四国に渡って石鎚山、剣山
(1993年5月)
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石鎚山(弥山山頂より天狗岳を見る) |
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剣山山頂 |
修験道の山、石鎚山に登る
5月2日(日) 21:24 横浜駅で寝台特急「瀬戸」乗車
5月3日(月) → 7:14 坂出駅 7:21 いしづち3号 → 8:35 伊予西条駅 タクシー → 下谷 ロープウェイ → 山頂駅 → リフト → 10:05 リフト山頂駅 → 成就社 → 11:00 前社森 → 11:30 「一の鎖」手前 昼食 → 12:50 弥山頂上 白石小屋 → 13:20 天狗岳 → 13:40 弥山 13:45 → 15:40 成就社 → 16:00 ロープウェイ山頂駅 → 16:30 下谷 タクシー → 17:20 伊予西条駅 しおかぜ16号 → 18:15 多度津駅 → 18:30 ホテルトヨタ泊
大阪に赴任しているKさんから5月の連休に四国の山に行かないかという話があった。私は喜んで誘いに乗った。S君にも声を掛けたが今回は都合がつかず不参加となった。
ガイドブックを調べて計画を立てたがバスの情報が不十分なので、今回もタクシーを多用することになりそうだ。時刻表とにらめっこして何とか計画をまとめ初日に泊まる宿だけは予約しておいた。連休明けの6日に梅田支店のリニューアル式典があり出席することになっていたので、登山後にKさん宅に泊まらせてもらうことになった。そのためスーツ等をKさん宅に宅急便で送り預かってもらうことにした。
2日の夜、横浜駅で寝台特急「瀬戸」に乗った。熱海と静岡で駅のアナウンスを聞いたが、その後は岡山の手前までぐっすり寝ていた。列車は夜が明けたばかりの緑の丘陵地帯を走っていた。児島から瀬戸大橋を渡り、定刻に坂出に着いた。ホームの反対側に待っていた「いしづち3号」に乗り換える。しゃれた列車だったが指定席の半分位しか埋まっていなかった。列車は湖のように波のない瀬戸内海沿いを走り、1時間ちょっとで伊予西条に着いた。改札口でKさんが待っていた。駅前でタクシーに乗り石鎚山登山口に向かった。行く手の山にはどんよりと雲が掛かっていた。黒瀬ダムの横を通って小1時間で下谷に着いた。すぐ横に石鎚登山ロープウェイの乗場があった。若い頃は自分の足で歩いてこそ登山だと気張っていたものだが、最近は乗れるものなら何でも乗ってしまう。行者か遍路か白装束の人が多い。ロープウェイは急勾配をぐんぐん登ってゆく。山麓駅より標高1280Mまで運んでくれるのだから有り難い。山頂駅で降りるとさらにリフトがあったのでこちらにも乗ってしまった。緩斜面の短いリフトだった。リフトを降りて10分も歩くと「中宮 成就社」に出た。なかなか立派な神社だ。石鎚山がよく見える所に建てられている。石鎚山自体がご神体だそうだからここで拝んでも御利益があるのだろう。付近には旅館も並んでいた。左奥の神門を抜けると1Kmほど下り、鞍部に遥拝所があった。樹間から石鎚山が見える。頂上まで登れない人はここで拝礼して引き返すようだ。ここから八丁坂の登りとなる。ブナやミズナラの気持よい自然林である。修験道の行者が腰に付けた鈴をチリンチリン鳴らしながら列になって登っている。白装束で坊主頭に直径10センチ位の平べったい冠を紐で縛り付けている。新緑の中に赤いツツジが鮮やかだ。鶯のさえずりも聞こえる。傾斜も急になってきて久し振りの登山に足が重く、何度も腕時計を見て後何分歩けば休憩時間になるか確かめる。木の板を渡してしっかりした階段が作られているが歩幅が制約されるので歩きにくい。前社森の手前の「試しの鎖」で休憩する。肝試しをするほど若くはないので「試しの鎖」はパスして普通の道を行く。売店が現れ、尾根を右に回り加減に登ってゆくと幅の広い笹原に出て、石鎚山が正面に見えてきた。夜明峠を過ぎると迫力のある石鎚山北東面の壁に圧倒される。ほぼ垂直に見える鎖場が近付いてきた。
