藤の籠  

















 何がいけなかったのであろう・・・・・・・・・・
 女は空を眺めながら深くため息をつく。
 太陽は今を盛りとばかりに中天にさしかかり、全てを照らし出す。だが、その明かりは女にとっては全てを晒し出す拷問のように感じられ、そっと部屋の奥へと身を潜める。
 けして、日の光が当たらない奥へと。
「わたくしは、多くを望んだ事はただの一度も無かったのに・・・・・・・・・・・・・」
 涙が溢れて頬を伝う。
 カサカサに乾いた唇から、こぼれ落ちる声は、酷く掠れ果てており、微かな声では何を言っているのかを聞き取る事さえ困難だった。だが、その声を聞く者はこの部屋には誰もいない。


「わたくしは、ただ幸せになりたかった・・・・・・・・・・」


 過去形で呟かれた言葉。
 女が思い描いたのは、ただ一つの幸せだった。
 贅沢を望んだ事は何一つない。
 ただ、女として幸せになりたかっただけなのに・・・・・・・・・・・・・
「蝶子様・・・・・・・・・少納言様がお目見えになりました」
 控えめな女房の声に、蝶子と呼ばれた女は頷き返す事で了承の意を伝える。
 微かに首の動きを見てとると、女房は室内の準備を整えていく。
 それから、そう間をおくことなく蝶子にとって兄である少納言が姿を現す。線の細い、少しばかり神経質な雰囲気を持った男からは、芥子の香りが漂ってくる。
「更衣さまには、ご機嫌麗しく存じます」
「兄上、屋敷に戻ってきたのですからわたくしのことは、ただの妹として扱ってくださいまし」
 蝶子の言葉に、兄は軽く首を振る。
「更衣様は主上の大切な御寵姫。少納言ごときの妹として扱うわけには参りませぬ」
 頑なな言葉に、蝶子は深くため息をつきそれ以上何も言う事は無かった。
 いや、言えなかった。
 父同様に己の立場に不満を持ち、何としてでも這い上がろうとしている兄にとっても、自分は一つのコマでしかないのだ。人として自分を見ていない者に何を言っても無駄だと言う事は、十数年も前から痛いほど判っている。
 いったい、あの時からどれほど己の立場が変わったのであろうか・・・・・・・・・
 世間の時は確実に流れているというのに、自分の上だけに・・・いや、この屋敷に流れる時だけが何時までも停滞しているようにさえ感じる。
 痛いほどの沈黙が二人の間に横たわる。呼吸をする事さえ憚るような、緊張感に女房達も声を挟む余裕もない。
「本日は、更衣様には是非ともこれをご覧になって頂きたいと思い、お持ち致しました」
 少納言がパタンと扇を畳んで合図を送ると、背後に控えていた女房が箱を抱えて室内に入ってくる。
 それを恭しく、蝶子の手前に控えている女房に差し出すと、女房はそれを受け取り蝶子の目の前にそれを置く。
「兄上・・・また、鬘でございますか?」
 黒々とした豊かな髪が、箱の中で波打つように治まっていた。
 これで幾度目だろうか。兄は、良い鬘が手に入ったと言っては、それを持ってくるが。蝶子は受け取った事はなかった。
 確かに見事な黒髪だが、それはしょせん他人の髪であり、けして自分の髪になるわけではない。そんなものを付けたからといって何が変わるというのだろうか、
「豊かでとても綺麗な黒髪が手に入ったので、更衣様のお気に召せばと思いこうして持って参りました。
 これを付けて、内裏に戻られませぬか? 更衣様にさぞかしお似合いになるかと思いますよ。
 それとも、上等の染め粉を用意致しましょうか。
 里に戻って早一月。そろそろ、内裏に戻られても良い頃合いではないでしょうか?
