藤の籠  














 泣いている・・・・・・
 なぜ、泣いているのだろうか。



 麻衣は、その泣き声に引き寄せられるかのように意識を反らす事が出来ないでいた。
 離れた方がいいと思うよりも、その声の持ち主を突き止めるかのように意識を凝らす。
 濃い闇の中を模索するように歩いていけば、泣き声は全く聞こえなくなる。
 深い乳白色の霧に閉ざされ、一切の音が聞こえず、自分という存在さえあやふやな物になっていく。
 だが、不確かなその世界に恐怖を覚えることなく、まるで道が判るかのように迷うことなく、歩いていくと濃い霧の中から琴の音が聞こえてくる。


 つま弾かれる琴の音はどこか淋しげな音色。
 寄り添う音もなく、歌う音もなく・・・ただ、ひっそりと孤独に打ち震えるかのように響く。
 その琴の音に導かれるように歩いていけば、濃い乳白色の霧が風に流れてゆき、見覚えのあるような無いような屋敷が姿を現す。大貴族の屋敷なのだろうか。だが、規模の割には薄暗く感じたのは、大貴族の館ならば普通は昼間のごとき火が灯されているだろう。だが、この屋敷を照らす役目を持つ釣灯籠に殆ど光が入ってなおらず、月光に照らされているだけである。
 落ちぶれた貴族なのだろうか? だがよくよく見てみれば、その僅かな光に照らされて見える調度品が見事な品々ばかりで、この部屋の主の身分がけして落ちぶれている物でない事を伺わせてくれる。
 しっとりと焚かれた香は落葉(らくよう)だろうか、静かでどことなく淋しげな香りが鼻先を擽り抜けてゆき、その中で一人の女が琴をつま弾いている。
 身に纏っている衣から推察すればこの部屋の主と思われるのだが、傍に女房達が付いている様子もなく、この広い部屋でただ一人淋しげに琴を奏でているのだ。
 彼女は不意に手を止め当たりに視線を流す。
 何かを探るように庭先に向けられた視線。
 濃い闇の中、目だけが右に左にせわしなく動き、とある一点で焦点が定まる。
 物憂げな顔に、パッと陽が差し込むような笑みが浮かび、立つ事を知らないような姫が勢いよく立ち上がり、階へと駆け寄る。
「立遠(たつとお)様」
 彼女が誰の名を呼んだのかははっきりと聞こえなかったが、闇に向かって声をかける。
 すると、闇の中に潜むように気配を消していた男が姿を現す。
 この男は武士なのだろうか。おいがけを冠に付け太刀を帯び、深緑の袍をはいた男は辺りを伺うように視線を動かしながら、足音を立てないようにして階へと近付く。40間近に見えるがいまだに殿上が赦されない官位らしく階の上に上がる事はできないはずだ。
 実際に男は、じっと見上げるばかりで近付こうとはしない。
 女はわななく唇で男の名を告げるが、男は応えようとはしない。
 女も、ただ高欄にしがみついたまま男を見つめていた。
 名を呼ぶ事以外女にもできなかった。
 距離にしてほんのわずか。
 互いがほんの少し歩み寄れば触れられるほどの距離。だが、その距離は月と大地ほどの遠くへだたれたものだった。
 女が耐えきれず白い手を伸ばしかける。だが、その手は虚しく空に触れるばかり。
 男はとうとう、一言も言葉を発することなく身を翻し、夜陰に紛れてしまう。






「立・・・・・・・・・・遠さま・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」






 泣いている。
 なぜ、泣いているの。
 けしてふれ合う事のできない二人。
 宮中に住まう者と、殿上する事の叶わない身の二人の秘めやかな恋?
 報われぬ思いに涙を流しているのだろうか。
 






 どのぐらいの時間彼女は濡れた瞳で男が立っていたところを見つめていただろうか。やがて、渡廊を明かりを持って歩いてくる女房が姿を現す。
「更衣様、このような階まで出られてはなりませぬ! いくら夜が更けて参ったとは言え内裏には数多の殿上人がいらっしゃるのですよ。
 まぁ、このようにお手がお冷えになられて・・・今すぐに白湯をお持ち致します。
 これ、誰か・・・誰か!」
 静かだった姫の・・・更衣は瞬く間に女房達に囲まれ、室内の奥深く・・・几帳と御簾によって外と隔たれた場所へと連れて行かれる。
 












































































