登山口までが難儀な皇海山
(2000年9月)
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皇海山山頂にて |
鞍部から鋸山を見上げる |
群馬県側から怖い林道で登山口へ
9月22日(金) 自宅 5:00 → 10:00 皇海橋駐車場 → 11:40 不動沢のコル → 12:25 皇海山 → 13:10 不動沢のコル → 14:10 皇海橋駐車場 → 15:40 吹割温泉センター → 21:00 自宅
関東の山でまだ取り残されていた皇海山に登ることにした。皇海山の昔からの登山は栃木県側から東武線、足尾線を乗り継いでバスで銀山平まではいり、2時間歩いて庚申山荘に泊まり、翌日4時間かけて皇海山に登り、戻るという1泊2日の健脚向きコースだった。交通の便も悪く気軽に行ける山ではなかった。ところが最近、群馬県側から栗原川林道ができて日帰りで皇海山に登れるようになった。平ヶ岳の中ノ岐コースのように正統派登山者から見れば邪道といわれそうだが日帰りができる魅力には抗しがたかった。妻を誘ったが、崖っぷちの長い林道を走らなければならないことや、沢沿いのゲリラ道であることは話さなかった。
早朝自宅を出て何度か通った尾瀬への道を辿り、吹割の滝の手前の追貝で側道にはいり、栗原川林道の入口に着いた。入口に「がけ崩れ 通行止め」の看板があった。妻は「通行止めだから止めよう」といった。私は「看板は脇にどけられているので通行止めではない」といって構わず先に進んだ。1車線の砂利道は時速20kmも出せない。30分も乗っていると「もう来なければよかった」と妻が愚痴りだした。私も内心は不安だった。林道は栗原川より遥か上の崖にへばりつくように付けられている。ラジオでシドニーオリンピックの陸上競技の中継をやっていた。林道にはいって20kmほどになったとき、道を左に回ると、数台の車が駐まっていた。その先にしっかりとした橋がかかっている。手前にきれいなトイレもあった。皇海山の登山口だった。
登山届けを記入して、さっそく出発。皇海橋を渡ると、まだ新しい案内板があった。栗原川林道から枝道が分かれている。二曲がりして、3つ目の角で登山道の入口があった。しっかりした導標があるので見落とすことはない。左岸の樹林の中にまだ十分固まってはいないが明瞭な踏跡が続いていた。しばらく歩くと、沢に下り、飛び石伝いに右岸に渡る。雨が降った後はちょっと様子が違ってくるだろう。その後は右岸の広葉樹林帯の中に道が付けられている。真新しい導標が付けられていて、登山道として整備されている。
1ピッチ経過すると、「登山口1.8km、皇海山1.8km」の導標があった。その後は沢沿いの道となった。岩に描かれた赤ペンキや木の枝に付けられた赤テープを追っていけば、ベテランでなくても十分道を辿れるだろう。何度か沢を渡り返し、沢の分かれるところは右へ右へと登ってゆく。次第に沢は細くなり、傾斜がきつくなってきた。ほとんど水が涸れるあたりで、右側の斜面に取り付く。道はしっかりと続いている。見上げる樹間に青空が見えた。賑やかに女性の5人連れが下りてきた。ほどなくコルに出た。右手に鋸山が名前の如く切り立った尾根を見せていた。
一休みして頂上に向かう。出だしは狭い木の間を縫って登る。いかにも奥日光らしい、しっとりとした樹林帯の道が続く。木が枯れて明るくなった草地があった。酸性雨による立ち枯れなのだろうか。
「あと700m」の導標があってからが結構きつかった。陽が陰り薄暗くなった針葉樹林帯の急斜面を枝を掻き分けるようにして登った。「あと10分」の看板があり、黄と白のまだらロープに導かれて進むと、青銅のモニュメントが立つ高みに出た。三角点もあり、ここが頂上かと思ったが標識がないのでさらに進むと、その先に皇海山の山名標柱があった。三角点と周辺の山の案内盤まであった。山頂は木立に囲まれていて僅かに北方に隙間があった。木の間から白根山が見えた。燧岳の双耳峰も見えた。至仏山も見えたが平ヶ岳は低い雲に隠れていた。山頂が開けていたらこの山はもっと素晴らしいだろう。光岳と同じで、その点惜しい山だ。
先着の2名の若者が腰を上げるところだった。私たちは腰を下ろして握り飯を食べた。雲が広がってきたので長居せずに頂上を後にした。妻を先頭にしてノンストップで駐車場まで下りた。
車に乗って長い林道を戻ったが来るときのような緊張感はなかった。吹割温泉に寄って汗を流し、さっぱりとして帰途に就いた。ラジオで柔道100kg超級の決勝で篠原がドイエに不可解な判定で負けたと実況放送していた。酷い話だ。
妻は初めての沢を登るコースでちょっと緊張したようだが、雨さえ降っていなければ概ね安全なコースといえよう。アプローチの林道が長く、車でしかいけないのが玉に瑕であるが、コース整備が進みちゃんとした登山道になりつつある。これにより庚申山荘経由のコースが寂れるとしたら残念なことだが。
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皇海山山頂展望 |
皇海山山頂展望 |
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