 主上もさぞ、淋しい思いをなさっていらっしゃると存じますぞ」
 にこやかに・・・その笑顔はまるで、面のように薄っぺらいものだったが、少納言は笑みを絶やさずその鬘を更衣に勧めるが、彼女はそれを手に取ることさえなかった。
「兄上・・・わたくしは、内裏を辞して参ったのです。
 もう、内裏には・・・主上の元へは戻れませぬ」
 蝶子の言葉に、少納言は眉をつり上げると、パンっと扇を激しく掌に打ち付ける。
「更衣様。世迷い事はもうされるものでは有りませぬ。
 今の貴方様は、少々お気持ちが沈んでおられるだけです。いずれ、佳き日が参りましたら、主上の元に戻って頂きますぞ!
 そして、何としても藤壺や梨壺の女御より皇子を授からねばなりませぬ!
 貴方がこうして、内裏を辞している間にも主上は女御を呼び寄せているという話。いいですか、くれぐれも主上の寵をなくすような事はあってはならぬのです。
 我が一門の行く末は、更衣様全て貴方様に掛かっておられるのですぞ。御子を授かり、ゆくゆくは国母になって頂かなくては困るのです。
 よいですな。
 その髪が気に入らぬのでしたら、もっとより珍しく美しい髪をご用意致しましょう。
 間違っても、そのみすぼらしい姿で、内裏に戻ろうとは思われますなよ」
「少納言様!!」
 少納言の捨てぜりふをさすがに聞き捨てる事が出来ず、控えていた女房が咎めるように声を荒げるが、少納言は鼻で笑い飛ばすと足音も荒く部屋を出て行く。
「蝶子様の兄上様でも今の言葉は酷すぎますわ」
 憤慨したように声を荒げて非難する、女房に対し蝶子は弱々しい笑みを浮かべる。
「兄上のおっしゃる事は本当の事ですもの。致し方ないわ。
 このような髪となってしまっては、みすぼらしい以外言いようがないでしょう?」
 老婆のような真っ白な髪は、パサパサでどれほど櫛で梳いても艶を取り戻す事はなかった。切れ切れの髪が背中を流れ落ちてはいるものの、長さもけして充分とは言い難い。
 とてもではないが、貴族の姫の髪とは言い難い有様だった。
 昔は・・・そう、昔は黒々としたとても美しい髪を持っていたのだが、ある日を境に老婆のように慣れ果ててしまった髪・・・
 時と共に失せゆく美しさを、一夜にして失ってしまったあの日に、きっと全ては終わっていたのだ・・・・・・・・・
「わたくしが主上の寵を賜ったことなどないというのに・・・父上も、兄上もどうしてそれを判って下さらないのかしら・・・・・? 例え、情けを賜りお子を授かったとて国母になどなれるはずもないというのに」
 自分に縋るよりも、他の妹姫に願いを託す方が確実だろう。
 でなければ、幼き姫達に将来を託した方がまだ、堅実だろうというのに。
 亡き父も、そして兄も妄執に取り憑かれたように自分に拘るのは何故だろうか。
「ですが、蝶子さま、まだどなたにも帝の皇子は誕生されてないのですもの。
 諦めるのはお早いのでは・・・・?
 蝶子様はとても美しい方ですわ。その美しさにさすがの主上も圧倒されてしまっているのではないでしょうか?」
 控えめながらの女房の発言だが、蝶子は今にも消えてしまい壮なほど儚い笑みを浮かべて、首を振るだけだった。
 もう、自分には何も望めない事を知っていたから。
 そして、情け以外自分には何も剥けられない事も。あの主上の心は自分の上ではなく藤壺女御の元にあるのだから。
 内裏に上がった以上、全く願わなかったわけではない。それでも、現実は予想出来てはいた。
 けして、父や兄たちの思い通りにはならない事など。
「兄上に、伝言をお願いして宜しいかしら?