「今の・・・・・・・・・・・・・・・夢?」
 なんだか、源氏物語のような夢を視たような気がする。
 帝の后でありながら、他の男に思いを寄せる更衣がい、帝の后に思いを寄せる男が・・・・・・・いる?
「まさか・・・・ね」
 物語の中ならいざ知らず、現実に考えているとはとうてい思えない。
 帝他の姫が目に入らぬほどの寵愛を緑子ただ一人に向けてはいるが、後宮には緑子を初めとし、梨壺の女御の他にも女御が二人おり、更衣の御位についている者も数人いるということは知っている。けっして、ないがしろにされているわけではないのだが、帝の渡りはほとんどなく后とは名ばかりだと言うことも・・・姫達の中には寂しい思いをしている者もいるだろう。だがだからといって、今上帝の后に手を出すなどと・・・・恐れおおいことだ。
 そもそも内裏に上がって他の男と通じるような隙があるとは思えない。更衣ともなればお付きの女房も大勢いるだろうし、更衣が一人で部屋にいるなどとはとうてい思えなかった。
 女御入内している緑子の周りにはつねに大勢の女房がいる。腹心の女房は片時も傍から離れる事はせず、女御が一人になる時など殆どない事を、麻衣は自分の目で見ているため、更衣が一人でいるとは思えなかった。のだが、アレがただの夢とも思えないでいた。
 更衣のすすり泣く声が今も耳に焼き付いて離れない。
「麻衣? 目が覚めたの?」
 涼子の声が几帳越しに聞こえ、麻衣は身体を起こす。
 周囲を改めて見回してみれば、まだ夜陰に包まれており、仄かな紙蝋の明かりに室内が僅かに照らされている事に気が付く。
 かなり寝たように思えたのだが、まだそれほど時間は経過していないようである。
「あら、大夫顔色良くなったじゃない。
 もし起きれるならちょっといいかしら。麻衣に悪い話があるわ」
「悪い話?」
 秋初が姿を現し運んできた手水で顔を洗うと、単の上に袿を纏い涼子の前に移動すると、涼子の顔色の方があまり良くなかった。
「涼子ねー様?どうしたの?悪い話って何?
 まさか鳴瀧になにかあったの?」
 強ばった表情をしている涼子に、麻衣は不安そうに問いかける。
「鳴瀧の事じゃないわ・・・ああ、そんな泣きそうな顔はしないで。
 今頃、内裏で榊殿とあっちこっちをかけずり回っている頃よ。だから安心なさい」
 麻衣の顔が今にも泣き出しそうだったため、涼子は慌てて麻衣の懸念を否定する。
「鳴瀧の事じゃないの・・・? じゃぁ、他に何か・・・・・・・・まさか、任地にいるおじいさまとおばあさまに何かあったの?」
「それも問題ないわ。
 問題はね数刻前から下女の一人が戻ってきてないらしいのよ・・・今、屋敷の周辺を見て貰ってきているのだけれど」
「・・・・・・・・・・誰がいないの?」
 涼子の言葉に麻衣の表情も強ばっていく。
 元々この屋敷に人気は少なく、必要最低限の下女や下男が切り盛りをしていてくれた。皆、心穏やかな者達ばかりで心からこの家に仕えてくれており、勝手に出歩く事は今までになかった。
 まして、今は正体不明の獣が都内を跋扈しており、夜中の出歩きはしないように注意しているのだ。彼らがその禁を破るとは思えなかった。
「下女の鶴らしいわ」
「鶴・・・・が?」
 鶴はこの家の中で一番新しく入ってきた下女だ。まだ年若く麻衣よりも2つか3つほど年下で、漸くこの家に入って1年になろうかと言う年頃だろうか。年老いた両親がおり一生懸命に働いて、親を楽にしてあげるんだと言っていた事を思い出す。
 古参の下女について洗濯や料理や買い出しなどをしてもらっているため、麻衣はそれほど頻繁に顔を合わすわけではないのだが、元々使用人が少ないため鶴が誰なのかすぐに思い出す。
 小柄で少し痩せ過ぎているところがあるが、元気で明るく失敗してもめげない子だったのを覚えている。
「宿下がりとかの願いは出てなかった?」
「私は聞いてないけれど・・・・・・・・・・・・・」
 最近、ナゾの獣が出現しては人を襲っているため、夜の外出は控えるようにと鳴瀧から達しが出ているため、使用人達は夜の外出はしてないはずだ。
 それになにより、夜は鳴瀧の式神である朧月が屋敷の周囲を警備・・・・・・・・・・・・・
「朧月、いま宮中だ」
 式神にはそれぞれ役目が言いつけられている。
 秋初月と菊月が麻衣の警護にあてられているように、朧月は普段屋敷の警備、夏初月は現在宮中の藤壺に、他の式神達がなにをしているかは知らないが、鳴瀧の指示がない限り朧月が不在だからと言って、自ら進んで動く事はしない。
 いや、出来ないと言うべきだろうか。
 主の召還がない限り、こちらに姿を現す事が出来ない。
 その代わり、主が呼べば距離など関係なく傍に姿を現す事が出来るのだが、今現在何人の式神がこちらに来ているのだろうか・・・・・・・?
「秋初・・・・・・・・・・・・・・・な・・・・今の、なに?」
 麻衣は秋初月に式神の事を聞こうと名前を呼びかけた時、空気が甲高い音を立てて震える。
 脳髄につきささんばかりの甲高い音。
 空気が激しく振動し、肌までビリビリと震える。
「姫様!」
