痛快大滑降、乗鞍岳

(1963年5月)

乗鞍山頂 剣ヶ峰
乗鞍岳(剣ヶ峯)山頂に向かう 剣ヶ峰に集まった同宿のスキーヤー達

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春スキーのメッカ、乗鞍岳

5月16日(木) 新宿 23:35 →
5月17日(金) 6:25 島々 6:40 バス → 8:10 鈴蘭小屋 8:25 → 11:25 冷泉小屋 → 13:45 位ヶ原山荘
 スキー好きの仲間3人で乗鞍岳に行くことにした。乗鞍岳はスキーヤーの憧れの場所でもあった。位ヶ原山荘をベースに思う存分滑るという心躍る計画だった。
 5月16日の夜、新宿発の夜行列車に乗り、翌朝松本電鉄に乗り換え島々へ出た。鈴蘭行きのバスを拾い8時10分に鈴蘭小屋についた。広々とした高原の先に真っ白な乗鞍岳が頭を出していた。
 早速、鈴蘭小屋を出発。位ヶ原山荘まで約4時間の登りだ。すぐに鳥居尾根に取りつく。それほど急な登りではないが、シラビソやツガの樹林帯で眺望がきかない。途中に自衛隊道路の起点があった。どうして自衛隊がバス道路を作っているのか分からないが、すでに冷泉小屋まで完成しているようだ。なおも尾根道を登り続け、3ピッチで冷泉小屋に着いた。そこから急斜面を一登りするとパッと視界が開け、雪とハイマツの位ヶ原が広がっていた。剣ヶ峰から朝日岳、摩利支天岳と続くアルペン的な岩稜に囲まれた穏やかな斜面は絶好のスキーバーンだった。位ヶ原の末端にある位ヶ原山荘は木立に囲まれた気持のいい山小屋だった。
 小屋で荷物を解いて、午後は近くの斜面で足慣らしのスキーを行った。

痛快、頂上付近からの大滑降

5月18日(土) 位ヶ原山荘 8:00 → 9:00 肩の小屋 → 9:45 乗鞍岳(剣ヶ峰)頂上 9:15 → 11:00 朝日岳鞍部 → 11:10 権現池 → 11:50 肩の小屋 スキー練習 15:30 → 16:53 位ヶ原山荘
 8時に小屋を出発。広大な雪原をスキーを担いで登る。右側の摩利支天岳にコロナ観測所の銀色のドームが見える。1時間で室堂平に到着。肩ノ小屋の先に宇宙線観測所もある。こんな山の上で研究生活を送るのもいいなと思った。
 剣ヶ峰への稜線上は雪が消えていた。溶岩礫のザラザラした道をスキー靴を傷めないようにそっと歩く。剣ヶ峰とか摩利支天岳などというと、御岳を思い出す。いくつもの山頂があることや、火口湖が点在するところなどは似ているが、御岳のような荒々しさはない。のんびりとしていて優しい姿をしている。それが観光道路を山頂近くまで作らせてしまった原因だとすれば、乗鞍岳は不運な山だ。
 右下に権現池が見える。雪が溶け始めて、水面の一部が青い色を見せている。岩が積み重なった道になると頂上は間近だった。肩ノ小屋から45分で標高3026mの剣ヶ峰に着いた。コバルトブルーの空に白雲が漂い、眼下には岩と雪とハイマツに彩られた山裾が広がっていた。
 権現池の水の色に惹かれて、鞍部からスキーをつけて下りてみた。日本一高い山上湖はまだ半分以上白い雪に覆われていた。夏になったらさぞ神秘的な色になるだろう。
 午後は肩ノ小屋近くの雪渓で思い切りスキーを楽しんだ。まったく広大な斜面だ。調子に乗って滑るとどこまでも下りて行ってしまうから、登り直すのが大変だった。
 4時過ぎまで滑って切り上げることにした。山スキーのいいところは登った苦労が最後に報われることである。肩ノ小屋から位ヶ原山荘まで、締まったザラメ雪の大斜面を一気に滑り下りた。
畳平 剣ヶ峰と大日岳
畳平 剣ヶ峰と大日岳
眼下の権現池 稜線直下の大斜面
権現池を見下ろす 稜線直下から滑走可能な大斜面
権現池湖畔
権現池まで滑る

朝日岳登って、冷泉小屋まで滑る

5月19日(日) 位ヶ原山荘 7:15 → 8:55 朝日岳山頂 9:30 → 肩の小屋付近でスキー練習 → 11:30 位ヶ原山荘 12:20 → 13:00 冷泉小屋 → 16:00 鈴蘭小屋 バス → 5:50 島々
 
  朝日岳に登ってから、肩ノ小屋付近の斜面でスキーを楽しみ、昼前に位ヶ原山荘に戻った。手早く帰り支度をして、山荘を後にした。しぶとく冷泉小屋まで雪を拾って滑り、シーズン滑り納めのスキーをケースにしまった。

 乗鞍岳ではその後、冷泉小屋から畳平まで自動車道が開通し、従来から通じていた平湯峠から畳平までの道とつながってしまった。今やマイカーやバスが乗鞍岳に押し寄せる。乗鞍岳は都会の延長になってしまった。まだ自動車道に切り刻まれていない位ヶ原で遊ぶことができたのは幸せなことだった。

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