 もしも・・・・・・・もしも、このわたくしを哀れんと思って下さっているのでしたら、世にも美しい髪が欲しいと・・・蝶子がそう呟いていたと」
 譫言のような蝶子の呟きに、女房は笑みを浮かべて頷き返すと、少納言の後を追うように部屋を出て行く。







「だれか、わたくしを藤の籠の中から解き放って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」























「殿、榊殿がお見えになられました。どちらにお通し致しましょう?」
 簣子から聞こえてきた声に鳴瀧は視線を上げる。格子の影から伺うように、多恵が顔を覗かせて鳴瀧の変事を待っていた。
 鳴瀧は茵(しとね)の上に座り、脇息に凭れながら書物に目を通しており、普段ならばこのまま榊を案内するところなのだが、その背後にある几帳の影からは麻衣の眠る姿が見える。具合が悪く伏せっている麻衣が居るところへ、果たして榊を呼んで良いものなのか迷ってしまう。
 だが、鳴瀧は特に気にかけては居ないのか、いつものように呼ぶように言いつける。
 多恵は、麻衣の存在が気になりつつも、主の言葉に従い下がり、時間をおくことなく榊を案内してきた。
「お方様は今だ伏せっておられるようですが・・・」
 庇の手前に腰を下ろした榊は開口一番に鳴瀧に問いかける。
 彼の位置からも几帳の後ろで眠っている麻衣の姿が見えたからだろう。だが、鳴瀧は特に気にする事もなく、座る場所を庇の近くに変えると、軽く手を叩く。
 特に何かを言葉にしたわけではないが、音もなく几帳が動かされ、榊の視界から完全に麻衣の姿は見えなくなった。おそらく式神が几帳を動かしたのだろう。
 とはいえ、音まで遮断されたわけではないのだから、話し声は聞こえるだろうが、それは全く構わないようである。
 その事を悟った榊は意識を切り替え、視線を完全に鳴瀧へと戻す。
「藤壺殿には箝口令がすぐさま敷かれましたので、鬼が出た事は委細他には漏れておりませんでした。鬼が現れた事を知っていらっしゃるのは、主上と女御様。それから女御様お付きの女房達のみとなっております。昨夜は主上が女御様の元へ渡られたので、場所が藤壺殿と言う事も幸いしたのでしょう。これが、清涼殿でしたら箝口令は間に合わなかったかもしれません。
 現れたのは戌の三刻を過ぎた辺りでしょうか。主上が女御様の琵琶の音を聞かれている時の事だったそうです。
 音もなくどこからか「鬼」が現れ、「やんごとなき方はいないか」と女房に声をかけたそうです。女房が気丈にもここにはいないと何度か言い張ると、「鬼」は空気にかき消えるかのように姿を消したとの事でした。
 結界の方ですが、触れられた様子もなく、綻びも見受けられませんでしたので、私は何も手を加えてはおりません。ただ、少しばかり障気が簣子から階にかけて漂っておりましたので、清めて起きました。女御様主上に至っては特に障りもなく、気分を害されている様子も有りませんでしたが、鬼の対応に当たられた女房が一人、障気に当てられておりましたので、別室にて障気払いと、幾人かの方が気を病まれましたので護符を渡したのが、本日私が内裏で行ったことになります」
「ご苦労。鬼の気配は?」
 目を閉じながら報告を聞いていた鳴瀧は、簡単に労いの言葉をかけると、直にその気配に触れた榊に反応を問いかける。
「鬼としての確定がまだ出来ていないかと。
 内裏から使いが来て私が、到着するまでに掛かった時間はおよそ四半刻。さらに多く見積もっても半刻はかかっていないはずですが、残っていた気配は酷く薄かったです。