 すっと何もない場所から唐突に、秋初月と菊月が姿を現すと二人は警戒したように周囲に視線を巡らせる。二人ともいつになく顔が強ばっており緊張しているのがよく判る。この二人が揃って緊張しているのだ。一体何が起きたというのだろうか。
「姫様、いま主様が張られた結界が、何者かによって破られました」
「結界が?」
「そうなの。姫様、主様の貼った結界、穢れによって破られたの。
 だから、お部屋から出たらダメだよ」
 舌っ足らずな口調で菊月が説明する。
 何者かが「血」によって、屋敷の周囲を覆っている結界を穢したのだと。
 鳴瀧の結界は完璧だ。完璧ゆえに一つ綻ぶと全てが崩れてしまうという弱点があった。
 むろん、意味なく多量の血を吹き付けたからといって結界が破られるわけではない。人一人・・・幾人もの血が吹き付けられようとも。だが、結界は陰陽の理によって築かれているため、その理を崩してしまえば結界は綻ぶのである。
「・・・・・・・・・・・まさか、鶴が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 その綻ぶ要因がなんなのか麻衣は知らない。
 だが、今この屋敷を留守にしている鶴の事が脳裏に浮かんで消えない。
 麻衣が勢いよく立ち上がろうとするが、それを秋初月が押さえる。
「姫様は、この部屋を出てはなりません。
 屋敷の結界は幾重にも巡らされております。この度破られたのは一番外の結界。何者かは存じませんがこの屋敷内に入る事は出来ません。
 ですから、姫様はこの屋敷から・・・こちらから出ないようお願い申し上げます」
「そうだよ。お外は私が見てくるから。
 ね?姫様はここで主様を待っていて?
 結界が破れたのは主様ももう知っているはずだから・・・すぐに、異常を察して主様帰ってきてくれるから」
 二人が今にも飛び出さんばかりの麻衣を必死に止める。
「私には何がなんだかさっぱり判らないけれど・・・麻衣、この二人の言う通りよ。
 顔色が良くなったとは言っても、いつもに比べたらまだまだよ。起きあがるのは早いわ。
 貴方はここでジッとしている事」
 そうは言っても麻衣がはいそうですかと大人しくしているわけがなく、皆が止めるのを聞かず夜着のまま飛び出す。
「麻衣!」
「姫様!!」
 綾子は慌てて追いかけ、式神の二人は麻衣に併走する。
「お戻り下さいませ」
「姫様、戻ってください!!」
「鳴瀧が留守の間は、この屋敷の主は私だよ?
 主の私が皆を守らなきゃいけないのに、逆に守られてなきゃいけないの?
 鶴も皆も一生懸命に仕えてくれて居るんだから、私もそれに応えないと主失格でしょう?」
「ですが・・・・・・・・・・!」
 鳴瀧はそんな事を麻衣には望んでいない。
 彼から見れば使用人の変わりはいくらでもいる。それこそ、全員を解雇してしまっても別に支障はないのだ。だが、麻衣の変わりはどこにもいない。万が一にも・・・そう、例え肌にほんの少しの傷でも付けるわけにはいかない。
「バカに、何言っても無駄よ」
「桜月!」
 ほっそりとした手足をむき出しにし、単衣を絢布で乱雑に絞り、長い黒髪を頭上高くで一本に結っただけの、艶やかな女が唐突に姿を現す。麻衣とそれほど年の頃は変わらないが、女を強調した外見をしていた。
 秋初月、菊月同様鳴瀧の式神である桜月(さくらづき)だ。
「穢れに会いたいなら会わしてあげればいいじゃない。
 なぜ、そうなったか、どうして下女が犠牲になったか、お姫様は知る権利があるんじゃない?
 自分が招いたツケですもの」
「・・・・・・・・・・・・どういうこと?」
「ここであたしが何を言っても納得するつもり無いんでしょう。
 だったら、自分の目で見てみたら?」
 桜月をしばらく見つめていた麻衣だが、それ以上彼女に問いかける事はせず、脱兎の如く駆け出す。
「姫様お待ち下さい!!」
「麻衣!!」
 秋初月に続いて涼子も後を追いかけるが、菊月だけは直ぐに追いかける事はせず、桜月を睨み付ける。
「なぜ、余計な事を言うの?」
「知りたいって言うから見に行けばって言っただけじゃない」
「そんなこと、主様は望んでないよ」
「お姫様の馬鹿な行動を見れば、鳴瀧だって眼が覚めるでしょう」
「バカなのは姫様じゃなくて、桜月あんただよ」
「どういう意味よ」
「そのまんまの意味。あたしが言う必要ないよね?」
 菊月はフワリと身体を浮かせて、桜月と視線を合わせると至近距離から、その瞳を見つめる。
 先ほど麻衣に見せていた童女らしさは抜け落ち、幾星霜の年月を経てきた者が持つ風合いを浮かべていた。
「主様にとっての特別は、姫様だけ。
 もしも、姫様が死ぬ時は主様の心も死ぬ時。その隙間にはいる事は絶対に出来ないよ」
 それだけを言い残すと、空気にかき消えるように菊月の姿は消える。
 その場に一人残された桜月は、唇をギュッと噛みしめる。
「・・・・・・・・・・・・・・あの子が現れるまでは、あたしが特別だったのに!」
 誰に聞かれることなく、その叫びは空気にかき消えていく・・・・・・・・・・
 

















