーハング部の下も外周の肉がないのでプラ板を貼ってやるといいでしょう。
側面ハッチ(部品22)の接着面は盛大にでっぱっているので所定の位置に収まるように彫刻刀で掘り込んでやり、接着後 合わせ目はエポパテで滑らかに仕上げます。

2:前部が丸すぎる感じがしたので角を立てるようにエポパテを盛り付け。
後ろオーバーハング下面も角度がつきすぎているのでほぼ水平になるようにパテ盛り。

3:削り込み→サフを塗って確認を繰り返し成形。

4,5:前面パネルの形に切り抜いたプラ板を両面テープか少量の接着剤で固定してこれをガイドに筋彫り。
止めビスは穴を掘るだけですませました。(下は見えないので省略)

6:防盾は幅、高さとも小さいので砲の右側で分割、ピンクで色づけしたところをプラ板でボリュームアップしました。(砲塔センターに対し砲身センターは若干左にずれる)

7:砲基部も防盾と同幅になるように幅増し。
防水布の止め具を伸ばしランナーで再現してみました。
このタイプは後部にもう1個ベンチレーターが増設されるのですが、これが省略されているので前部ベンチレーターを「型想い」で型取りし、エポパテで複製しました。

8:砲塔の完成。
砲身が若干細いようなのでランナーをモーターツールにかませ、テーパー状に削って作り直しました。
吊り環はせっかくの別部品ですが強度を優先して真鍮線で作り変えています。


今回作り方で1番悩んだのが後部ベンチレーターに覆いかぶさるような形状の機銃架。
理想的には原型作ってヒートプレスなんでしょうが、そこまでやる根性ないし。
最初エポパテで試して失敗。
でプラ板貼り合わせからの削りだしで適当にそれっぽく作りました。

持つ場所を確保するために上面を細長くしておいて成形した後最後に切り離し。


これがまた難関の1つ、真ん中に十字の格子の入ったホーンガード。
ライトガードだけならエアフィックスのときのようにスチール缶で十分ですが今回は接着が不可欠、 ということでハンダ付けのきく真鍮板を使いました。

0.2mm厚の真鍮板を幅0.5mmの帯状に切ってエッチングソーで0.25mmの切り込みを入れる。
それを2本交差させてハンダ付け。
4本の腕のうち3本を約1mmの長さでカットして外側にU字型に曲げた帯を3点でハンダ付けします。
最初できるかどうか自信がなかったのですが、ステップごと慎重に進めることで意外とすんなりできました。
無理と思ってもとにかく手を動かすことは大事だなあと実感。

ちなみに車体への取り付けは普通にピンバイスで穴を開けて裏から瞬間、表はパテで成形という手順です。
もう絶対大丈夫、という位の強度になります。

ハンダ付けを敬遠される向きもあるかと思いますがちょっとしたコツがあるだけで難しいものではありません。
強度もさることながら接着時間が文字通り瞬間なので作業を中断することなくテンポよく進められるのが気分イイ。
食わず嫌いな方は1度トライしてみてはいかがでしょうか。

ホーン本体は妙に大きいのでプラ材で作り直しました。



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デフカバー(部品55)は形がイマイチだし合わせも良くないので頂点のところでぶった切って高さをつめ、裏をエポパテで補強してからいわゆる「シャープノーズ」形状を削りこみ。
車体との結合部も中途半端な表現なのでプラ板とパテで作り直しました。

スカートは無いほうが「らしい」のでフェンダー部分を残して切り取り、先端を薄く削りこみ。
取り付けステーはきれいに削り落として0.3プラ板の細切りで作り直しました。

砲身に合わせてトラベリングロックも左にずらしたのですがここは正直よく分りません。
実車写真で見ても微妙。
タミヤ1/35のキットでは(不明点があると模型屋に行って1/35キットのパーツやらインストやらをさんざん検分したあげく何も買わないで帰るという迷惑な客)トラベリングロックは車体センターになってますね。(ロックするときは砲塔をちょっと回転させるという解釈)
でもだからといって無条件に信用はできないし・・・
詳しい方ご教示ください!


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車体背面のピンクで色付けした帯状の段差なんですが・・・
後になって不要と判断し、削り落としてしまいました。
根拠としては実車写真でこんな段差見たことないのとインストの図でも描かれていないこと。
初期型M4と同じ形状で設計してしまって、そのミスを金型完成後に無理やり改修したために生じたものではないかと推測。
私もモノ作りに関わる仕事をしているのでこの辺の経緯はありありと想像できますな〜

エアクリーナー(部品37)の取り付けはインストの指示は90度向きが違ってますね、多分。


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自作したベンチレーターや機銃架が見えるカット
コマンダーズハッチは今回開状態にしたかったので裏側をちょっとだけ弄ってあります。あんまり似てないけど。
この位置で固定すると塗装中に折ってしまうのが目に見えているので真鍮線と真鍮パイプで可動するようにしてあります。
(実際何回も助かりました)


シャーマンという戦車は好きでも嫌いでもないのですが以前作ったエアフィックスのシャーマンは拙作のなかでもお気に入りの1両。
このフジミのシャーマンもえらく気に入った。
なぜかと考えたら車高が高くコロッとかわいいことや面の変化に富んでいること、ライトガード、吊り環といったディテールの見せ場が多いことなど非常に「ミニスケール映え」のする戦車だと気がつきました。
鋳造車体の旧ニットーM4A1も近いうちに成仏させたいなあ。

(2008,8)


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