鎖場の手前で昼食にした。コンソメスープにクロワッサン、ハム、トマト、セロリ、キュウリと野菜たっぷりである。食事をしながら鎖場を観察。かなり手強そうだ。荷物の一部をデポして「一の鎖」に取り付く。長さ30センチほどのかなり太い鉄棒の両端が輪になっていて、それを知恵の輪を嵌めるように何十個と繋いで鎖にしたものが垂れ下がっている。ご丁寧に鎖は2つ並んで取り付けられている。頑丈な鎖なので鎖を頼りに強引に登ってゆく。「一の鎖」を攀じ登ると心臓がばくばくした。無理をすることもないと「二の鎖」、「三の鎖」は遠慮して鎖場の右側斜面をつづら折りに登る道を行く。沢筋には雪も少し残っていた。悪場には鉄梯子などがあり良く整備された道だった。急斜面を登り切り稜線に飛び出すと強い風が吹いていた。左に山小屋があり、弥山山頂に着いた。大勢の人が休んでいる。曇りがちの空で遠くはぼんやりしているが西条市の入り江と瀬戸内の海が見えた。二ノ森山への稜線は新緑にはまだ早く茶色の穏やかな山肌が続いている。すぐ隣りに槍ヶ岳の山頂部を左に傾けたような異形の天狗岳が向かい合っていた。弥山からはナイフリッジで繋がっている。谷川岳のオキノ耳とトマノ耳の間より怖い感じがする。しかしここまで来たら行くしかない。出だしに手掛かりもなく谷側に傾いた岩の上を歩かなければ所があってちょっと緊張したが、後は見かけほどではなかった。もっとも女性が難儀していて大分待たされたが、20分程で西日本の最高峰である標高1982Mの天狗岳山頂に立った。2〜3人も立てないような狭い山頂でKさんと交互に写真を撮った。
帰りは鎖場を通らず下山した。アップダウンがあって結構時間が掛かった。成就社への最後の登りが偉く長く感じられた。後は山やの意地でリフトは使わず歩いて下りた。ロープウェイが動き出すと、眼下の急斜面に沢の水が白い筋になって迸っていた。タクシーで伊予西條に出て、特急で多度津に向かった。
多度津の駅前は人通りもなく静かだった。駅前のホテルトヨタにチェックイン。フロントで薦められた寿司屋(福寿司)は700Mも離れていたが、地元の客で混んでいた。ネタは良かったが料金は都会並みだった。岩のりの天ぷら、サザエの壺焼きは美味かった。
ホテルはバス、トイレが狭かったが宿泊料4000円は割安だった。
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石鎚山の鎖場を見上げる |
天狗岳 |
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天狗岳山頂にてKさん |
剣山山頂にて |
剣山は名前に似合わず優しく楽しい山
5月4日(火) 6:48 多度津駅 → 7:01 琴平駅 7:03 → 7:49 阿波池田駅 7:53 → 8:26 貞光駅 → タクシー 10:05 見ノ越 → リフト 西島駅 10:45 登高開始 → 11:30 剣山山頂 12:30 → 13:30 見ノ越 14:10 タクシー → 15:30 貞光駅 16:09 → 17:19 徳島駅 → 17:45 パレス吉野
始発のワンマンカーで多度津を出発。新緑の山野を池田に向かう。峠の長いトンネルを潜って阿波国へ。山の裾をぐるっと回って吉野川を渡ると池田である。池田は山間に開けた大きな町だった。10年程前に高校野球の春夏甲子園大会で超攻撃的な「やまびこ打線」で有名になった池田高校の所在地である。阿波池田駅で徳島線に乗り換え、30分余りで小綺麗な駅舎の貞光駅に着いた。駅前で客待ちをしていたタクシー運転手に剣山登山口までの料金を聞くと9000円というので、それならと乗り込んだ。貞光川に沿って1年前に国道になったという道路を走る。二車線の所もあれば1車線の狭い所もある。延々2時間弱で見ノ越に着いた。運転手は帰りも迎えにくるという。