 秋初月や涼子が止めるのも聞かずに、麻衣は外へと飛び出す。
 夜半も半ばのせいか、辺りに人の気配は全くない。
 白い吐息をたなびかせながら、門をくぐり抜け音の発生地へと走り込む。
 ずっと寝込んでいたせいか身体が重く感じ、足が縺れ何度か転びかかるが麻衣は脇目もふらずに、屋敷の丑寅の方へ向かって駆け出す。
 鶴でなければいいと。
 だが・・・・・・・・・・そこには、首から大量の血を流して息絶えている娘の姿があった。
 塀に寄りかかる形で、座り込み四肢をだらりと伸ばしている。
 首元を大きく噛まれているせいだろう。半ば食いちぎられており頭部がかくんと真横・・・・右肩の上に乗っかる形で繋がっていた。
 よほど恐ろしいものを見たのだろうか、目が大きく見開き、顔全体が恐怖で引きつってしまいすさまじい形相をしている。 
「鶴!!」
 駆け寄ろうとする麻衣を秋初月が背後から抱え込んで押さえ込む。
「秋初!?」
「姫様、その娘に触れてはなりません」
「なんでよ!?」
「その娘は鬼に殺害されているため、穢れています。
 御身はいまだ回復されておりませんから、穢れにはお触れにならないで下さいませ」
「なんで? だって、鶴だよ!?」
「その者が、安部家に連なる者でもです。
 結界が壊れたのは主様ももうご存じのはずです。すぐに主様が参られますから、それまではこの者はこのまま・・・・・姫様、涼子様、わたくしの後ろにお隠れ下さい」
 秋初月がすいっと前に出て鶴の姿を己の背で隠してしまったため、麻衣にはもう前を見る事は出来なかったが、場を支配する空気が変わった事に気が付く。
 空気がねっとりと絡みつくようなものに一瞬にして変わり、鼻先を生臭い臭いが掠めていく。
「なに・・・この臭い」
 涼子が何かに怯えたように麻衣の肩をギュッと掴む。
 涼子には特別な力は何もないが、能力の有り無しにかかわらずコレは誰でも感じ取れるだろう。
 生理的な嫌悪と恐怖。
 グルルルル・・・・・・・と何かが唸るような声が聞こえる。
「・・・・・・・・獣?・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・鬼?」
 見た事のない大柄な体躯をもった獣が目の前に姿を現す。
 身の長さは8尺(約2.4m)はあるだろうか。地上から肩あたりまでも3尺(90cm)ほどあり、馬程の大きさではないが、がっちりとした筋肉質の体躯をしているせいか、馬より何倍も大きく見える。
 全身を黄銅色の長い体毛で包まれており、所々に黒い縞模様が刻まれている。それは幾何学模様を描いており、一定の法則に則って黒毛が生えているようだ。一見唐の蒔絵に描かれていた虎と呼ばれる獣にもその外見は似ていたが、似て異なるものだった。
 虎の体毛はそれほど長く描かれておらず、上顎から伸びた牙があれほど長くなかったが。
 獣との距離はそれほど開いていない。あれほどの体躯を持てば軽く蹴ればあっという間に距離を詰められるだろう。それなのに獣はうなり声は上げているものの飛びかかる様子はなかった。
 式神である秋初月の存在に警戒しているのだろうか?
 誰もが一歩も身動きが取れない緊迫の空気を破ったのは、獣の傍らに姿を現したもう一人の存在。
「・・・・・・・・鬼」
 獣を従えるかのように、内裏に現れた鬼が姿を現したのだった。
 あの時同様の白い髪と赤い瞳。
 だが、違うのは大きく裂けた口。
 血を塗りつけたかのように真っ赤な唇を歪ませて、鬼は麻衣に向かって手を伸ばす。






「その、世にも珍しき御髪をわたくしにお譲り下さいな・・・・・・・・・・・・・・・」











 恐ろしい容貌をしているにもかかわらず、なぜか麻衣は哀しい人だとこの時思った