 その事を考えると存在がまだ確定してないかと思われます。死んでから間もないか、生霊となって間もないかどちらにしろ、鳴瀧殿の結界に気が付く事もなく、その場よりまったく動かなかった点を考えると、力が今だ弱い存在で間違いないかと」
「例の件との繋がりは?」
 鳴瀧の言葉を榊は思いにもよらなかったのだろう。少しばかり驚いたような表情をするが、すぐに元に戻る。
「例の件というと、最近貴族の屋敷に仕えている女房達が、獣に襲われているという件ですか?」
「そうだ」
「藤壺の女房達の話では、現れたのは女の鬼が一人ということでした。獣などの類は見かけられていないそうです」
 都内には怨霊が跋扈しており、それ以外にも律令で禁止されているにもかかわらず、呪いを相手にかけ失脚を望んだり、命を奪ったりするものが数多おり、一概に同じ時期に起きているとは言え結びつける事は難しい事だった。
 まして、貴族の屋敷に現れているのは怨霊ではなく獣だ。
 野生のモノか、または人に飼われてけしかけられているのか不明だが、そちらはもっぱら検非違使(ケピイシ)達が織っているはずであり、陰陽師である鳴瀧は関わっては居なかった。
「榊の言うとおりだ。我にも獣の匂いは感じられなかったぞ」
 榊の背後にいつの間にか座り込んでいた夏初月だが、その無表情な顔にも僅かにいぶしかしむような表情を浮かべていた。
「鳴瀧殿、何か気になる点でも?」
「いや、何となくだ」
 何となく、あの時御簾を巻き上げて部屋を突き抜けた風に、獣特有の生臭い臭気を感じたのだが、気のせいだったのだろうか。
「朧月」
 鳴瀧が短く名を呼ぶと、夏初月の隣に大きな犬の姿が現れる。闇のように真っ黒な毛並みに、背筋に一本の槍の如く銀の毛が生えており、その体躯は子供よりも大きなものだ。だが、不思議と獣に対する恐怖心を抱かすことはなかった。それは、水底のように澄み切った深い碧の瞳が理性を秘めているからかもしれない。
「我にも人の匂いしか感じられなかった」
 空気を震わせて犬の姿をした式神が主の問いに答える。
 獣姿故、言葉を話す機能は人と同じように持ってはいないが、式神ゆえ意志を介す事は難しい事ではなかった。いかなる方を取っているのかは判らないが、朧月は空気を震わせる事によって『声』を発している。
「生者の臭いが濃く残っていた。アレは人だ」
 きっぱりと言い切った朧月に鳴瀧はしばらく思案すると、視線を榊へと戻す。
「仮眠を取ったら、貴族の屋敷に現れている獣について少し調べて欲しい」
「それは構いませんが、女御様の方はもうよろしいのですか?」
「夏初月を付けておく。それで押さえが聞かないようならば僕が向かう」
 式神で押さえられないような相手では、榊も手の打ちようがない。
 陰陽生としては榊も申し分ないが、鳴瀧には遠く及ばない事は彼も分かり切っていた。
「朧月は榊の補助を」
 主の指示に朧月は頷き返す事で肯定すると、現れた時同様音もなく姿を消す。
 朧月は基本的に姿を隠しており、滅多な事ではその姿を人前には現さない。ただ、時折麻衣に頼まれて枕になっている事はしばしばあるのだが。
「それでは、私も失礼致します」
 榊がその場を辞するのと同時に夏初月も空気にかき消えるように姿を消す。
 宮中に戻ったのだろう。
 再び沈黙が辺りに漂う。
 麻衣が起きているか眠っているかで、屋敷の中の喧噪が嘘のようになくなるものだ。
 几帳の影に回り、薄闇の中頬を僅かに赤く染めて眠りについている麻衣の傍に腰を下ろす。少しばかり呼吸も乱れているところを見ると、熱がまた上がってきたのだろうか。白い手を伸ばしてそっと額に触れると、普段より高い熱が伝わってくる。