見ノ越は予想に反して土産物屋などが並ぶ立派な観光地だった。マイカーの普及がこんな山奥まで賑やかにしている。ここから登山道が始まっているがリフトがあったので利用することにした。約15分で330M高い標高1750Mの西島に着いた。
駅の傍の空き地で遅い朝食を取る。レトルトの梅干しカユを食べてみる。まずまずの味だった。見ノ越から夫婦池辺りのなだらかな丘が見える。
ここから登り始めたが頂上は近い。山頂にある雲海荘が間近に見える。尾根を通るルートで歩き始める。私は剣山という名から石鎚山の天狗岳のような尖った山を想像していたので意外の感に打たれたが、剣というのは安徳天皇の御剣を山頂に埋めたという故事に由来することが分かり得心した。広々とした丘をハイキングしているような気分である。1ピッチで標高1955Mの剣山山頂に到達した。頂上は広大な笹原で家族連れが大勢休んでいた。前方に草原と栂の緑が美しい次郎笈が連なっている。東方には一ノ森への縦走路が続いている。西に遠く石鎚山方面も見えているはずだが特定はできなかった。幾重にも重なる山並みを見ていると四国はまことに山の国であると思った。
山頂の東端で腰を下ろしモチいりラーメンを作って食べた。ゆったりと満ち足りた時間だった。
帰りは大剣神社への急坂を降り、日本百名水の湧く祠で「御神水」を味見をした。後は山腹を巻く歩きやすい道で、最後はリフトを使わず、西島から人のいない静かな道を見ノ越まで下った。神社の横に出て長い階段を降りた所で迎えのタクシーを待った。付近にうだつのある家が並んでいてびっくりした。
時間通りに迎えに来てくれたタクシーに乗り込み、貞光川の渓谷沿いに道路をひた走る。藤の花が咲いている樹林の間から美しい渓谷が見える。運転手の話ではかずら橋や大歩危、小歩危で有名な祖谷渓も剣山を源流として吉野川に流れているということだった。同じ剣山を源流とした川だから貞光川の渓谷が美しいのも当然だ。
貞光駅から列車で徳島に向かった。車窓から吉野川が始終見え隠れしていた。次第に川幅が広がってきて悠々たる大河になった。四国にこれほどの大きな川があるのかと驚いた。旅は勉強になる。
徳島駅に降りると駅前は大きなビルで囲まれていた。観光案内所で紹介してもらったパレス吉野はすぐ近くにあった。立派な風呂でゆっくり汗を流した。
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剣山山頂標識 |
剣山山頂にてKさん |
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剣山山頂展望(一ノ森) |
剣山山頂展望(次郎笈) |
鳴門の渦潮を見て高速艇で大阪に
5月5日(水) 9:00 徳島駅 バス → 鳴門観光港より観潮船遊覧 → 11:45 小鳴門橋 12:45 高速船 → 14:35 大阪天保山 → 16:00 Kさん宅
鳴門の渦潮は船で見に行った。さして大きくない観潮船が渦に巻き込まれないか心配したが、操船が上手いのかくるくる回ることはなかった。
双胴の高速艇は波静かな瀬戸の海を滑るように走った。左手に淡路島がいつまでも続いた。海岸からすぐに小高い山となり平らな所は見えない。淡路と神戸を結ぶ明石海峡大橋の橋脚が2本、高く聳えていた。完成すれば世界最長の吊橋になるそうだ。
天保山から地下鉄、阪急に乗ってKさん宅に案内され、一晩ご厄介になった。楽しい山行であった。
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