コスモスの咲く麓から武尊山へ
(1994年9月)
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武尊山山頂 |
目一杯歩いてコスモスに慰められる
9月10日(土) 自宅 5:10 → 8:40 武尊牧場駐車場 → 9:10 リフト終点 → 10:08 武尊避難小屋 → 11:17 縦走路 → 11:45 武尊山山頂(2158.3m) 12:15 → 14:05 リフト乗場 → 14:35 駐車場 14:55 → 19:50 自宅
4時40分 起床。妻が珍しく握り飯と果物をタッパーに詰めてくれた。今回の目標は武尊山である。上越にスキーに行くとき何度も見てきた山だ。東名、環八と早朝なので渋滞もなく1時間で関越自動車道にはいった。上里SAでシメジワカメうどんを食べる。
沼田より国道120号線にはいる。この道を「日本ロマンチック街道」と称しているが、尾瀬へ行く道なのでロマンチックというのだろうか。吹割の滝はいつもの通り通過。ケイトウ、コスモスが道端に咲いている。武尊口より静かなよい道を武尊牧場に向かう。前後に車はいない。やがて大駐車場に到着した。数台の車が駐まっている。冬には武尊牧場スキー場となって賑わうのだろう。素早く支度をして出発する。リフト乗場まで少し歩き、往復のリフト券を購入し、第5リフトから第6リフトに乗り継ぎ、そこから歩き始めた。2組の中年夫婦が前を歩いていたがすぐに追い越し、白樺の高原を過ぎ、やがてブナの樹林帯となる。明るくて気持のよい山道だ。やがて大きなダケカンバやコメツガも混じってくる。1時間も登ると赤いトンガリ屋根の避難小屋があった。その先に田代湿原への分岐があり、そこで休憩した。追い越してきた中年と高年の2組が止まらず先に歩いて行った。休憩もしないで歩き続けているようでちょっとびっくりした。2ピッチ目を歩き出すとすぐにまた2組を追い越し、その先で3人組と親子3人組を抜いた。今日は結構登山者がいるようだ。追い越す時にあまり荒い呼吸をしているのもみっともないので普通の呼吸ですっと追い抜き、少し離れてからハアハアと息をつく。漸く樹林帯を抜け、行く手に山頂稜線が迫ってきた。斜度の増した壁に取り付く。鎖場の岩溝をしゃにむに登る。湿った岩の泥が手の平に付く。100mほど壁を登るとなだらかな湿原状の笹原になった。山頂近くはガスがかかっている。中年女性3人組を追い越し、しばらく行くと中ノ岳南肩で縦走路に飛び出した。ここから右手の武尊山最高峰沖武尊に向かう。左斜面の熊笹を刈り払った歩きにくい道を下ってゆくと、二重山稜のような船底状の地帯になり、鳳の池があった。鞍部から沖武尊への登りとなり懸崖の上に日本武尊の銅像が建っていた。右眼が白と金色に光っているが、左眼は塗料が剥げ落ちたようだ。右眼だけが不気味に虚空を睨んでいた。神話に出てくる神様の出立ちではなく修行僧のような格好である。まあ日本古来の宗教は神仏混交のようであるからどちらでもいいのだろう。
最後は少し急になり登り切れば武尊山(沖武尊)山頂だった。20〜30畳ほどの小石を敷き詰めたような更地に三角点や石の台座の山名表示盤があった。先客は8名だった。腰を下ろして握り飯を食べていると次から次に20名ほどが到着した。川場谷から強い風に乗って霧が吹き上げてくる。時々薄日が差すが長くは続かない。一瞬霧が切れ、緑の絨毯の中に細い縦走路が見えた。宝台樹スキー場が薄い霧のベールを透して見えた。それ以上視界が良くなる見込みもないので30分程で山頂を後にした。道々写真を撮りながら下る。鎖場を難なく通過して、久し振りに下りを若い時のように飛ばした。先月越後駒を登ったばかりで、毎週トレーニングも続けていたので膝も痛くならなかった。途中、見晴らしのいい所でベンチがあったので腰を下ろた。至仏山が間近に見えた。越後駒ヶ岳では燧岳の右に見えた至仏山が燧の左に見えるのが新鮮だった。右手に奧白根山も見えた。
最後のピッチは避難小屋までが意外に長く感じられた。小さな小屋の外にザックがあったので、通りすがりにちらっと中を見ると、可愛い女性が床に座ってザックから荷物を取り出していた。傍らに男性がいた。2人で夜を過ごすのは楽しいだろうなと余計な事を考えながら駆け足で通り過ぎる。登り返しが3箇所ほどあり、下った慣性を利用してハアハアいいながら駆け上がった。麓に近くなると青空になり、木の葉の間から真夏の陽射しが差してくる。漸くキャンプ場の草原に出た。牧場には大勢の観光客が屯していた。
スキーシーズンの半分位のスピードで動くリフトに乗って、高原の涼風を受けながら牧場の中をゆっくり下った。右手に見える武尊山だけが黒い雲に覆われていた。左手の奥白根山と皇海山はよく見えた。第6リフトの降り場近くにはコスモス、鳳仙花、ひな菊が咲き乱れていた。既に秋の気配だった。
駐車場で手早く帰り支度をして、すぐ車を出した。しばらくすると軽い頭痛に見舞われた。関越自動車道は流れに乗って120Km位で飛ばした。高坂SAでトイレ休憩。眠気防止にコーヒーとグロンサンを飲む。練馬の出口が渋滞しているようなので所沢ICで下りて一般道を走った。初めは順調だったが府中街道がずっと渋滞していて、頭痛と腹具合も悪くなり、渋滞地獄に苦しんだ。何とか7時50分に家に辿り着いたが、しばらく食事をする気にもならなかった。20分ほど横になり、風呂にはいって汗を流しているうちに漸く元気になってきた。それから夕食を取り、ビールも飲んで、ハードな一日を終えた。年甲斐もなく頑張り過ぎたようだ。単独行ではつい先に先にと気持が走ってしまう。年なりにもう少しゆったりと歩いた方がいいなと反省した。
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頂上は霧の中 |
日本武尊像 |
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白樺の道 |
秋の花繚乱 |
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