「秋初、氷室へ行って氷を」
 曾祖父から受け継いだ物の中に式神だけではなく、一年中氷をたたえている氷室もあった。人の足で向かえば何日もかかる行程を、式神は半時も立たずに往復出来る。
「ついでに、富士の清水も汲んで参ります」
 声だけが聞こえ、間近にあった気配がふっと遠のく。
「菊月」
 次に、別の名を持つ式神を呼ぶ。
 再び、音もなく現れたのは童女姿の式神。
「柑子や梨・・・山に行けばなにかしらの果実があるだろう。あと、蜜の用意も。丸薬を水で溶いて蜜で薄めておくように」
 ここ数日すっかりと寝付いてしまっているため、極端に食欲のなくなってしまっている麻衣のために、鳴瀧はいくつか思いついた事を菊月に命じる。
 市の時間はすでに終わっており、今から行ったとしても良い果実はないだろう。ならば、山に直に行き手に入れてきた方が安く、またうまみのしっかりとしたモノが取れる事を鳴瀧は知っていた。
 蜜は高価な代物だが、太政大臣と帝の信頼を得ている鳴瀧の屋敷には、俗に言う高級なモノが溢れるほどあった。また、麻衣が伏せっている事を聞きつけた、緑子や涼子が何かと滋養のある物を送ってきたため、鳴瀧や麻衣の身分では口にする事の出来ない、高級な蜜などといった物が貯蔵されている。
 半時としないうちに、二人の式神が戻ってくると鳴瀧は、氷を革袋に詰め口をきっちりと縛り付けるとそれを布で巻いて頭の下にひく。その冷たさが引き金になったのか、閉ざされていた麻衣の双眸がゆっくりと開いた。
「目が覚めたのならちょうど良い。
 少し何か口にしろ」
 柑子や梨といった爽やかで甘みの強い果実を小さく切った物を、口に運び食べさせ、蜜で薄めた薬を呑ませる。蜜の甘みよりも薬の苦みの方がまだ強かったのか、眉をしかめながらも全部飲みきると、疲れたように大きく息を吐いた。
「仕事・・・は?」
 日も高くなっている時間でありながら、参内せずこうして傍にいる鳴瀧を麻衣は不思議に思い問いかける。
「しばらく、女御から休暇を言い渡されているから気にするな」
 氷を入れた革袋の位置を調節し直し、その上にそっと後頭部を載せると鳴瀧は素っ気ないほど簡単にすませる。
「でも、女御様の所に、鬼が出たんでしょう・・・・・・・・?」
「榊の報告ではたいした鬼ではない。今も夏初月を付けさせているから、問題はない」
 確かに鳴瀧の式神が居れば問題はそうそう起きないが、参内しなくてもいいのだろうか?
 庇護を受けているからこそ、大事が起きた時には真っ先に駆けつけなければ、非難の矢表に立たされてしまうだろう。その原因が自分にあるとしたのなら、もうし分けなさすぎる。
 だが、至って鳴瀧本人は気にかけた様子もなく、麻衣に袿を被せると茵の上に座り、読みかけていた書物に手を伸ばす。
「駆けつけるのは問題が会った時で充分な。
 主上も、女御も特に来なくて良いと言っている物を、行く必要はない」
 そう言われたからと行って、その通りに出来る人間など、都広しとは言えきっと鳴瀧ぐらいだろう。と思いながらもその傲岸な態度に麻衣は思わず笑みを漏らしてしまう。
 鳴瀧がそう簡単に割り切ってくれるからこそ、病で不安な時に傍に居て貰えるのだから。
「・・・・・・・・・・・ありがとう」
 笑みを浮かべて例を言えば、鳴瀧は軽く肩をすくめるだけ。
 それでも、こうして別室に下がる事もなく、傍にいてくれる事が嬉しく、たまには病にかかる物も良い事だ。などと聞かれられたら嫌みの一つや二つぐらい言われかねない事を思いながら、重たくなってきた瞼を閉ざす。
 そして、間をおく事もなく聞こえてきた寝息に、鳴瀧は軽くため息をつく。












三話